ウンディーネ×白愛×麗麟
昨日は申し訳ありませんでした。
私はストックなしで書いているので改稿もいきなりのお休みも多いですが、お付き合い頂けると嬉しいです。
「と、言うわけで、この子、今日から仲間ね。仲良くしましょ」
フレイアはウンディーネの愚痴を散々聞いてあげた後、パーティーメンバーたちにそう言った。
すでにウンディーネは心を開いている、その上、フレイアの力も認めているので、主であると思っている。敬語は使わないが。フレイアは威張り倒したい性格じゃないので、白愛や麗麟のように気軽に話しかけたりしてくれるウンディーネを既にかなり気に入っていた。仲の良い友人のような感覚だ。
「取り敢えず、今日は野営。みんな、支度して」
その言葉にみんなは野営の準備を始める。と言っても、フレイアが後から結界を張るので自分が寝る場所を確保するだけだ。今日はウンディーネの住処の近くなのでモンスターからの保護結界は張らない。ウンディーネとは契約済なので彼女が自動発動型に持つ結界が発動するはずだからだ。正直な話、あれはかなり魔力を喰うので助かる。
「改めて、よろしくね、ウンディーネ」
「ええ、よろしく、契約の主」
ウンディーネはとても友好的な笑顔でそういう。対して、フレイアは納得のいかない顔をした。
「…うーん……」
「?」
それに首を傾げるウンディーネに困ったような顔を向ける。基本、無表情な子だが最近では誰でもその無表情な顔に浮かぶ感情に気づけるほどになっていた。
「もう少し呼び方、なんとかならないかしら?」
フレイアはなんとなく、主と呼ばれるのを好まない。それは、自分が人よりも優位に立つのはともかく、明らかに恭しく扱われたり、勝手に実力差を感じて敬遠されるのが嫌だからかもしれないし、自身に友と呼べる人物がいない…もとい、少ないからかもしれなかった。
「…では、マスター?」
「なんだか、中二くさい…」
思わず頬を引きつらせたフレイア。最近、街で本を読むようになって得た知識である。
「ちゅーにー?」
もちろん、ウンディーネが中二など知るはずもなく、フレイアはいや、と手を振って誤魔化した。
「フレイアで構わないわ。あの子たちは主上と呼ぶけれど」
そう言って、自分の寝床以外にフレイアの寝床までもを準備している白愛と麗麟を指差した。二人はフレイアを挟んで三人で寝るつもりのようだ。
「主上…んー、なら、フレイアで行くわ」
もともと、ウンディーネはフレイアと友人関係として契約したつもりだったので、その方が自然だ。もちろんフレイアに異論はない。
「ん、それで、あなたは今日は湖で寝るの?」
フレイアの疑問にウンディーネは当然のごとく肯定する。
「なら、明日からは?」
明日から。ウンディーネはフレイアと共にここを出なければならない。ここは水の精霊の聖地。そこの長と呼ぶべき精霊を連れて行っても構わないのだろうか。フレイアはふとそう思ったのだ。
「心配しなくてもいいわよ。精霊には実体はないからね。ただの魔力の塊なのよ。だから、どこにでもすぐに移動できる。明日からもここで寝ることになると思うわ。そもそも、あなたに呼ばれなければ私は出なくても良いのだからね?」
ウンディーネが説明する。口調がどこか姉のようなのは単に歳の差があるからだろうか。外見的にも20代後半のような見た目を持ち、どこか水のように透けていて、常に身体を揺らめかせているが言ってしまえばそれだけのこと。外見上は普通の人間のようにも見えるのだ。
麗麟もそれなりの歳に、18歳の姿のフレイアよりも歳上に見えるが実年齢は不詳。と言うか、本人含めもう誰も把握していないだろう。そのくらいは生きている。そして、それは白愛もだ。白愛は外見上はフレイアよりも歳下に見えるのだが。
「そうね。できるだけ迷惑はかけないようにするわ」
「けど、あまり放置し過ぎないでね?」
二人は固く握手を交わし、それぞれの寝床へと戻って行った。
「…今日の探索は中止ね」
フレイアのその言葉にルイードをはじめとしたいつものメンバーは安堵の息をついた。フレイアなら、このくらいは大丈夫と言い張る気がしたのだ。
「シャーベルトのいるところが氾濫起こしてないとも限らないしなぁ。私はちょっと見てくるから、今日は全員自由行動ね。休日だと思ってくれる?暗くなる頃にはここに集合。それじゃあ、取り敢えずは解散」
言ってすぐにフレイアは湖の前の森に消えてしまった。麗麟と白愛が追いかけようとするがフレイアがついて行く許可を出していないし、一人で行くようなことを言っていたので仕方なく今日は別行動とすることにした。
さて、どうして本日の探索が中止になったかと言えば、雨のせいである。
雨。それも豪雨。滝のように降っている。しかも一粒一粒が大きい。しかも、なぜか重い。当たるとかなりの衝撃が走る。フレイアによれば、魔力を含んでいるとかいないとか。この近くに闇属性の使い手がいる可能性が高いらしい。それも、かなりの使い手だ。
なぜかというと、闇属性には土と言う負荷属性があって、それが重さの変化を司る属性だからだ。かなりの使い手で、この雨ならば自然に身体から出る魔力を雨に含ませてしまうのも仕方が無い気がした。
「うーん、暇になりましたね」
しかし、そんなことよりも取り敢えず今は暇をどう潰すかの方が、少なくともウンディーネ、麗麟、白愛にとっては重要であった。正直な話、水属性の大精霊であるウンディーネにはそんなことをする可能性のある人物としてノームとその契約の主という大体の目星がついていたし、白愛にとっては自身の苦手な魔法の話だから興味なかったし、麗麟にとっては治療魔術以外の魔法に興味がなかった。
詰まる所、三人が三人とも、フレイアさえ無事なら問題ないのである。
「そうね、かなーり、暇ね」
「んー、んー、んー、モンスター狩りでも行く?」
麗麟の先ほどの台詞に2人もだらけながら答える。当たり前のようにウンディーネが二人に混じっているのもあれだが、フレイアに仕えるモノとしては三人でいるのが自然だと誰が言うでもなく共通意識になっていた。
「そう言えばさ〜、ウンディーネ」
だらけきった様子の白愛がウンディーネに声をかける。暇なので近くの森を歩きながらだ。今はモンスターとのエンカウント待ちである。
「何?白愛」
ウンディーネは三人の頭上に防御結界を張っている最中なので少し素っ気ない。しかし、慣れた手つきで無事に張り終え、麗麟と共に白愛の次の台詞を待つ。
「どうして光の精霊はいないの〜?」
その時、またまた足元に落ちていた手ごろな木の枝を拾い上げ、枝とは思えぬ鋭い音を響かせながら白愛が問う。枝が振られるたびにその辺りにある雑草が風圧で引きちぎれる。
「ああ、光にはあいつがいるからよ」
「あいつ、ですか?」
少しうんざりしたような表情で言うウンディーネに麗麟は怪訝な顔をする。しかし、その表情にはどこか納得の色があった。ウンディーネの言うあいつを知っているのだろう。つまり、大体言いたいことはわかっている。
「四大精霊だからね?もともと一属性ないのは当然。だけど、光はね…あいつが総括してるから、光の精霊たちもいるけれど……」
ウンディーネは腕が彼女自身の腰程もある、筋肉隆々のまるで彫刻のような人物を思い浮かべながら、苦い表情をした。どうやら、精霊には精霊なりの苦労があるようだ。
「光属性のやつは聖人聖母みたいなやつが多い…と、思ってるやつが多いけど、あいつをはじめ、そんなやつはごく一部よ。なんなら、水属性の方がよっぽど清らかだわ」
どこか自慢するような表情でいうウンディーネに麗麟は微笑みかけながら先を促す。しかし、麗麟は内心で冷や汗をかいていた。ウンディーネがいう人物が自身も、白愛もよく知る人物な気がしたからだ。
「残酷無比なやつで、戦闘を好むのよ。名は絶対に名乗らないし。だから、白愛とフレイアは気をつけた方がいいかもね」
「え?」
とうとう頭の上で枝をクルクルし、雨を防ぐという人間離れし過ぎた芸当を見せ始めた白愛が、突然名を呼ばれて意識をウンディーネに向ける。話を振ったのは彼女だが、半分も聞いていなかった。
「な、何?何に気をつけろって?」
そもそも、名を言われたのは白愛とフレイア。この2人は確かに超人的な攻撃力を持っているという共通点があるが、戦闘スタイルがまるで違う。フレイアは魔法中心。白愛は武道のみだ。
「あいつからよ。あいつは強いやつを好むの。魔法はあまり使わないけれど、フレイアだって槍術が使えるんでしょう?」
ウンディーネは少し呆れたような顔で言う。2人は顔を見合わせて同時に叫んだ。
「「あ、そういえば」」
自身が最も愛する人物の戦闘スタイルを忘れるとは中々悔しいものがあるが、フレイアはここ最近かなり強い魔法のみを使用し、一撃で戦闘終了ということが続いていたので致し方ない部分もあった。
「というか、どうして昨日あったばかりのウンディーネがそんなことを知っているの?」
そこでふと、白愛がいきなり現れたモンスターの額に持っていた枝を投げつけ、絶命させながら、疑問を口にする。フレイアは昨日も一撃で終わらせていた。そのため、彼女の主力武器を解放すらしていなかったのだ。
「あのね、仮にも水の大精霊よ?私。それが、水属性強化に特化した武器に気づかないとでも思ったの?フレイアは首から下げているでしょう?あれは確かに槍だった。聖槍じゃないの?」
さすがは水の大精霊とでも言うのか、さすがの麗麟と白愛も唖然としてしまう。あのネックレス型に封印されたのを見てそこまでわかるものだろうか。しかも、あの状況下で、である。
「確かに、主上は槍術をお使いになります……もしも、ウンディーネ、あなたが言う人物が私たちが思っている人物なら…」
麗麟の続く言葉を白愛が引き取る。
「確実に私たちは戦闘になるね〜。しかも、今の主上じゃ、負けるかも」
この台詞にはウンディーネも少し驚く。確かに、自分のようにあいつは圧倒されはしないだろうが、あいつがフレイアに勝てるとも思わないのだ。それに、白愛もそうそう負けはしないだろう。なぜなら今も集団で現れたモンスターたちに嬉々として回し蹴りを喰らわせ、一撃で地面に沈めているのだから。
「その人物の、特徴は?」
麗麟の問いに、先ほどの思い浮かべた特徴を口にする。2人は軽くため息をついて頷いた。
「「間違いない、おじさまだ」」




