向かう旅路
そして、二週間後。
私は船に乗っていた。
傍にいるのはドールと……メイジ。
いつも学校で見ていた動きやすい格好とは違う、女の子らしい可愛らしいワンピース姿だ。
傍には小さな桃色の可愛らしいキャリーケースもあり、それが色合いとマッチしていて、彼女のセンスが優れていることをしらしめてくる。
旅に向いている格好かどうかは別にして。
……そんなことを思う理由は至って単純で、ただただ普通に、今の学校をクビになったのだ。
彼女と一緒に。
まあ、私達のために区分けされたエリアで起きた騒動がキッカケで、あんな校舎崩壊まで起こしたのだから、当然と言えば当然の措置だろう。
「すいません先生……私のせいで、約束の一年間よりも早くお仕事を辞めることになった上に、街からも追い出されてしまって……」
「気にすることないって。
むしろこうしてもらうよう頼んだのは私の方だし」
これは本当だ。
あの堅っ苦しい雰囲気の学園長は、意外にも私達二人を止めようとしてくれたのだ。
まあ、『念動力』の魔王が、何か吹き込んだ可能性もあるけれど。
ただ、学校を救ったのもまた事実だからと、言ってはくれたのだが……それを断った。
なんせあのままあの街にいては、『勇者の魔女狩り』がこの魔法使いの学校内の騒動なのに、街にも被害が出たかもしれない危ないだろう、と変な口出ししてきて、繋がりがある警察を介入させて、犯人たる魔法使いを捕まえようとしてきた可能性だってあった。
もしそうなればあとはもうズルズルと、色々な魔法使いが警察の手に渡る可能性すら出てくる。
まだ警察との繋がりが無ければ学校にいても良かったかもだが……まあ、その辺を考えるのは無駄なことだろう。
犯人となる先生はとっくに辞めさせた。
学校にもいない。
だからこの学校を捜査することは許さない。
元々学内で起こったことだから訴えるつもりもない。
そもそもそうして処理して終わったことをとやかく言うなんてどうかしてる。
……とまあ、そういう筋書きだ。
こうした流れを作った以上は、その元凶たる私達がいては不利になるだろうからと、早々に立ち去った形だ。
元々、警察にもちょっかいを出していた私が消えていれば、万一学内を捜査することになっても、本当に外に追いやったと見てくれる可能性だって高くなる。
これでまあ、メイジの存在を『勇者の魔女狩り』悟られる心配は無くなるという訳だ。
「それよりもメイジ、その先生ってのは止めて」
「え、ですが……」
「また次の国の学校にあなたが入学して、私がそこに勤め始めたら言ってもいいけど、それまでは旅の仲間なんだから。
ほら私だって。
丁寧な口調で話してないでしょ?」
連れて行くメイジは、次の私の勤め先で、再び魔法学校の生徒となる予定だ。
これは『念動力』の魔王に頼んでおいた。弟子であるウリシャも一緒になって。
彼女としても、弟子に頼まれては断れなかっただろう。
住む場所はまあ、これから探してあげれば良いだろうか。
どうせ次の勤め始めまでたっぷりと時間はあるんだ。
焦ることはない。
「……はい。分かりましたわ」
「そのバカ丁寧な口調もどうにかならないの?」
「バカとはなんですか! バカとは。
これは、優雅たれという私の信念によるものですわ。これまで否定される謂われはありませんよ」
とまあ、『魔人』化したのが嘘のように、彼女らしさも戻ってきているし、大丈夫だろう。
次の素数年齢までは、だが。
……いや、それを言えば、全ての魔法使いに当て嵌まることだ。
彼女だけが特別じゃない。
彼女がこれから、魔法使いとして、向き合っていくだけのこと。
私はそれを、補助してあげれば良い。
「あ、ですが、次の学校に入学するまでの期間、私の魔法を見て下さるんですよね? それなら結局、先生みたいなものではありませんか。
いえむしろ、師匠とお呼びしてもいい程ですわ!」
んないらんこと気付きおって……。
「私は、多くの先生になるつもりではあっても、弟子を取るつもりはないの」
「またまた~」
「いやそれで誤魔化されないからねっ!?」
……ま、せっかく仲良くなり始めた同級生たちと、すぐに離れ離れになってしまったんだ。
寂しさが心のどこかにあるのかもしれない。
……だが、それで依存されるのだけはいけない。
「良い? メイジ。あくまで私は、私に惚れたからとかそういう理由で、思考を停止したままに私の思想に染まってほしくないの。
あくまでもあなたが考えて、その上で結論を出して、機械と魔法の共存を唱えて欲しい。
なんなら否定してくれたって構わない。
あなたが考え抜いた結論ならね」
本音としてはもちろん、共存を願うようになってほしい。
でも、何も考えず、自分の中で納得できぬまま、ただ「私が言っているから」なんて理由では……きっといずれ、再び『魔人』化のキッカケとなってしまう。
「それだけは覚えといて」
「はいっ! 分かりましたわ!」
……本当に分かってんのかなぁ……。
「どうせ、しばらくはドールに面倒見させることになるし」
「そうですのっ!?」
おっと、口が滑ってしまった。
「まあ、『魔力操作』の速度があるのがメイジの強みだからね。
だったらしばらくは、ドールと一緒に行動させたほうが良いのは明白だし」
「任されよう」
力強いドールの返事に、不服そうにメイジは頬を膨らませる。
ただ、それがどこか、彼女らしくなくて……やっぱりどこか、無茶しているのが分かってしまう感じで……。
……学校が始まるまでに、自分がしてしまったことを抱えながらも、生きていけるようになって欲しい。
なんてのは贅沢だろうが。
それでもせめて。
次の学校に入ってから、卒業するまでの間に──もう一度くる、素数年齢の『魔人』化呪縛を乗り越えられる程度にはしっかりしてもらえるよう支えないとと、さすがの私でも思う。
潮風が身体を凪ぐ。
私は思わず、その不安から『並行世界』の魔法を使ってしまいそうになり……留まった。
知ってどうする。
そんなものに頼らなくても、天気は今の私達を祝福してくれている。
照りつける太陽を遮る外套。
いつも通りに深く被ったフードを取り……私は目一杯、その空を見上げながら、両手を伸ばした。
「ま、なるようになるか」
そんな、未来への不安を吹き飛ばす言葉を、呟きながら。
終わり! 方が! 分からないっ!!
でも、ここで終わりです。
厳密には文庫1巻分が終わりです。
まだまだ続けるつもりでしたが一旦終わりです。
なんせその前に書きたいものが出来てしまったのがなぁ……とりあえず先にそちらを書きたいのがなぁ、といった具合。
そしてそのまま戻ってこない可能性がありますが……えぇえぇありますが……そうなっても許して頂ければなぁ、と。
ただその新しく思いついた方はまあ、中編ぐらいの長さになりそうなので、多分一ヶ月か二ヶ月ぐらいで完結するかと。
それだけ短ければきっと、2巻目を書くつもりだった気持ちも残っている……はず!
……そもそも、その出てきた書きたい中編の方はまだ何も手を付けていないんだよなぁ……頭の中で構想があるだけ、というか。
それに今回とは違う投下方式にしたいというのもあるので……はてさて、どうなるか。
この「魔王が唱える機械必要論」の話に戻りますと。
この話は、魔法とか機械とか、魔力操作とか魔力移動とか魔力変質とか、魔王とか魔人とか人間とか魔法使いとか、その辺の説明をメインに据えたがる設定厨全開のお話になってしまったので、次回はそういうのを抜きにしたお話を書きたいなぁ……とか思ってます。
メイジという新しい仲間も増やせたことですし(予定外
そんなこんなで後書き終わり。
次の別作品でもよろしくお願いします。




