第91話 Find a way
みんな、俺様の話を聴いてくれ。
あの日、インキュバスのインする所をチョン切られて嘆き悲しんでいた俺様だが、それはまだこれから自分の身に起きる悲劇の序章でしかなかったと思い知らされる事になる。
公の場では表現し難いのだが、ここで正確に書いてしまうと『R-15指定』のタグが無惨にも砕け散ってしまうから、それなりにボカした内容になる事を先に詫びておく。
あとここには複数の怪物……と言うか化け物……それもちょっと違うか……何と言えば良いのか判らないが、それは人間の本能に隠された恐怖の根源とでも言い表せば良いのか悩む所だが、何らかの言葉であの怪物どもを表現しなければ先へ進む事ができないので、とりあえず『お姉様方』とでもしておこうか。
今そこで俺様の事を嘲笑った君たちに忠告しておく。
この世には決して知ってはならない事があるんだ。だがそれは知ってしまってからでは遅く、知らないまま世界の上っ面だけを見て悲劇のヒーローやヒロインを演じてる方が、よほど幸せなんだと付け加えておこう。
前世の俺様は生まれも育ちも悪かったせいで、いつも世の中に恨みを抱いて生きてきた。
金も力もコネも無い弱っちい俺様には、自分のアンデンティティを確立する何かが圧倒的に不測していたから、俺様より更に弱っちい相手なら何をしても許されると考えていたんだ。
そんな時、俺様はこの異世界で生まれ変わって力を手に入れたと思っていた。
前世の恨み辛みが重なったせいか俺様は、こと『女』をイビる事に関してはエキスパートと言っても過言ではないスキルの持ち主になったから、そんな因果もあってこっちの異世界では『女』に対して特別強い力を持つインキュバスってヤツに生まれ変わったんだと思う。
それで、いい気になってたから天罰が下ったんだな。
俺様が転生した場所に住んでたサッキュバスどもは美人でスタイル抜群の女たちばかりで、俺様は相手の目を見るだけで手下にしたり、それこそ本人が嫌がっていても何でも言う事を聞かせる事が出来たから、『女』への復讐を再開する事に何の違和感も無かった。
だから思い上がっていたんだ。
こっちには強そうなサッキュバスが200人以上も居て、ダンジョンコアも味方してくれるから負けるなんて思いもしなかった。それに俺様が元居た世界では『戦いは数だYO兄貴!』と言う格言があったから、安心していたのだ。
そして5人の悪魔……もとい、5名のお姉様方が地下迷宮に現れて、俺様のインするところをチョン切られてしまう事態へと発展する。
この時の俺様はまだイキがってて、確か『覚えてろよ!』みたいな事を言ったんだと思う。たぶん。
そしてインキュバスの能力さえあれば、夢の中で復讐してやれると踏んでいた俺様は不用意にも『夜がドウトカ~』言ってしまったんだ。あれは失言だった。
そして5人の死神……もとい、5名の綺麗なお姉様方は彼女たちのご主人様との夜の生活をとても楽しみにして居られたから、そんな夜を俺様がメチャクチャにしてやるなんて言ったもんだから、とてもお怒りになられた。
あの時、俺様が何回死に至ったのか正確には覚えてないが、1回や2回なんて生易しいモノでは無かったはずだ。俺様がどれくらい苦しかったかを表現するのに最適な比喩は思いつかないが、元いた世界のTVの拷問シーンで相手の顔を水に沈めて溺死する前に引き上げるヤツがあるのを知ってるだろうか?
俺様の場合は完全に殺された瞬間に魔法で蘇生されて、また殺されるというのを繰り返す事になるのだが、死ぬ方法も水だけじゃなくて火の時もあったし、高い所から落とされて全身の骨と内臓が破裂する音も聞いた。
それ以外だと足の爪先から腐ってそれが徐々に下から上がって来るんだけど、メチャクチャ寒くて痛いんだよ……これが。でも俺様の泣き叫ぶ声が煩いと言われて、喉の声帯を握り潰された時は余りの激痛に気を失う事無く即死してしまった。
そんな可哀想な俺様に向かって『死んでしまうとは何と田舎者ぢゃ!』と心無いお言葉を掛けてくれたのは紫色の鬼畜……もとい、サラサラロングヘアーの美しいお姉様だったんだけど、それって田舎関係なくない?
いくら俺様の身体を痛めつけても、前世でイジメられた経験と孤独に人生を生き抜いた人生観によってタフな精神をしていたから、5人のサイコパス……もとい、美しいお心を持つお姉様方からの『ご褒美』が変更された。
この時、俺様の身体は薬の素材になるからと言って、内蔵や筋肉組織のいくつかを切除されまくっていたんだけど、丁度腹の中がポッカリ空いていたから『アレ』を埋め込まれてしまった。
『アレ』と言ったのは、『それ』の名前を知らなかったから。
赤黒くて小汚い包帯でグルグル巻にされた『それ』は両手に収まるほどの大きさだったんだけど、肝臓などの重要器官を切除されてポッカリと空いてたスペースに嵌め込むようにして移植された。
最初は不安だったがインキュバスの身体は結構丈夫に出来てるから、どれほど傷付けられても必ず元の状態に戻れると本能的に知っていたので、5人のクソブタども……もとい、5柱の女神様方が俺様の拷問に飽きて夜が来れば、アイツらの夢の中へ押し入って復讐しまくるつもりだったが、そう甘くはなかった。
それは『アレ』を体内に埋め込まれて直ぐに体調変化が俺様を襲ったからで、それまで目の前に居る身体だけは……もとい、心と全身が女神様のように美しすぎる5名のお姉様方を見てもタダの獲物としか思えなかったのに、彼女たちの美しすぎる胸を目にした途端、腸の奥底から精神を崩壊させるほどの激痛が俺様の脳髄を襲う。
特にヤバかったのは銀髪ロングヘアのとても美しすぎる聖女様の胸で、勿論紫髪のお姉様が纏うボディスーツの谷間もヤバかったが、それに比肩するほどの美術点を叩き出すと思われるバニーガールの胸の谷間を視界に収めた瞬間、まるで頭が爆発四散してもおかしくないような激痛に苛まれてしまう。
これはきっと何かの呪いに間違いない……俺様は腹の中に特級呪物を埋め込まれてしまったんだ。
それでも黒髪の男女……もとい、ボーイッシュで魅力的な女性のチッパi……もとい、適度な大きさで形の良い胸とか、ピンク色ツインテのマナイta……もとい、控えめで将来きっと大きく育つはずの……え、『はず』は余計だって?……コホン、今は控えめだけど将来はウルトラ・ダイナマイツ・ボディになる予定の……え、『予定』ではなく『確定』と言えって?……コホン、とにかく『ボンキュッボン』に育つゴリラ……もとい、美少女サマで宜しかったでしょうか? その美少女サマの胸だけは見ても何故か頭痛はしなかった。ねずみ色の魔女は知らん。
俺様があれほど獲物を選ぶ時に重視していたOPのサイズだったが、今は見るのも辛くて近寄られただけで悲鳴を上げてしまうほど症状が進んでしまった。
お腹の奥底から脳裏に響くあの不気味な声。
俺様が一体何をしたって言うんだ? 俺様はただインキュバスとして正しい行いをしていただけなのに、ちょっとサッキュバスをつまみ食いしたくらいで、何故これほどの虐待を受けなければいけないんだ。
今も聞こえてくる、お腹の奥底から脳裏に響くあの不気味な声。最初の頃は何言ってるのか全然判らなかったが、最近はそれが人の声だと認識出来るようになってきた。
『この世は美脚こそ至高! 大きな胸だけが取り柄のどこかのアホ女神など、クソにも劣る存在──』とは一体何の事だ、俺様に何を伝えたいんだ?
『この世は美脚こそ至高! 子供を授かる大切な器官を守る下腹部こそ生物が敬うべき場所であり、そこから伸びる美しい二本の御美足とその爪先まで全てを含めて始めて『脚』と表現する──』だから、その事に何の意味があるのかと聞いてるんだよ。
『先ず最初に美脚とはパーツ単体としての足とは別の存在だから、決して混ぜくちゃにせず正しい認識を持つところから始めるんだ──』そうか、だんだん判ってきたぞ! そうだよな『足』と『脚』は全然別物なのに、それらの区別が判ってないヤツが多すぎる!
だって俺様の目の前には4人の『御神体』とも称するほどの美脚を持つ女神様が顕現されていたのに、今まで何を見ていたんだろうか? あと将来はきっと、恐らく、多分、美脚に育ってくれそうな女神様も居るしな。
『美脚は一日にして成らず! 全ての道はローマへ繋がってるかも知れないが、その道は全て美脚が歩く為の日常空間──』仰る通り! こちらの異世界にローマなる街があるのかどうかは知らないが、全ての道は美脚が歩く為だけに創造された空間である事に間違いは無い! この声は100パー正しい!!
俺様の目の前に新しい道が開けた。
今度こそ間違えないからな。この教えさえあれば、俺様が再び人生の道を踏み外すような事は無い。
こうして身体のほとんどを切除されて、その多くを失ってしまった俺様だが、それらを補って余りあるほどの信仰を手に入れた。俺様の未来は明るい! ──はず。
実際、インキュバスの周りには6名の美女と美少女(?)が居ます。




