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温泉と子供達3


リングレアの微笑みの背後に、自分の姉であるルナミリスの幻影を見る。

自分が軍の総隊長になった時、誰かつけられるとは思っていたが、まさか側近に手をつけられているとは思っていなかった。


だが、冷静になれば有り得る事だ。


第一補佐官のブルトランの事はよく知っているので、姉が関与していない事は分かっている。第三補佐官のラブレスキュールは、そんな可愛い性格をしていないので姉は選ばない。

それから言えば、確かにリングレアは姉の目から見てもドミトルの目から見ても優秀な人材で、そうなるはずだ、と納得できた。


これ以上の監視役兼側近は、他を探してもそうはいないだろう。

今更、リングレアを手放す事など有り得ないので、ドミトルの気持ちは落ち着いた。


鳥の鳴く声や、喋っている声が聞こえてくる。

穏やかな空間にリングレアの声がした。


「第一皇女殿下におかれましては、妹君であるドミトル様を大変心配していらっしゃいます。休める時にはゆっくりとお休み下さい」


ドミトルを労る声が、子供達の声の中でもよく通る。


参ったな、といった感じでドミトルは下を見て首を振った。

静かに見ていたリングレアは一歩下がると、少し頭を下げる。


「総隊長にとっては気に入らないかもしれませんが、受け入れてくれるまで私はいつまでも待ちます。では私は離れていますので温泉をお楽しみ下さい」


そう言ってから離れて行こうとする。


リングレアが勘違いしている事に気づいて、このまま行かせれば、誤解させたままになると思ったドミトルが声をかけた。


「・・リングレア」


すると直ぐに立ち止まり、ドミトルの方を向く。

罵倒されても文句はない、という表情をしていた。


どういう言い方をすれば誤解が解けるのか悩むドミトルだったが、その間もリングレアは黙って待っている。

色々な説明を思い浮かべたが、ドミトルが最終的に選んだのは簡単な言葉だった。


「ありがとう」


軍の長でもあるドミトルは、直接的な礼の言葉を言うのは、それほど多くない。

意味が伝わったか?と考えているとリングレアの表情が驚きに変わった。

返事を待つドミトルにリングレアは返す。


「はい、ドミトル様」


そう言って良い笑顔を向ける。


その笑顔の眩しさに、ドミトルも自分なりの笑顔を返す。凶悪だが許せ、と心の中で思っていた。


リングレアが背を向けて歩き出すのを見送る。

一応、隊員を三人ほど、かなり離れた場所に配置してあるが、索敵を重視しているので、強さに信用のあるリングレアなら安心できた。


「しかし、姉上かぁ・・ああ見えて過保護なんだよなぁ」


してやられた、とばかりにドミトルが空を見上げていると、ジュースを飲みあげた子供が突撃してきて、笑いながら掴んだり叩いたりしている。


子供達に集られ、頭の上まで登られながらドミトルは考え事をしていた。








ーーーー


ルナミリスの執務室。



「今頃、ドミトル達はゆっくりしているかしら」


ルナミリスが窓の外を見ながら言うと、後ろに立っていた侍従のアルスが答えた。


「今の時間帯ならそうでしょう」

「貴方の娘もいるのかしら?」

「今頃、ドミナトルシア様の警護をしているかと存じます。本人もそれを大変望んでおりましたから、満足している事でしょう」


「娘にこんな役割を与えた私を恨んでいない?」

「何故です?私の娘ですよ?」


ルナミリスはジッとアルスを見る。額を出すようにして短い深緑の髪を全て後ろに流している男には、一片の隙もない。

何故そのような事を聞くのか意味が分からない、といった表情をしていた。


「そうよね、貴方の娘だものね」


何故かルナミリスには、アルスのその言葉だけで納得できた。


「ちなみに貴方は休みを取らないの?」

「立ったまま休む事のできる私は勝ち組でしょうね」


ぎょっ、とするルナミリス。

新たなる波乱の幕開けが、ここで行われようとしていた。



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