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第6話 金髪ナンパ男

今回はちょっと長めです。

「それで、今日のことについてなんだが」


「あ、ふぉほひひふはへふは?(どこに行くかですか?)」


「だから口に物を入れながら喋らないの」


朝、俺達は宿の食堂で朝飯を食べながら今日の方針を考えていた。


「むぁ…んっく。どこに行くか、と言うことですか?」


「ああ。ただ、今日は移動だけになるかもしれない」


「…あいつらの事があるから、だね」


「それって…」


ティニアの言った「あいつら」…つまりヘストール隊の事だ。俺は頷きながら続ける。


「今日中に国内から出たほうが良いと思っている。昨日は2人共、旅をするのは初めてだっただろうし、遠くまで行かない方が良かったけど…ヘストール隊が動いてるってことは、多分他の部隊も動いているはずだ。旅をしたいなら、そいつらとも事を構えるのはなるべく避けたい。国外に出れば、あいつらも追っては来れないだろうしな。だから、今日中にここかここーーーグリフォリア山かロシュトール城塞に行きたい」


地図を広げ、行き先を指差しながら提案する。

一つはグリフォリア山ーーーここから100km先にある、ベルメリス皇国とヴァールタリア王国の国境を中心に聳える大きな山であり、頂上までは6000mもあり非常に高いのが特徴だ。

丁度国境を中心に聳えているというのもあって、「グリフォリアを超えたらヴァールタリア・ベルメリスだ」という分かりやすい目印にもなっている。

もう一つはロシュトール城塞ーーーここからだと反対の50km先にある、ヴァールタリア王国への侵攻を防ぐために作られた要塞と一つになっている街だ。そこからでもベルメリスの領土内へ入ることができる。

…とはいえ、どちらもあまり楽な方法ではない。

ロシュトール城塞へは来た道を少しだけ戻らないといけないため、ヘストール隊と鉢合わせる可能性がある。それに以前、ギルドでロシュトール城塞に行ける街道に見かけたことのない新種の魔物が目撃されたっていう情報が入ってきていた。まだ被害は出ていないらしいが、襲われないとも限らない。

対してグリフォリア山へ行く場合は首都からだいぶ離れるため、騎士団に追いつかれる確率もだいぶ低くなり撒けやすくなる。が、山越えはしっかりと準備をしてからでないと、旅をしたての2人には返って苦行を強いてしまうことになる。俺は依頼の関係で何度かあの山へ行っているが、山越えは俺でもした事がない…恐らくこれが一番危険な行為だろう。


「どちらも一筋縄ではいかなさそうね…」


「ああ。だけど今直ぐに決めなくて良い。出発する前までに考えてくれればいいよ」


「…分かりました」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「よし…とりあえずこれで良いか」


食堂で別れた後、俺は雑貨屋で旅に必要な物を買い揃えていた。


(あまり多くは持って行けれないからな…本当はもう少し持っていきたいが、身動きが取りやすい様、最低限にしておかないと)


2人がどちらを選ぶにせよ、ある程度必要な物は持っておいた方が良いだろう。


「さて、そろそろ戻るか…ん?」


宿に戻ろうとドアに手をかけた時、外が何やら騒がしいことに気づく。


ガチャ…


少しだけドアを開けて確認する…すると、


「…もう一度聞く!昨日、又は今日!ここに不審な者が来ていないか!マントを被った三人組である!」


「…!」


外で赤い鎧を纏った兵士が、住民や観光客に対して問いかけていた。


(あれは…!ちっ、もう来やがったか!)


「おーい兄ちゃん、どうかしたーーー」


「おっちゃん!悪いけどそこから出させてもらうぜ!」


「え?」


ダッ!


「ああちょっと!?」


俺はカウンターを乗り越え、店の裏側から外に出て宿に向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「…!ヘストール隊が…!」


「もうここまで来ているなんてね…」


気づかれない様、宿屋の裏の扉から中へ入った俺は、ルナリアとティニアにヘストール隊が来ていることを伝える。


「迷ってる暇はなさそうね」


「はい。少しでももっと遠くにいかないと、ですね…!」


この話から察するに、まだどちらのルートを進むか悩んでいたのだろう。

決断を早める形になってしまって申し訳ない気持ちになるが、この際は仕方ない事だと割り切らなければ。


「…2人とも良いんだな?」


改めて2人に、本当にそのルートをいく事を決めたのか聞く。


『…はい!/…ええ!』


2人の返事を聞いた俺は頷き、荷物を持った。


「よし、じゃ行くかーーーグリフォリア山を目指して!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



エルグリート街道・リマール村方面



「はあ!」


ドガッ!


ガアアアアア!


「ティニア、そっち行ったぞ!」


「了解!」


騎士団に気づかれない様、裏道から街道に抜けた俺達は、道中魔物に襲われつつも協力して撃退しながら進んでいた。

ティニアは護衛の役目も担っていた事と、女性と言う事もあって兵士より軽快な闘いぶりを見せていた。


ドガッ!!


グアッ!?


「ふふ、銃だけが取り柄じゃないのよ!」


その証拠に、自身に向かってきた魔物に対して見事なサマーソルトを決めていた。


「もういっちょ!」


ドガッ!バーン!


ギャッ!!


足蹴り同時に繰り出される銃撃。なるほど、中々強い。


「ーーー風よ、我が元に集い、歯向かう者を貫け!ウィンドランス!」


ズザッ!!


ガアアアアア!?


一方のルナリアは、遠距離から魔法で魔物を攻撃していた。

本人曰く近距離戦闘は苦手だが魔法は得意とのことで、場に応じて素早く魔法を繰り出している。


「足手纏いにはなりませんよ!」


と、魔物を倒した後謎の決めポーズ(?)を取る。

いやどこで習ったんやそれは…


ウガアアアア!!


「ルナリア!余計なことしている暇があったら集中!」


「は、はいい!」


(これじゃどっちが王女か分からんな…)


2人のやりとりを、俺は目を点にしながら見ていたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



リマール村


「ここがリマール村だな。久しぶりに来るなー、ここ」


あの後俺達は休憩も兼ねて、街道の外れにあるリマール村に寄ることにした。


「つ、疲れました…」


「はあ、はあ…きょ、強行軍になるのは知ってたけど…」


村に入るなり、その場に倒れ込む2人。魔物との戦闘も考えて、少し急いで動いていたので無理をさせてしまったか。


(これは今日はここまでにした方が良さそうだな…)


「とりあえずあいつらも来ていないみたいだし、今日はここで休もう」


「え?で、でも…」


「休む事も大切だよ、ルナ。疲れている状態で旅を続けたら、それこそ命取りになるぞ?」


そう言うと、ルナリアは安心したのか地面にへたり込んだ。


「あ…はい、ありがとうございますっ」


「ありがとね、イオ」


「いやお前はまだ動けるだろ」


「ちょ!?ルナリアには優しいのおかしいでしょ!?」


「あはは…」


俺とティニアの会話をルナリアは苦笑いしながら見ていた。


「ま、とりあえず宿に行くか」


「こらあ!話を逸らすなあ!」


プンスカプンスカと怒るティニアを尻目に、俺は宿の扉を開ける。するとーーー


「あいてててて!?も、もうちょっと優しくやってくれよお…」


(?)


「若いもんが何言ってんだい!この程度の傷で、根を上げるんじゃないよ!」


「いやこの程度じゃないよ!?魔物に爪で切り裂かれてるんだぜ!?」


入り口の隣の待機場所で、1人の金髪の男が背中をこの宿の主人らしき女性に「荒々しく」手当てされていた。


「えーと…?」


「ああいらっしゃい!ちょっと待ってておくれよー」


パッパっ!


「あいだだだだだだだ!?い、いてえって…あびゃああああ!!」


ドサッ


「…ビク、ビク…」


…その男は、あまりの痛さに耐えられなくなって気絶してしまったようだ。


「まーったく、若いもんがこれぐらいで気を失うなんてだらしないねえ」


「え、ええ…?」


「荒療治すぎんだろ…」


流石にこれは…酷ないか?



数十分後ーーー



「いやー、君のおかげで助かったよー。ありがとー♪」


「いえ、良くなって良かったです」


あの後、宿泊の手続きを済ませた俺達は先程の男と話をしていた。

彼によると旅をしていた時に魔物の群れと出くわしてしまい、相手をしている時に大怪我を負ってしまったらしく、治療のためにこの村に寄っていたとのことだった。


「いや、ほんっとにありがとう♪あの女主人のやり方だったら、明日まで気失ってたぜ…」


「そりゃあんな荒療治だったらなあ…」


イオ達は女主人の治療の仕方を思い出して冷や汗をかいていた。


「おっと、そういえば言うの忘れてたな。俺はリグスっていうもんだ、よろしくな♪」


「あ、よろしくお願いします。私はルナと申します」


「俺はイオだ」


「ティニアよ」


「イオにティニア、ね。それと…」


バッ


「え…?」


「なっ!?」


自己紹介の後、リグスと名乗った男はいきなりルナリアの手を掴んだ。


「ルナちゃん、だね?これも何かの運命だろう。どうだい、お礼に何か奢らせてよーーーな♪」


キラっとウィンクをしながらルナに話しかける。所謂…ナンパというやつだな。


「え、え…?」


「な、何言ってんのよあんたは!?」


突然のことに困惑するルナリア。無論ティニアが黙っているはずもなく、立ち上がって2人の間に割って入る。


「おいおい、俺とルナちゃんとの甘い時間を邪魔しちゃいけないぜ?」


「る、ルナちゃん…?」


「は…はあ!?あんた何言ってーーー」


(あー…なんかめんどくさいことになったなーこりゃ)


俺は心の中でため息をつきながら、三人のやりとりを眺めた。

なおその際、反論しないのを見たティニアから、凄まじい目つきで睨まれたのだった。



第6話 終了

読んでくださりありがとうございました。次はこのナンパ男が一緒に国外逃亡を手助けする話です。

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