外出
今の今、本当に今まで書いていました。
投稿が遅れましたことをお詫び申し上げます。
最近はその日の投稿分をなんとか時間までに書いてる感じでして…
直さないといけないですね、ごめんなさい
私の髪色と同じ空が広がっていた。
サンサンと降り注ぐ日光に、今朝からノアはダウンしてしまっているそうだ。なんでも、この国の使用人たちは朝カーテンを開けてしまうそうで…
ご愁傷様。
今日はすでに恒例の着替えイベントもアリシアさんの乱入によって終了している。今日の服は水色のワンピースだ。シンプルなデザインなのでまだマシな方。ミュールをはかされているので、歩きにくいが。化粧も軽くされ、髪はポニーにされた。
もちろん、今日もパーカーを着込んでいる。
「天気もいいし、散歩に行くね、私」
「んー、城内を?」
私の言葉に真っ先に反応したのは黄金の輝きを放つ、美しい髪を持った女性、お母さんだ。
そう言えば、ノアはあの輝きすらも苦手らしい。
「そんなわけないでしょ?たまには城外にも行かせてよ」
「ダメですよ!ロキが来たらどうされるおつもりですかっ!?」
半目で睨んで言うと今度は違う人物から声が上がってしまった。彼女は私とそう歳が変わらないように見える。しかし、実際には私は見た目のままの年齢、彼女は見た目よりもずっと生きているわけだが。
「今はその封魔の首輪をしているんですよ?わかっていますか?!」
「うっ!わ、わかってるよぅ…だけど、危険自体に陥ったらこれ壊れる仕組みだし、長い詠唱と陣の併用なら使えるから問題ない…かな?」
「大有りですっ!」
莉八は腰に手を当てて、そう叫んだ。
頬を膨らまして拗ねた私を見て、莉八の後ろにいた2人が苦笑する。
「莉八、そこまで怒ってやることでもないだろう?ここに来てもうかなり経つんだアクアだって、暇にもなるさ」
「そうだよ?アクア様は我慢なさるから、今まで問題なかっただけで、城に篭りっぱなしの生活なんて、アクア様の歳では難しいんだから」
「…その言葉をこっちを見て言ってくれたらなおのことかっこよかったのに、ウンディーネ、ユニズ」
2人は横目で私を見て苦笑したあと、本に目を戻しながらそう言ったのだ。優先順位が分かり易すぎる。
「ははっ!そうだな。悪い悪い。じゃあ、お詫びに私が付き添ってやるよ、外出に。この本を読み終わるまで待ってくれ」
「あー、それ私も言おうと思っていたのにー(棒読み)。取られちゃったら仕方が無い。それに、私は戦闘力低いですからね。うん、気をつけて行ってきてくださいー」
ユニズは完全に本の世界に入ってしまっているため、棒読み過ぎたし、ウンディーネのその台詞とは裏腹に本から片時も目を離さなかったし、何よりも、
「ウンディーネ、その本ここに来た時からずっと読んでるじゃないっ!それでまだ半分読めてないし!いつ?ねぇ?それ、いつ読み終わるのっ?!」
問題なのがこの本を読み終わったらな、のこの本が以上に厚いことだ。
絶対について来る気がない。
というか、ウンディーネには悪いがはっきり言ってウンディーネが着いてきてもロキが来た場合どうしようもないのは目に見えている。
「…どうしてお母さんは封魔の首輪をつけたのよぅ…」
私は肩を落として私では絶対に外せない、壊せない首輪を手で触り、恨めしい目で優雅にお茶を飲む母を見た。
お母さんは、魔力暴走を避けるため、と言っていたが、それもどうなんだか。白愛と麗麟の死によって2人に与えていた運動能力と治療魔力が帰ってきた。その、大き過ぎる魔力を操作できるまでは強制的に切る、とお母さんはそう言ったのだ。
しかし、もともと私に備わっていた能力が帰ってくるだけだ。暴走など、起こすはずがない。現に、なぜかお母さんの方に帰ってきていた運動能力を得ても、お母さんは暴走しなかった。
私は今、きっと治療魔力を得ているはずなのに、それを使えないようにされている。
なぜなのだろう?
「アクア?勘違いしてるかもだが、戦えれば問題ないわけでもないからな」
いつの間にか居間に来ていた富白が呆れたように言っている気がする。
「アクアー?アックアー!」
「だめです、富白。今のアクア様に気づいてもらうことは不可能だと思った方がいいですよ」
富白と麗麒の会話がどこか遠くに感じた。
うー、どうしよかな。お母さん、完全無視なんだよね…
俺、ウォルト。覚えてる人の方が少ないかな。以前、アクアに決闘を挑んでエレン捕獲に関わったあのダメな感じの男だ。
そんな、俺。人生最大の大ピンチ。
「おいっ!聞いてんのかよ?兄ちゃんよー?」
「はひっ!聞いてますっ!」
「持ってるもん全部よこせつってんだろうがよ!早くしろやっ!!」
「…そ、それは、あのぅ…」
「妹ちゃんは黙ってろ。おい、持ってるもんと妹置いてどっかいけや!」
「…い、妹だけは…」
状況を説明しよう。
いや、聞いてくれ。こんな情けない男の話しなど聞きたくもないと思う。それはわかる。俺も聞きたくない。けど、聞いてくれ、
まず、ことの始まりは妹であるウォルナが商品の入荷をすると言って央都へと向かったことだった。
俺の妹、ウォルナは魔法道具屋をやっていて、あの武器屋の女の子、エレンとは親友だった。そのため、現在は魔法道具もエレンの武器屋もやっている。
央都への道のりは長いので、危険だと思い俺も付いてきたのだが…
無事に商品を入荷し終え、さあ帰ろうとなったとき、この男たちに絡まれたのだ。
今思えば、妹が央都へ向かうと言った時、突然姿を消したルイードたちパーティーに会えるかもしれない、なんて下心を持ったのがいけなかったのかもしれない。破壊された試練の塔や、消えたパーティー、放置されたホームなど、七不思議にされそうなピースたちを見て適当に想像を膨らませておけばよかったのだ。現に、彼女らのファンだった奴らは聖地巡礼などと言ってホームに勝手に入ったりして楽しんでいた。
いや、どこからか央都へ向かったという情報を得たパーティーが会いにここへ来ているとも聞いているが、それはかなり少数派だ。
まあ、俺が付いてこなくても妹は来てたと思うし、そしてやはりこいつらに絡まれていたとは思うけれど。
兄としてのプライドなんて捨てて、妹を見捨てて逃げてしまおうか。そうだ、騎士団に連絡すればいいじゃないか!そうだそうだそうしようっ!
と、俺が逃げようとした時だった。
「おい、そこのパーカー。何見てんだよ」
男の1人が俺の背後に声を掛けたのだ。
振り返ると白いパーカーを羽織り、フードを深く被った背の低い人物がまるでこちらの状況など見えていないとでも言うようにゆっくりと歩いていた。しかし、自分に声をかけられたと気づいたのか、立ち止まり、こちらに顔を向ける。
「……」
それでもなお、口元しか見えなかった。しかし、どうやらかなりの美人らしいということは、口元だけでも十分にわかる。トンネルのようになった、ひと気のない暗いところにも関わらず、その肌は白く輝いているようにも見えた。
水色のワンピース、ミュール、そしてフードの中から少しだけ出ている青い髪。その全てがとても似合っている、美人。なのだが…
「あ?子供じゃねえか。惜しいなぁあと十年も経ってれば…」
俺を恐喝していたリーダー格の男が残念そうに頭をかく。そう、その背丈は一メートル言っているかどうかのとても小さなものだったのだ。
「おい、どっかへ行け。今なら許してやるから」
男が犬でもはらうようにしっし、と手を振る。その幼女は一瞬だけムッと言ったように口を尖らせ、あろうことかこちらに近づいてきた。
「…子供…じゃないもん…*******」
何かをブツブツと呟いているようだが、距離も少しあるし、小声のため聞き取れない。
「おい、聞いてるのかっ!?それ以上来たら逃がしてやれねぇぞっ!?」
男たちも驚きの表情を見せる。子供を逃がしてやろうと思うあたり、意外といいやつなのかもしれない。
「**************」
しかし、幼女はそんなのどこ吹く風で、呟きを続けつつ、空中に何かを描くように手を動かし始めた。その姿にとうとう男の1人が怒り出す。
「おいっ!無視すんなっ!!」
幼女に殴りかかったようだったが、幼女は呟きも手も止めず、少し左に飛んでそれを回避した。男はそのまま前のめりに倒れ、幼女のフードは風圧によって落とされる。
「…っ!」
ここで初めてさらされた、幼女の顔に、男たちは息を飲んだ。しかし、俺はやつらよりもずっと衝撃を受け、身動きすら取れなかった。
その顔はついさっきまで考えていた人物と同じものだったのだ。
「やはり、央都にいたんですね…っ!アクアさんっ!」
俺の叫びにチラリと視線だけを寄越したが、すぐに興味を失ったらしく男の背後の地面を指差し、そちらに視線も移される。
「*******、召喚、ガウル」
そして、幼女、アクアさんの呟きが終わった途端、辺りを光が包み…
「うっ…わぁあああ…?!」
光が収まった時、男の背後には巨大な犬が凶悪な牙を見せつけるようにして座っていた。
「あ?何…を…」
俺の悲鳴と視線から男も振り返りそれを見る。
そして、膝から崩れ落ち、ガクガクと震え出した。
「わんちゃん、餌」
アクアさんの無情な一言を聞いた途端、その犬は尻尾を振ってガウッ!と返事をした。
そして、口を大きく開け…
「ひいっ!す、すすすみませんでしたっ!」
食われようとしていた男たちは走って逃げて行ったのだった。
「…子供じゃないもん」
その背中を、アクアさんは満足げに見送っていた。
ごめんなさい、明日に続けます
ウォルトを覚えてない方は決闘を見てください。あそこの語り部です




