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mirror  作者: まあ
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第11話

「深月がきたみたいだな」


「そ、そうですね」


「あいつは何がしたいんだろうな……行ってくる」


 理音達が書庫の整理をしていると家のインターホンが何度も何度も鳴らされ、その犯人は深月だと断定される。

 理音は鳴りやまないインターホンの音に小さくため息を吐くと玄関に向かって歩き出す。


「出てこないな」


「あ、あのね。深月ちゃん、何度もインターホンを鳴らしたからといって、直ぐには出てこないと思うんだけど」


「大丈夫。大丈夫。理音はこんな事で怒らないから、怜生くんも押す?」


「そう言う事じゃないよ。って、怜生くんにおかしな事を教えたらダメだよ!?」


「いた!?」


 深月の行動に呆れ顔のひばり。しかし、深月は気にする事なく、怜生を悪の道に引きずり込もうとし、ひばりはどこからかハリセン小烏丸を取り出すと深月の頭を打ち抜いた。


「……ひばり、深月、お前達は人の家の前で何をしているんだ?」


「……お兄ちゃん、おはようございます」


「あぁ。怜生、おはよう」


 深月が頭を打ち抜かれた瞬間、タイミング良く玄関のドアが開き、その様子に呆れ顔の理音。怜生は理音を見て直ぐに彼の足もとに駆け寄り、理音の表情は小さく緩む。


「それで、お前達は何をやってるんだ?」


「な、何って、深月ちゃんが、怜生くんにおかしな事をさせようとするから」


「理音は気にしなくて良いよ。それより、タクシーの代金、お願いね」


 再度、ひばりと深月に何をしていたかを聞く理音。ひばりは少しだけ気まずそうな表情をするが、深月は気にする事なく、玄関の前に止まっているタクシーを指差す。


「それで、わざわざ、タクシーで来た理由を聞かせて貰おうか?」


「……深月、お前は何をしてるんだ?」


「何って、これだよ。理音の事だから、お昼とか何も考えてないでしょ。材料を買ったら、結構な荷物になって、ひばりが買い物袋に潰されちゃったから、後、理音、材料費もお願いね。これ、領収書」


 3人が到着した事に大樹と葵も居間に集まる。深月はタクシーで来た理由を話すがその中にはひばりをからかう言葉が混じっている。


「まあ、仕方ないか。確かに小さいからな」


「あたし、そんなにちっちゃくないよ!?」


「あの。理音君、流石にそれはちょっと」


 深月の言葉を理音は表情を変える事なく肯定すると領収書を覗き込み。ひばりは自分の身長を気にしているようで声を張り上げ、葵は苦笑いを浮かべた。


「と言う事で、お昼は任せてよ。ボクとひばりが美味しいのを作るからさ」


「昼か……」


「何? 問題あるの? まさか、料理をしないからキッチンを作ってないとか?」


 笑顔を見せる深月の様子に理音は少し考えるようなしぐさをする。深月は理音に何か考えがあるのかと思ったようで首を傾げる。


「いや、キッチンくらい用意してある。そのうち気まぐれで料理を覚えるかも知れないからな。道具もしっかりと用意してある……ただ」


「ただ?」


「ひばりの身長では手が届くかどうかはわからん。俺の身長を基準に作ったからな。まぁ、目測で言えば、高すぎるだろうな」


「あたし、そんなにちっちゃくないよ!?」


「……まぁ、見てみろ」


「ちょ、ちょっと、理音くん、何をするの!? ど、どこに行く気!?」


 理音は目測でキッチンの高さではひばりにはきつくないかと首をひねる。ひばりは流石にバカにされたと思ったようで頬を膨らませると小烏丸で理音の頭を打ち抜こうとするが、理音はその1撃を難なく交わすとひばりの首根っこをつかみ、彼女をぶら下げながらキッチンに向かって歩き出し、怜生は2人の後を付いて行く。


「あれだね。ひばりは手荷物扱いだね?」


「いや、いくら、支倉さんが標準体形より小さいとしても普通は片手で運べないだろ」


「でも、理音君、細いですけど、あれで、力持ちですから」


「……まぁ、常に服の中に何かを入れて、日々、鍛えてそうだからね」


 理音に運ばれるひばりの様子に、若干、納得がいかないものの、理音の貯め込み癖を知っている3人は苦笑いを浮かべて、キッチンに移動する。


「……あたし、ちっちゃくないもん。普通だもん。まだまだ、大きくなるもん」


「ひばりお姉ちゃん、大丈夫ですか?」


「ひばり、ひょっとして、本当に玉砕?」


「みたいですね。理音君、何をするつもりですか?」


 キッチンではすでにひばりはシンクの高さに玉砕した後のようで、キッチンの片隅でその小さい身体をさらに丸めて小さくなっていじけており、彼女を慰めるように怜生が声をかけている。

 ひばりが落ち込んでいる直ぐそばで理音は懐から、大工道具と木材を取り出すが、相変わらず、その量は絶対に懐に入っているような質量ではない。


「ん? キッチンのシンクの高さを調節するのは無理だから、踏み台でも作ろうと思ってな」


「思ってな……って、速っ!?」


 理音の言葉に大樹は呆れたようなため息を吐くが、少し目を離したスキに踏み台は完成しており、大樹は驚きの声を上げた。


「ふむ。まぁ、簡単だが、これくらいで良いだろう。身長に比べてひばりは胸が大きいから体重は」


「何を言う気!?」


「ん? さっき、持った感じと目測から計算するとひばりの体重は」


「言わないで!?」


「理音、流石にそれはダメだよ」


 理音は完成度に納得がいかないようだが、ひばりの体重を考えれば問題と言い切る。その過程でひばりの体重を話そうとするとひばりは顔を真っ赤にして理音を止め、2人の様子に深月はため息を吐く。


「それじゃあ、ボクとひばりはお昼を作るから」


「あぁ。怜生、俺と大樹は書庫の整理をしているから、葵に遊んで貰え。葵、怜生を預けても良いな?」


「は、はい。私、書庫の整理には役に立たないので……本当にすいません」


「葵お姉ちゃん?」


 理音は大樹と一緒に書庫に戻ると言うと葵は小さくなり、理音と大樹に謝り、怜生は葵の様子に首を傾げる。


「……葵、戦力外?」


「あー、まぁ、そんな感じ」


 葵の落ち込む姿に深月は状況を察したようで首を傾げると大樹は苦笑いを浮かべて、理音の肩を叩くと2人でキッチンを出て行く。


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