終幕
白い怪物がこちらを向く。
その瞬間だった。
「全員下がれ!!」
No.7が叫んだ。
初めてだった。
感情を露わにしたのは。
白い怪物の周囲で空間が歪む。
研究員たちが次々と霧へ変わっていく。
存在そのものが分解されていた。
暁が顔色を変える。
「おいおいおい!」
リアも即座に判断する。
「戦闘不可能。」
「勝率計算不能。」
剣也が歯を食いしばる。
No.7が振り返る。
「神島剣也。」
「連れて行け。」
視線の先にはルナ。
「お前が守れ。」
ルナが震えている。
No.7は静かに笑った。
「零番目の願いだ。」
その瞬間。
研究施設全体へ警報が響く。
【緊急封鎖開始】
【深層炉心解放】
湊が目を見開く。
「まさか!」
No.7が頷く。
「終わらせる。」
「二十年前に出来なかったことを。」
施設中央の巨大な装置が起動する。
白い怪物が初めて反応した。
無数の目がNo.7を見る。
『接続継続を推奨』
No.7は笑った。
「断る。」
次の瞬間。
黒い結晶が全身から噴き出す。
No.7自身が炉心へ飛び込んだ。
轟音。
光。
衝撃波。
「走れ!!」
暁が叫ぶ。
全員が施設から飛び出す。
地面が崩壊する。
研究所全体が沈んでいく。
白い怪物が咆哮する。
しかし。
巨大な封印壁が出現。
地下へ押し戻される。
光。
轟音。
そして。
静寂。
数秒後。
研究施設跡地には巨大なクレーターだけが残っていた。
白い空も徐々に元へ戻っていく。
誰も喋らない。
湊が小さく呟く。
「……終わったか。」
リアが首を振る。
「いいえ。」
モニターが起動する。
白羽市各地。
赤い点が灯る。
一つ。
二つ。
十。
百。
暁が舌打ちする。
「クソが。」
リアの声が静かに響く。
「市内各地で深層反応を確認。」
「第一次零番計画関連施設の起動を検知。」
湊が苦笑した。
「遺産が多すぎるな。」
その時。
ルナのリングが微かに光る。
一瞬だけ。
誰かの声が聞こえた。
『保護対象を確認』
『継承完了』
そして光は消える。
ルナはリングを握りしめた。
「……ありがとう。」
風が吹く。
夕暮れの白羽市。
戦いは終わった。
だが同時に、
もっと大きな何かが動き始めていた。




