第8話 無影剣
めちゃくちゃ長くなってすみません。気が向いたらで投稿してますが,最近見てくださる方がいるのでぼちぼち再開していきます。
黒マントの男がゆっくりと右手を横に振る。
(なんだ…?)
すると何もない空間から、キンッという金属音が響き渡るのと同時に、俺の頬を硬い何かが通り過ぎたーーー
「っ!?みんな下がれっ!」
「ルナリア様っ!」
「わっ!?」
俺は咄嗟に叫びながら後ろに飛び、ミュレーはルナリアを抱えて防御体制を取る。
ザクザクザクっ!!
「ぐっ!?」
「いって!?」
「3人とも大丈夫ですか!?」
リグスとティニアも同じく後ろに飛ぶが相手の方が速かったらしく、回避する前に既にティニアの腕とリグスの足が切り裂かれ、血が出ていた。
幸い、ルナリアが治癒魔法のフォースヒールをかけてくれたお陰で大事には至っていない。
「ほう?お前は中々反応が速いようだ。面白い」
男は薄く笑いながら腕を振るう。
すると周囲の空気がブゥン!!と言う鈍い音を立てた。
「おいおい…見えねえ武器ってやつかよ!?」
「そ、そんなの反則じゃない!?」
リグスとティニアの反応は最もだ。流石にこれは…俺もきついと感じている。
「なんとかして、空気の流れを読むしかないな…」
「…出来るんですか?」
ミュレーの言葉に俺は小さく頷く。
「さて、今のは挨拶程度だ。ここから先、生き残れるかな?」
奴は腕を回して見えない武器を飛ばす。
「はあっ!」
ミュレーが即座に突進し力強い袈裟斬りを放つが、奴はほとんど動かず、ただ右手の位置を微妙に変えただけだった。
カキィンッ!!
ミュレーの剣が途中で止まり、見えない刃と激突。衝撃でミュレーの体がわずかに浮いた。
「くっ…!」
ミュレーが連続で剣を振るうが、どれも見えない武器に受け止められる。奴の動きは最小限で、まるで予知でもしているかのように正確だ。
カーーーーン!!
「かってえ!?」
ミュレーで気を取られているうちに俺も攻め込むが、途中で殴られたような感触に襲われ、思わず叫ぶ。
「ティニア!」
「ミュレー、離れて!」
「くっ!」
ミュレーが退くのと同時にティニアが魔法機銃を奴に向かって放つ。
「ファイヤードライブっ!!」
ガガガガガッ!!
炎を纏った魔法弾の嵐が奴を包む。だが見えない武器が全ての魔法弾を切り落としていた。
「だから反則でしょーがっ!」
ルナリアが杖を掲げ、素早く詠唱。
「光の矢よ、敵を射って!シャイニングアロー!」
光の矢が何本も飛ぶが、それらも空中で次々と切り裂かれ、消滅していく。
「甘いな。全て見えているぞ」
男の声は冷たく、余裕に満ちていた。
「うおおおっ!!」
俺は武器を避け、飛び上がりながら奴に向かって拳を叩きつけようとした。
しかし、ドンッ! という衝撃音と共に、俺の拳は見えない武器で受け止められていた。衝撃が俺の腕全体に跳ね返り、大きく後ろに飛ばされる。
「ちっ!!」
シュン、シュン、シュンッ!
再度攻撃を叩き込もうとした時、俺の胸、腹、太ももに同時に激しい斬撃が刻まれる。その傷は深く血が噴き出し、激痛が走った。
「ぐあっ!!」
「イオさん!!」
ルナリアが慌てて《光の障壁》を展開するが、奴の見えない武器は障壁ごと斬り裂き、ルナリアの頰を浅く切った。
「きゃあっ!」
「ルナリア様!!」
ミュレーが怒りに任せて全力で斬りかかる。騎士剣が唸りを上げて奴の頭部を狙う。
ガァンッ!!
「くっ!!」
しかし、またしても見えない武器に完璧に受け止められ、ミュレーの剣が弾かれる。反動で体勢を崩したところに、奴の左手が動いた。
ズシュッ!
ミュレーの右脇腹に深い斬撃が走り、血が大量に飛び散った。
「がっ……!」
「ミュレーさん!!」
ルナリアが再びフォースヒールを唱えてくれるが、先程の傷より深いためか、俺とミュレーはほぼ戦えない状況に陥ってしまう。
(まずい…!このままじゃみんな死ぬぞ…!?)
戦況が一気に悪化していく中、リグスが短剣を逆手に持ち替えて低く滑り込む。
「この野郎……!」
双短剣で奴の足元を狙うが、カキン、カキンと見えない武器の連撃で全て防がれ、逆にリグスの両腕に新しい傷が追加された。
「っ、このっ!!」
リグスが渾身の一閃を繰り出すが、奴は安易と躱して回し蹴りをお見舞いした。
「がはっ!!」
ズザザザザッ!!
「くっ…くそがっ!!」
奴は静かに笑った。
「この《無影剣》……お前たち如きには到底太刀打ちできんよ」
奴が右手をかざすと、空気が急激に淀み始める。
「っ!!」
(やべえっ!!)
やばい空気を察した俺は咄嗟にみんなを守ろうと駆け出す。だが…
「ここまでだーーー無影刃・絶牙」
駆け出した瞬間、ルナリアを除いた全員の周りの空気が淀み、無数の斬撃が俺たちを切り刻んだーーー
「あがああああっ!!」
「きゃああああっ!!」
「ぐああああっ!!」
「あああああっ!!」
4人の悲鳴が響き渡り、全身から血が吹き出し、辺りは激しい血の海と化した…
「いやああああっ!!イオさんっ!!ティニア!!ミュレーさんっ!!リグスさんっ!!」
ルナリアが悲痛な叫びを上げながら回復魔法を唱えようとする。
ドガッ!
「あうっ!」
だが、杖を見えない武器ーーー無影剣と呼ぶ武器に弾き落とされ、阻止されてしまう。
「ルナリア、我々と共に来てもらうぞ」
奴が無影剣をルナリアの周りに漂らせる。
「っ…」
「待ち、やがれ…っ!」
このままではルナリアが連れ去られる…俺は渾身の力で立ち上がり、奴にもう一度敵対した。
ポタポタ…
「っ!?イオさん…!!」
ルナリアが悲痛な目で俺を見てくる。
それはそうだ。今の俺は血塗れ…普通の人間では立てないぐらい酷い状態だからだ。
「ほう、まだ立てる余力があるとは。だがその姿ではどうしようもあるまい?」
奴が手を振り翳すと、俺の周りの空気がまた淀む。そしてーーー
ザシュッ!!
「あがっ…」
首筋を切られ、大量の血が噴き出す。
「っ!!いやあああああっ!!」
(ルナ…)
崩れゆく意識の中、聞こえてきたのはルナリアの悲痛な声…
(くそ…ちく、しょう…)
俺は嘆いた。なんて酷い様だと…彼女達を守れない、なんて弱い人間なんだ、と…
(終わりたくねえ…終わって、たまるかっ…!!)
俺は強く願った。このまま終わりたくない、終わらせてたまるかと。
ーーーその時、俺の心臓が一際大きく鼓動した…
ザッ…!
「む…?」
「えっ…?」
俺は力強く踏み止まり、倒れ込むのを防ぐ。
それを見た奴とルナリアの顔が一変する。
「まだだ…」
俺は目を開けて奴を睨みつけた。
「まだ、終わっちゃ…いねえんだよ…!」
そして俺の意識は、そこで途切れてしまったーーー
第8話 終了
ご静読ありがとうございました。
ただこんだけなのに一年近く空いてしまった…




