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第3話 慌ただしい旅立ち

随分と空いてしまい申し訳ありません。

「ヘストール・・・」


「ん、如何しました?ああーーー私がどうしてここにいると、そう思ってらっしゃるのですね?」


顎に生えた髭を触りながら、深紅の甲冑に身を包んだ騎士、ヘストールはそう言った。


「親衛騎士団は、王族の方々がどのような場所に赴いてもお守りするのが務めです。ならば、このような場所に我々がいても不自然ではないでしょう。ですが…王族であるルナリア様が、このような素性も知れない者といらっしゃるというのは…いささかいただけませんな?そのような素行、国王陛下が黙っているはずはありませぬ」


「それ、は…」


「ティニア、貴方もですよ。ルナリア様を止めれたのは近くにいる貴方しかいなかったというのに、何故止めなかったのですか?理解に苦しみますね」


「っ…」


ヘストールの言葉に2人は声を詰まらせる。


「けっ、相変わらず嫌味しか言わないな。お前は」


ヘストールの嫌味を含んだ言葉に、俺は鼻で笑いながら返す。


ヘストールーーー王族の警護を担当する親衛騎士団の隊長…なのだが、正直こいつが何故今も隊長をしていられるのか不思議でならない。

ギルドに対する悪質な嫌がらせ、住民との度重なるトラブル…と、あまりにも目に余る行動が問題視されているのだが…なぜか国王はこいつを解任せず野放しにしている。

こいつに限らず、最近の騎士団は住民と度々トラブルを起こしている。一応小競り合い程度で済んではいるが…一体こいつらは何を考えているんだ?


「嫌味ではありません、私は事実を言ったまで」


ヘストールも俺を睨みつけながら言い返す。まるで、その辺に捨てられたゴミを見るかのように。


「さて、私は忙しいのでね。貴方に構っている暇はないのです。ーーールナリア様、我々と共に王宮へ戻っていただきます、よろしいですね?」


ヘストールが合図を出すと同時に、即座に兵士が俺達の周りを取り囲んでくる。この素早い動きは、流石は親衛隊といったところだろうか。


「ルナ、とりあえず俺の後ろに…ルナ?」


ルナリアの肩が少し震えているように見える…怖い、のだろうか。


「…ティニア、一つ聞いていいか」


「…ルナリアのこと?」


「ああ。ルナは最近国王と話してないって言ってたよな」


ティニアは「うん」と頷く。


「…騎士団からも素っ気無い対応されてないか?」


「!」


ティニアの反応は、やはりと言うべきだろうか。まあ、ヘストールの言い方である程度予想はついていたが。


「…ルナ、ティニア。俺が合図したら目を瞑れ」


「へ?わ、わかったわ」


「は、はい…?」


二人の返答を聞いた俺は、口角を上げながらヘストールに向き直る。


「なあヘストール。こういう言葉あるの知ってっか?『人間万事塞翁が馬』」


「ああ、東洋の言葉ですか。それが?」


「人生って予測不可能だよな。何が起きるかわからねえし」


「だからなんです?時間稼ぎのつもりですか?」


ニヤ…


「予測不可能って…こういうこともあり得るよなあ!?」


そういうのと同時ーーー俺は懐からあるものを取り出し、地面に向かって投げつけた…


「二人とも、目を閉じろ!」


ボーーーーーーン!!!


閃光弾ーーー俺特製の奴だぜ!


「きゃああ!?」


「ちょっ!?」


「ぐわああ!?め、目が!?」


「な、何も見えない!?」


事前に指示を出したルナとティニアを除く全員が突然の強い光で目を遮らざるを得なくなった。無論、ヘストールとミュレーも例外ではない。


「くっ…煙ではなく光…!?これが狙いですか…!」


「ヘストール様…!」


そしてこの隙を逃すはずはない!


「ルナ!ティニア!」


ガシッ!


俺は二人の手を取り、出口に向かって走り出した!


「ひゃあ!?」


「わっ!?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「…あの三人はまだ見つからないのですか?」


「も、申し訳ありません!周辺を必死に探しておりますが、まだ何も…」


ヘストールの苛立った言葉を聞きながら、兵士は謝罪しながら報告する。


「まさか、奴があのような手を仕込んでいるとはね」


「はい、煙玉というより閃光玉、といった感じでしょうか。煙玉なら対処はできましたが、閃光は流石に…」


「ふん、小賢しい知恵を…まあいいでしょう。この近辺にはいなくても、まだそれ程遠くまで行ってはいないはず。探しますよ、ミュレー」


「はっ」


「貴方達は念の為、この辺りに駐留しなさい。いいですね?」


「はっ!承知しました!」


ヘストールはそう指示を出すと、ミュレーと共に歩き出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ヴァールタリア王国の首都グランヴァール。その中で一際目立つ大きな建物が存在している。

ハスカリア王宮ーーーヴァールタリア王国を治める王族が住む宮殿であり、そして王国を象徴する建造物である。

その中にある執務室で、ヴァールタリア王国の現国王アリアスは深く椅子に腰掛けていた。


「…」


それは、とても国を治めている王とは思えない、哀愁に満ちた姿だった。


「ルナリア…」


自分の娘であり、次期国王候補となるルナリアの名前を呼びながらため息を漏らす。


「気に入らない様子だな?アリアス」


その様子を物陰から見ていた一人の男が、アリアスにそう言い出した。

アリアスはその男をジロッと睨みつけ、鼻息を荒くする。


「…誰のせいだと思っている」


「そうだな、俺がこういう状況にするように指示したからな。だが実行したのはお前だ、そうだろう?」


「貴様…!!」


ガタっ!


声を荒くし、椅子を転ばせながら立ち上がるアリアス。男はふっと笑い飛ばし、続けた。


「何を怒っている?事実には変わらないだろう?ククク…」


「っ…!」


「お前は何もできない…今までも、そしてこれからもな」


男はそう言い残し、その部屋から消えた。


「…っ」


バン!!


アリアスは男の気配が部屋から消えるのを感じると、机の上を握り拳で叩き、遺憾千万の思いで呟く。


「ルナリア…すまない…本当に、すまない…」


一人になった執務室の中で、悔恨の声が響き渡った…



第3話 終了

ここまで見てくださりありがとうございました。

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