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小話03 霹靂~アリーナ視点~

最後までお読みいただき有難うございました。


人形姫の世界はこれにておしまいです。


沢山の感謝を込めて。


「アリーナ!結婚しよう!」

ローレン様の言葉に、


ぶほっ!!とエディ様はお茶を吹き出し、アリア様の固まったお顔の瞳の奥はまん丸になっている。


…ローレン様、おかしな物でも食べたのかしら?



私は、アリーナ・ディーラ。

アリア様の乳姉妹にして侍女だ。

この度無事に王太子殿下のエディ様と婚姻されたアリア様は、私も城に上げて下さった。

「良かったら、お城にも一緒にきてくれる?」

不安げにそう問うてくるアリア様に私は、勿論と頷いた。

私は、アリア様が望まれる限り、何があろうともアリア様のお側にいると決めているのだから。


そこまで思う理由は色々ある。

まず、母と私はアリア様の母君、エリザベス様に命を救っていただいた。

私の母は男爵家の次女で、男爵家の三男と結婚し私を産んだ。貴族とはいえ、跡取り以外は家を継げず、父は結婚後仕事を始めたが、多額の借金を作り私が1歳にも満たない頃自ら命を絶った。

母は借金と赤ん坊を抱え、仕事を見つけることも出来ず、私を道連れに死を考えるほど絶望していたらしい。

そんな時、以前仕えていたエリザベス様が乳母を募集していると聞き、藁にもすがる思いで現状と働きたい意向を手紙に綴り送った。


数日後届いた手紙の内容に母は驚いた。

そこには、エリザベス様の伯爵家での仕打ちがかかれ、乳母もきっと自分に関わる人は雇えないだろうと謝罪されていた。その代わりといくつかの宝石と、クワァント公爵家へ宛てた紹介状を同封してくれていた。宝石は好きに使って欲しいと書いてあり、母はその宝石を売ることで、何とか借金を返せたらしい。

手紙の最後に、もし自分の子供と関わるようなことがあるのなら、どうか側にいて味方でいてやって欲しいと締められていた。


母はそれを見て、涙を流し、エリザベス様と無関係の振りをして伯爵家に入り、エリザベス様のお子様を命をかけて守ることを決意した。明日にも断とうと思っていた娘と自分の命を救ってくださったエリザベス様への、唯一の恩返しとして。


同時に、エリザベス様の紹介状を使って公爵家とも連絡をとり、なんとかエリザベス様を救ってくれるようお願いしたかったらしい。だが、ただの使用人が公爵家の方に軽々しくお会いできるはずもなく、何とか連絡が取れた時にはもうエリザベス様は起き上がることも出来ず、出産と同時に命はないだろうと言われていた。


母は、何度もこの話を私に聞かせ、自分が亡くなる直前までエリザベス様の最期の様子に涙していた。

そんな私も勿論、小さい頃からアリア様に恩義を感じている。


でも、恩義だけじゃない。

アリア様が産まれた時からずっと一緒に育ち、誰よりもアリア様の近くにいた。

アリア様は少し表情は乏しいけれど、その心はとても優しく、とにかく可愛い。そう、私はアリア様が大好きなのだ。

きっとそれがお側にいる一番の理由。


これからも、アリア様の側で力を尽くそう!そう思いお城についてきたのだが・・・・


「アリーナ。式はいつにする?」


何故か日々ローレン様が私のことを追い回す。

はぁ。と私はため息をついた。

ローレン様は、昔から時々突拍子のない事をされる方だったけど、これはさすがにいけない。


「失礼ながらローレン様。冗談とはいえ、毎日私ごときを追いかけるのはそろそろお止め下さい。さすがに良くない噂となってしまいますよ。」

私はそうお伝えし、仕事に戻ろうと歩きだした、その時。


壁にドンッと腕をついたローレン様に抱えこまれるような状態になる。

さらりとしたブラウンの髪と整った顔、グリーンの綺麗な瞳が私を捕らえる。

「アリーナ。冗談なんかじゃないよ?俺は本当にアリーナがいいんだ。」

珍しく真剣に私にそんな事をいう。

その瞳にはまっすぐな光があって、私はさすがにどぎまぎしてしまう。

が、そんな夢物語を信じるほど愚かでも幼くもない。ため息とともに

「ローレン様、ご冗談が過ぎますよ。」

私はそう窘めるようにローレン様を見上げた。


ふはっとおかしな笑い方をしながら、

「うん。俺はやっぱりアリーナがいいな。」

そんな事を素晴らしい笑顔とともに囁くと、私の頬に触れるか触れないかの口づけをして去っていった。

私は頬を押さえ茫然とした。


一体、何が起こっているの?!


「・・・アリーナ、大丈夫?」

そんなアリア様の言葉にはっとする。

いけないいけない!アリア様の身支度を整えているのに、別の事を考えるなんて!


「ローレンのこと?」

重ねて聞いてくるアリア様に、誤魔化せない雰囲気を感じて私は認めた。


「最近のローレン様の冗談の度があまりにも過ぎる、と少し考えておりました。申し訳ありません」

そうアリア様に謝罪し、話題をさっさと切り上げようとする。


「アリーナはローレンの事、嫌いなのかしら?確かにローレンは口は悪いし、時々貴族らしからぬ振る舞いもするし、20歳もすぎたのに、いまだにいたずら大好きだし。あら?魅力を話そうと思ったのに褒めてないわね」

自分の言葉にクスリとアリア様が笑った。

「でも、ローレンは、ああ見えて人のことをよく見ているし、いざという時の頼りがいもある。それに根はとても優しいわ。」


まぁ。ローレン様のことは幼い頃から存じてる。使用人の私とそこまで接点はなかったが、なんだかんだとアリア様にお優しい所は評価している。

そんな事を考えていると、

「どうやら、ローレンは本気のようなの。伯母様からの手紙に書いてあったわ。公爵家の皆にアリーナと結婚すると宣言し、お祖父様達の承認も得ているようなの。」


その言葉に茫然とする。


「なっ!何を仰っているんですか?公爵家の皆様も正気ですか?私は男爵家に縁がある程度の身分ですよ!こうして王宮で侍女をさせていただいているだけでも、相当の身分不相応なのですが・・」

言葉が出なかった。


…私が公爵夫人?

はは。あり得ない!

あまりのあり得なさに目眩がする。


そんな私に追い討ちをかけるように、

「アリーナの気持ちが一番大切だけど、もしも、ローレンを嫌いじゃなくて私の本当のお義姉様になってくれたら、とてもとても嬉しいわ!」

喜びの感情溢れる声と、キラキラと期待に輝く瞳に息をのんだ。


私がアリア様のお義姉様?!


全くもってあり得ない・・・

あまりの恐れ多さに、くらくらと頭痛がするわ。





※※※※※※


それから1年以上、毎日のように愛を囁かれ、アリーナが陥落したのは、また別の話。


~fin~


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