炎上はこの人にお任せ
あの男たちは一応動画を投稿しているやつらしい。
調べた結果、ヒットした。チャンネル名はもんもんブラザーズというグループ。チャンネル登録者数が10万はいるが、再生回数は1万もいかず、高くて7千という感じ。
明らかにチャンネル登録者数と視聴回数が見合ってないが……。
それに、動画がものすごく炎上するようなネタばかりだ。ゲーム関連でも新規プレイヤーをリスキルしてみたとか胸糞悪い動画ばかりを出している。
新規プレイヤーは私たちにとっても非常に嬉しいものなのだけど……。
こんな奴らをギルドに入れたら私の評判がどうなるか分かったもんじゃないな……。動画を開いてみてもコメント欄がものすごくアンチばかりだった。
こんなことして何が楽しいの?とか。そういうアンチコメントが多くなっていて、最新のコメントではコメント機能自体がオフにされている。
「炎上商法でも狙ってんのかな」
炎上商法はものすごくリスキーだぞ。
「そう! 炎上商法はとってもリスキーなんです!」
「だよねー」
私は都城 桜とコラボ配信の時に相談してみた。
桜ちゃんはものすごく炎上したことがあるからね……。経験者は語る。
「ほんっとに炎上していいことはひとつも無いです! 名前は確かに売れますけど、私もちょっと厳しいようにその名前にマイナスイメージが付きまとうんですね!」
「さすが経験者……」
「信頼は作るより崩すほうが簡単ですし、一度崩れた信頼は治すことがほぼ不可能なくらい立て直すのきついですよ」
「言葉の重みが違う……」
「私だって今は真面目にやってますけど、そういう声もありますからね! ほんとに、その節はすいませんでした」
桜ちゃんは頭を下げた。
「で、ここからが本題なんだけど……。絶対この手の奴らってあることないこと言いふらすと思うんだよねぇ……」
「うーん。たしかにそうですけどあまり気にしなくていいと思います。あまりこういうことは言いたくありませんが、チャンネル登録者数もあきらかに……っていうか、こういうタイプって基本自爆するっていうか……」
「……そうなん?」
「例えばですけどね、不知火さんが不正を働いてたとして、私が不知火さんがこういうチートを使ってましたって言ったら信用されると思いますか?」
「あー、それはないね」
「だったらママは? ママが不知火さんがこういうことをしていたのよーって言ったら?」
「……たしかに信じられるかも」
「このように、人って印象で信用できるかできないかを決めるんですよぅ。私も評判は悪いほうなので信用はほとんどないんですけどね」
桜ちゃんの言う通りだ。言う人によって印象が……。
「だからこの場合、誰が言ったか、が重要になると思うんです。イナリ様は視聴者様の信頼度は高いと思いますし、そう簡単に炎上はしないと思います」
「だといいけど……」
「この前みたいに第三者から見ても明らかに……っていうのは別として、第三者から見たら真偽があやふやなのはどちらが信頼できるか、によりますよ!」
なるほど。
こういうのは多分経験則なんだろうな……。
『経験者は語る』
『炎上に対する造詣が深い』
『これはそう』
誰が言うか、か。
私はたしかに自分でも思うけど社会的信頼度は高いほうだと思う。炎上こそしたが……。今では何ともないような生活を送れている。
身バレしてもほとんど生活に実害がないし……。
「ありがと。じゃ、気にしなくてもいいかな」
「いえ、イナリ様のためならば!」
「ありがとう。それじゃ、気を取り直して配信やろっか! 今日はどこ行くの?」
「今日はですね、秋じゃないですか。秋といえば……そう、サツマイモ! 紅葉ヶ丘という場所にものすごく美味しいサツマイモが自生してるらしいんです。結構な秘境にあるとか……。それを探そう!という配信です。それで焼き芋を作って食べたいなと」
「焼き芋か……。サツマイモはスイートポテトにしても超おいしいよね」
「わかりますー! ほかにも天ぷらとか大学芋とか! サツマイモっておいしいんですよねぇ。名前は桜と春の名前ですけど、秋の味覚が大好きだったりするんですよ!」
「わかる! 秋の味覚いいよね! サンマを紅葉おろしで食べるのとかもう最高! 内臓とかほろ苦くておいしくて……」
「秋は太るんですよねぇ……」
「太るよねぇ……」
「でもゲームだったら」
「太る心配なし!」
「まあVは現実の姿見せるわけじゃないから太ってもわからないんですけどね?」
「それを言っちゃおしまいよ」
ともかく、秘境になる超おいしいサツマイモか……。そそるな。




