不味かった
油断による一撃のため、思うように動かないエリックは、ここである事を思い出した。
俺、吸血鬼じゃん
そう、体力の回復、魔力の補充は、吸血によっておこなえる。
別に人型である必要はない。
血を撒き散らす物体がそこにある。
すごいスピードで迫り来る物体に、エリックは飛び付き、齧り付く。
物体の持ち主は、切り裂かれた物体の痛みにより、何か二本刺さった事に気が付かなかった。
振り切った尻尾を戻し、先ほど狙っていた人物が居ない事に気がつく。
「どこに消えた!逃げたのか!」
背後から声がした。
「ここだ。」
振り向くと、膨大な魔力をまとったエリックが居た。
「なっ!いつの間に!」
慌てたガーフィは、すぐに距離をとろうと飛び上がろうとしたが、その刹那、片方の翼は、無残に斬り落とされた。
「お前の血は不味かった」
それがガーフィが聞いた、この世の最後の声だった。
地に堕ちたガーフィの首を凍らせ、踏み砕いたエリックは、背中から翼を出して蝿が向かった方向に飛び立った。
魔王は、大量の蠅に纏わり付かれていた。力を試しても蠅には効かなかった。
「何故だっ!何故配下に出来ない!俺の能力は全ての魔物たちを配下に出来るはずだ!何故っ?」
「それはすでにとある人の配下になっているからだね。」
どこからともなく聞こえる声
「貴様っ!あの吸血鬼の配下になったのか?!お前ほどの男がなぜ?」
「それはお前の下にいるより面白いからと、お前に負けた事はないが、あの人には、ボコボコにされたからね〜」
声は、軽い口調で答えた。
蠅に食われていく魔王
苦痛の声は、先に喉を食い破られて、漏れる事はなかった。
「不味かった」
声だけが響いた。




