勝利へのカウントダウン ②
画面の先の安藤ぽんかんが順位を発表していく。
10位、9位とまだママの名前は出ない。私とリキエルさんでだいぶ稼いだから負けることはあまりないと思うが……。
だがしかし、まだ不安はある。というのも、10位に入ってる名前は本当にプレイヤースキルが高い人ばかりだったから。
「ママの合計ポイントは!?」
「2万9千くらいです……」
「9位の人が2万5千くらいだから……ママが勝ってるかわかんないなぁ!」
桜の懸念。それはもっともだ。
所持ポイントも張り出されており、9位の人で2万5千と少し不安になるポイント総額だった。とりあえず上位10位に入ってることは確定したのは喜ぶべきことだろうが。
その後も6位、5位と発表されていくがまだママの名前が出ない。
「ベスト5は確定したな!」
「そうだねぇ。ベスト5は決定したが……まだまだ油断できないよ」
「そうですねぇ。まじまんじには超ゲームがうまい人がいるからその人が懸念点ですねぃ」
そして、ベスト3が発表される。
「第3位はっ! アローライフ所属!」
みな心をどくんと鼓動させる。
「栗坂 マロン! 獲得ポイントは2万9千120ポイント!」
「うわぁ!? ビビったぁ!? でもママの獲得ポイントと近くないですか!?」
「私は2万9千990ポイントだから……この間にいればいいのですが」
「手に汗握る戦いになってきたな! だが、2位以上は確定だぜ!」
盛り上がってきたところで、ついに2位の発表となった。
ドラムロールが鳴り響く。そして、画面に出た文字は。
『第2位! アローライフ所属、母海ちひろ! 獲得ポイント……』
ママの名前が出てしまった。
みな「あぁ~……」と落胆の声を出す。
「くそっ、1位には届かなかったか~」
「結構尽力したつもりではあったが……届かなかったか」
「私たちも途中からとはいえ協力したんですけどね……」
「無念~」
勝てなかった。
結構健闘はしたが、1位には届かなかった。それはそれでちょっと悔しい。
だったら1位はどのくらいのポイントを稼いだんだろうか。
『そして、栄えある第1位はっ……! まじまんじ所属、神宮寺 神子!』
「やっぱしんぐーじさんでしたねえ」
「神宮寺ってあまりよく知らねえけどどんな奴なんだ?」
「うーん、最近デビューしたばっかなのであまり知らないんですけど……ハーバード大学を辞めてVの道を歩むことになった奇特な人ってぐらいしか知りません……」
「ハーバードってあの?」
ということはマジで頭いい人だ。
そんな人がなぜ?
『では、1位に輝いた神宮寺さんの元に今、まじまんじ所属のでびるんパイセンが向かっています! そろそろ繋がるかな? ぱいせーん!』
『おう、こちらデビル。そして、目の前にいんのがうちの新人、神宮寺 神子だ』
『どうも。よろしくお願いします』
顔がいいな。Vの顔を元にしてるんなら当たり前だが。
見た感じクールビューティーと言った印象を受ける。淡々と質問に答えている姿はとても美しい。
神宮寺さんの周りには8人くらいのVがいた。中には私が倒した廻 雪月花さんもいる。なるほど。私たちと同じような感じで集めてたわけか。
『改めて優勝おめでとう。貴様には賞金とアローライフ、まじまんじのVの好きなVとコラボする権利が与えられるわけだが希望はあるか?』
『そう……ですね。うーん、いいのかな……』
『いいのかな、とは?』
『実は今ものすごくコラボしたいというか、推しのVがいるんですよ。私はその推しにものすごく惚れてハーバード大学を辞めて推し活と同時に同じ舞台に立ちたいと思い、まじまんじに入ったんです』
『おお、ではそのVTuberとコラボしたいと?』
『でも、推しはどちらにも所属してないんです』
『ということは他の事務所かい? それとも個人?』
『個人です。玉藻イナリと言うんですけど』
いきなり私の名前が出てきた。
その瞬間、私の方に視線が集まる。
「また君のファンかい?」
「イナリちゃんが好きすぎて大学を辞めて……」
「お前のファンのVは強火多くねえか? お前と並びたくてズルしてた奴もいるしよ」
「すいません……」
なんでなんだろうね。
『玉藻イナリ! 知ってるぜ。あの狐系のVTuberだろ? アローライフに言えばコラボさせてくれるんじゃねえかな。ママとも仲がいいみたいだからよ』
『玉藻イナリさんでお願い、したいです。どちらにも所属してないVTuberで申し訳ないのですが』
「なんか私アローライフ所属みたいに扱われてません?」
「まぁ、ほぼアローライフ所属みたいなもんだからねぇ。事務所のバックアップがないだけで」
『玉藻イナリさんとはゲーム内でも会ったことないので早く会いたいです。本当はポイントは玉藻イナリさんにあげたかったんですが……』
アローライフに許可が必要になるの? コラボする場合。
私個人勢だから依頼くれたらコラボしますけど……。
私がツッコミながら見ていると、背後で廻さんがダラダラと汗を流していた。
『……あの、神宮寺』
『なんですか? 廻さん』
『その、私ね……玉藻イナリさんと会ったし戦った……』
そういうと、神宮寺はギョッと目を見開いた。
『なんで呼んでくれないんですか!?』
『ファンってこと知らなかったんだよぉ〜! まじまんじの人には言ったかもしれないけど私アローライフ所属だしぃ!』
『玉藻イナリさんからポイントを奪ったんですか!?』
『いや、負けたからあげちゃった方……』
『あ、そうなのですね……。ささやかなプレゼントになりました』
「それでいいのか。てか、そのポイントはママに行ったんだが」
プレゼント横流ししましたけど。
「あっはっはっ! 君のファンは本当にどこにでもいるねぇ!」
「まさか神宮寺が同担だったとは……。見抜けなかった私はバカです」
「なんか私の周り変なのばっか……」
なんかやばい人を引き寄せるフェロモンでもでてんのか私。




