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温泉と子供達4


あの後、子供達が疲れたようなのでドミトルは旅館に戻ってきた。


幼子達を魔力操作で全員空中に浮かべて旅館まで運んでいると、温泉に満足した数人の女性も一緒についてくる。


なだらかな坂道を歩いて行くと、旅館についた。

女将が微笑んで出迎えてくれる。


「お疲れになったご様子ですね」


ギルデイザイスの伝統衣装の黒色と翡翠色の布を重ね、肩を隠すように胸の辺りで紐を結んでいる。

足元まである長い衣装には、大輪の花の刺繍がされていた。


中の服は首元まで隠す白いドレスで、地面に届くほど長い。


「お部屋に行きますか?」

「その前に子供達をトイレに行かせてからだな。それから大部屋で寝かせるから用意を頼む」

「畏まりました。お着替えはどうしますか?こちらでご用意したものでよろしいですか」

「それでかまわない」


ドミトルが頷くと、女将が後ろに立っていた女性を呼んで布団と旅館の服を用意するように指示を出す。


「お手伝いは必要ですか?」

「いや、自分達だけで可能だ」

「そうですか。ではご案内いたしますね。魔力操作が大変お得意でいらっしゃいますから、数が多い場所にご案内いたしますね」

「助かる」

「ではこちらに来て下さい」


女将の案内で移動する。

ドミトルと一緒に帰ってきた女性達もついてくる。彼女らは独身だが手伝う為についてきてくれた。


「子供達、可愛いですね」

空中に浮いている子供と握手している。

そんな微笑ましい姿を見ながら、子供達の用事をすませた。





それから大部屋に連れて行って着替えさせてから布団に寝かせる。

服は上下共に外側の部分が翡翠色で、中側が黒色、パンツの長さは膝下だった。


疲れていたのか、直ぐに子供達は寝てしまう。

ドミトル達も着替えた。


「総隊長はこれからどうするんですか?」

子供を起こさないように女性が声を潜めて聞いてくる。


「隣で寝転ばせてもらう。お前達は外に行くなり茶を飲みに行くなり好きにしろ」

「では私達は外に行ってきます」


外には茶屋があるので、そこで外の風景を楽しみながら飲みたいようだ。


女性達は静かに外に出ていく。


そしてドミトルは場所を確保していたので、その場で横になって目を閉じていた。すると、一人の子供が起きてきてドミトルの腹の上に乗る。

そこが自分の寝場所だとでもいうように寝ていた。

一時間ほどゆっくりと休んだ。






ーーーー



そうして時間を過ごし、夜になる。


窓の外には暗い夜の風景に、ぼんやりと光る緑色の水晶があった。

庭には剪定されている木と水晶が見える。

大きな岩の上からは水が流れ、岩には光る水晶もついていた。


皆は全員食堂に集まっている。

豪華な料理が皆の目の前にあった。


「わぁー」

「凄い」


食堂のテーブルに用意されているのは色とりどりの様々な料理の数々で、皆、目をキラキラとさせながら見ていた。


ドミトルは巨体なので自分用の机を椅子を用意してもらっている。

他にも背の高い者達がいたのでドミトルの近くに集まって、高いテーブルを使っていた。


リングレアはそこまで高くないが、何故かドミトルの隣に座って同じテーブルを使っている。

椅子に座っているが床に足がつかず、空中に浮いていた。


「じゃあ、いただくか」

「ちょっと総隊長。何か言う事はないんですか?」

カミラダから言われるがドミトルは肩を少し上げる。


「今日は休みだ」

「あらら」

そんな様子のドミトル達を見て、皆、自由に食べ出す。

横に子供を座らせて食べさせている母親もいた。


カミラダも子供に食べさせて、子供は手を叩いて喜んでいる。本当に嬉しそうだった。


リングレアもフォークを取ると肉を突き刺す。


そしてドミトルの前に持って行こうとしたのを魔力操作で防がれていた。


「ちょ、ドミトル様。操作を外して下さい」

「何をしようとしているリングレア。俺は子供じゃないんだぞ。それに俺は巨体だが、普通の量しか食べない」

「一口ぐらいなら大丈夫だと思います」

「自分の分があるのに何でお前の料理を食べないといけないんだ」


リングレアも魔力を使って力を入れるがびくともしない。ドミトルの魔力で完全に押さえられていた。


それを見ながらカミラダは自分の口に果物を入れた後、子供の口にも入れる。


「美味しいね」


そう言って二人で上手く食べていた。

それを見ながらドミトルは頷く。


「そうか、そうか。俺も練習しておかないとな」


そう言ってドミトルは新しいフォークをとってから、リングレアの前にある果物を突き刺す。

そしてリングレアの口に持っていった。


「もごぉー」


奇妙な声を上げて、口の中にある果物を咀嚼している。ドミトルの魔力は強いので、リングレアの体は動かなかった。


ドミトルは自分の食事も普通に食べる。どんなものでも食べれるドミトルにとってもこの食事は美味しかった。


「旨いな」


そうやって一日が過ぎていく。

穏やかな良い時間だった。


「リングレア、まだ食べるか?」

「ドミトル様、自らの手で食べさせていただくのは大変光栄ではありますが、ここで食べるのはやはり貴方の方が相応しいかと・・もぐぉー」

「そうかそうか、まだ食べたいか」


ドミトルは今度はリングレアに肉を食べさせる。

親が子供達に食べさせている間、ドミトルはリングレアに食べさせていた。




ーーーー


食事がすんだ後、ドミトル達は外に出ると温泉の方向に向かう。


大きな水晶がぼんやりと光り、道を照らしているので歩くのには問題なかった。


温泉にたどり着くと、中に浮いている結晶が光っている。

風でお湯の表面が揺れるので煌めいて見えた。


見上げた空でも、浮き岩についた水晶が光ったり消えたりを繰り返している。

上空は地上よりも魔力が薄いので、水晶の光が途絶える事があった。


途絶えると、地上から魔力が上空に上がる。

その時に起こる現象があった。


「もうそろそろだな」


ドミトルは自分の魔力で空を調べながら言うと、辺りが暗くなる。

そして、温泉から無数の光が飛んだ。


「わぁ!」


見ていた者達から歓声が起こる。

上に向かって飛んでいるのは、光る温泉虫だった。

温泉虫は結晶を食べる生物で、温泉には必ず住んで結晶に擬態している。

普通に温泉に浮いているので目立たない存在だった。


その温泉虫は、とある時期に魔力が上空に上がる時に一緒に飛ぶ性質を持っている。

それが今起こっている事だった。


母親の腕の中で、子供達が手を叩いて喜んでいる。


「ドミトル様、綺麗ですね」

「ああ、そうだな」


腕を組んで見ているドミトルの横で、リングレアも静かに見ていた。



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