配信告知
活動休止宣言を前もって出した途端、SNSではトレンド入りをしていた。
玉藻イナリと、活動休止という単語と、受験勉強という単語が。受験生にとっては見たくない単語ナンバーワンくらいの受験勉強という文字。
何事かと思った人がVが活動休止するだけかと呟いていた。
反応は多い。
私を推してくれているファンたちもたくさんいる。彼氏ができたからじゃなくてよかったっていう人もいるし、受験勉強とどうにか両立できないものかという人もいる。
人の考えは千差万別。誰がどう思おうが好きにするしかない。
私はいつもの不知火さんたちの配信にお邪魔していた。
「聞きましたよぉー! イナリさん2月で活動休止だって! がなじぃーーーーー!」
「まあ、受験勉強は進学する者にとって避けては通れない道であるからね。仕方ないと言えば仕方ないのだが……」
「ま、寂しくはなるわな。あたしらは結構仲良かったし、一緒にやってきたからな」
「しんみりしちゃいますねぇ……」
「しんみりするっていってもあと2か月もあるんすけど……」
「馬鹿野郎! 歳とってきたら歳月なんてあっという間なんだよ!」
「えぇ……」
そうなんですか?
桜、不知火さん、リキエルさん、ママが私のお別れ会みたいなノリで配信してるんですけどまだ二か月ありますし、二か月間は全力で頑張るって決めたんですけど。
「で、今日はなんか狩りに行くって聞いたんですけど」
「おう! 残り2か月! それ以降はあたしらはイナリとコラボが出来ねえ! だから手向けみたいなもんでよ! 頑張れってことで強敵と戦うんだ!」
「強敵?」
「アナザードラゴン……。その存在は知っているだろう?」
「知ってるも何も私の運命を狂わせたやつなんですけど……。ってまさか!?」
「そのまさかです。我々は最後に、アナザードラゴンの討伐をして終わりませんかという話です。もちろん、私たち4人だと心もとないので、イナリちゃんのギルメンと、まじまんじから天使シロ、神宮寺 神子とも協力し、計……11人での討伐に挑みます」
まじか。アレに挑むのか。
正直、私も勝てるビジョンがないんですけど。アルカードにも前にちょっとだけ聞いてみたが、動画を見る限り今のアルカードでも勝てるかどうか怪しいという。
勝率で言えば2~3割といっていた。
「そして日時は……2月29日! 全力で送り出しますよぉ」
「来年はうるう年か……」
「燃えてきたぜ! 今からレベリングとかいろいろしてかねえとな!」
「11人っていうけど私のギルメン合わせたら3人足りなくない?」
「いや、スコティッシュさん、ヒバナさんは戦闘職ではないので裏方に、ロロさんはその、その日仕事があるそうです」
「さすが人気女優さんだぜ……。なるほどな。たしかにあの二人は戦い向きではないからな……。このことはギルメンに伝えておかなきゃな」
「その必要はないよ。私の口からすでに伝えているさ。彼らも元をただせば君のファン集団。断る理由がないからすんなりいったよ」
「そこまでもう根回ししてるんすか……」
ここまで大きいことをさせられるとは思ってなかったな。
あのアナザードラゴンか。一度対面したことはあるが、あれはたしかに無理ゲー……っていうか。
「どうやってエンカウントするんだ? あれランダムエンカウントだから運ゲーに……」
「運ゲーは君の得意分野だろう?」
「……ってのは冗談でよ、運営にも相談したらその日だけ特別、あたしらに強制的にエンカウントさせてくれるみたいだぜ!」
「えぇ!? 私のためだけにそんなことまでする!?」
「正直、私も運営が受け入れてくれるとは思っていなかったがね。CMに出たのが功を奏したのかな?」
「……あぁ、なるほど」
マルーンの親父さんだな。あの人、株式を51%買い占めたって言ったし、指示されたんだな……。
なるほど。道理で運営が協力できるわけだ。だってマルーンがいるもんな……。
「もう懸念点はありませんか?」
「……配信は誰が?」
「そりゃもちろんイナリちゃんです。ただ、私と神宮寺 神子さんもカメラを回して3窓です。結構大きな企画ですからね」
「それに? 私たちのリスナーさんや、まじまんじの視聴者さんにもイナリさんのことを知ってほしいですから! アローライフ、まじまんじ全面協力です!」
「逃げ場ねえ!」
そこまでするか!?
「ま、逃げるつもりはないけどね!」
「そう来なくっちゃな! じゃ、あたしらはその日までレベリングとかいろいろするからよ! 2月29日! 頑張ろうぜ!」
そういってリキエルさんは走り去っていった。
今日は単なる告知配信だけだったらしく、すぐにカメラが降ろされる。
「では、私もレベリングをしてきますねぇ」
「私もしようか。それに、ポーションの量産を始めないとね」
「私も全力で頑張りますともー!」
それぞれめっちゃやる気を出していた。
こりゃ、失敗できないな。受験も、アナザードラゴン討伐戦も。
案外早く終わりそうです。




