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8話

読んでくださった方、ありがとうございます!



PV2000人達成しました!これも皆さんのお陰です!とても良い励みになります!

本日、ついに学校で僕が憂慮していた事態が発生した。


* * *


今日、僕と冬香は何時も通り家を出て、Y字路に向かった。

僕は昨夜非常に遅い時間に寝たのだが、この体のお陰か疲労は全く感じられない。

Y字路で美咲と涼介と合流した。

美咲は、耳が赤くなっている事以外全く変わりはなかった。


教室に入ると、突然クラスメイトが水の波紋が広がるように静かになった。クラスメイト全員が此方を向いている。

僕達が訳も分からず硬直していると、1人の男子生徒が歩いてきた。


「……伊坂。」


こいつが絡んでくる時は確実に不味い時だ。何故ならあの時僕を睨みつけていた人物その人なのだから。


「……何か用か、羽根田。」


羽根田 陽太。イケメンでサッカー部のエースであり、成績もトップレベル。まさに男版の才色兼備なリア充だ。

以前、僕に敵対的な視線を向けて来たので、涼介に調べてもらったのだが、羽根田は二学年が始まってすぐに美咲に告白し、こっ酷く振られたそうだ。

涼介の情報によると、羽根田はかなり自信を持って美咲に告白していたらしい。振られた時は爽やかなイケメンらしく引いたそうなのだが、周囲の女子達が言うには全く諦めていない様子なのだそうだ。


「昨日、西川さんと同じ家に帰ったって本当か。」


昨日の俺たち、尾けられてたのか………


「確かに、美咲は昨日家に遊びに来た。というか、なんでお前が知ってる。」


「それは本当か?」


此方の質問は無視と……


「……仮に俺と美咲が同じ家に帰っていたとして、お前にとって何か問題があるのか?」


すると、羽根田は血相を変えて怒鳴りだした。


「当たり前だ!どうしてお前なんかと西川さんが……」


面倒くせぇ……しかも質問に答えてねぇし……


「俺と美咲は幼馴染だ。それも、生まれる前から決まっていた関係のな。」


これで納得してくれ。頼むから。お前もバカじゃないだろう?


「幼馴染だったとしても!西川さんはお前みたいな男と関係を続けるべきじゃ無い!」


………一体、なんの権利があってお前は美咲の行動を縛ろうとするのか。というか、もう僕を侮辱するためだけに喋ってるじゃん。


「はぁ……面倒臭いなぁ。そんなに僕の事を卑下したいのなら、美咲に聞いてみろよ。”こんな奴と幼馴染なんて嫌だよな?”ってな。」


冗談で言ったのだが、驚いた事に羽根田は真面目に美咲に問いだした。多分怒りで頭がおかしくなっているのだ。


「ねぇ、西川さん。嫌だよね?こんな奴と幼馴染だなんて。こんな勉強だけしか取り柄のない奴よりも、俺と-----」


その言葉が最後まで続く事は無かった。

美咲が羽根田に急接近して、顔面に正拳突きを繰り出したのだ。

ガスッ!と鈍い音がして、羽根田は後ろに倒れこんだ。

無表情に羽根田を見る美咲の目は、激情に燃えていた。まるで、瞳の内側に極寒の炎を宿したかのように。


……それにしても、こいつはいくつモードを持ってるんだ?もう多重人格者と呼んでも良いのではないか?


「ゔ……あ……」


羽根田は鼻血を出して倒れている。どうやら顔のど真ん中にヒットしたようだ。

美咲はそんな無様な姿の羽根田を見て、寒気が走るほどの冷たい声で喋りかけた。


「……ねぇ、貴方に私の行動を決める権利でもあるの?」


「うぐぅ……」


「………別に、私の事を幾らでも言おうと構わないのよ?妬み、嫉みならこの容姿のお陰で昔から慣れているからね。」


「ぐっ!……ど、どうじで……」


「まだ言うのかしら?なら私も言ってあげる。…伊坂 圭介という人間はね?私の知り合いの人間の中で、一番信頼できる人間よ。貴方みたいな、下心丸出しで接してくるような人間とは違うの。」


「……おれは……しだごごろなんで……」


「あらそう?以前私に告白してきた時に、私の胸を凝視しながら”君の全てが欲しい”と言ってきた人は誰かしら?」


クラス中の沈黙が一層深くなった。

これでは公開処刑だ……


「……………」


………僕は色々と言われた身でありながらも、羽根田の事を哀れに思ってしまった。


「ふぅ……これ以上勘違いされないようにもう一度言うわね。私は、貴方に1ナノメートル程も興味を抱いていません。どうかこれ以降私や私の周りの人に関わらないで下さいね?」


うわぁ………俺だったら絶対に心が折れてるよ……


「ねぇ、誰かコレを保健室まで運んでくれないかしら?ここに放ったらかしにしておくのも不潔だし……」


「…あ、はい。俺が連れて行きます………ほら、立てって。」


確か羽根田の友達だった人が、羽根田の肩を叩いて起き上がらせようとする。

だが、羽根田は一向に動こうとしない。


「……………」


心がバッキバキに折れてしまったようだ。

この様子だともう此方に何かしてくることは無いだろう。

そう思った時だった。


「ゔ……ぐごぁぁぁぁ!」


「!?」


突然、羽根田が唸り声を上げ始めた。


「よぐもぉ………伊坂ぁ………」


「……まだ向かって来る気力があるとは驚きだな。」


「ゔぁぁぁぁ!」


羽根田は、立ち上がると同時にポケットから何かを取り出した。

黒い柄。銀色に輝く刀身。


「な、ナイフ!?」


「羽根田!?」


羽根田が取り出したのは、刃渡り15センチはあるだろう折りたたみ式ナイフだった。静まり返っていたクラスが騒然とする。


「ゔゔゔ………」


僕は羽根田の目を見て、もう何を言っても無駄だと悟った。

彼の目は何処も見ていなかった。まるでコガネムシの目のように、ただ黒い瞳がそこにあるだけだった。


「伊坂ぁぁぁぁぁぁ!」


僕は咄嗟に美咲を背後に押しやり、迫って来る羽根田に備えた。

“目”を解放し、これから動くであろう軌跡を予測する。


………このまま一直線で突っ込んでくるのか……厄介だな。


僕はスッと前に一歩踏み込み、羽根田と僕との距離が1メートルほどになった時に素早く左に回避した。すれ違いざまに自分の左足を羽根田の足に引っ掛け、倒れ込みそうになった羽根田の鳩尾に右膝で蹴りを入れる。


「ぐふっ!」


そのまま倒れた羽根田の上に馬乗りになって、両手を抑える。

狂気に駆られた人間は、異常なまでの粘り強さを見せることがあるからだ。


「誰か!先生を呼んできて!男性の先生を!」


「わ、分かった!」


涼介が教室から飛び出して行く。


「他の人は外に出てくれ!何をされるか分からない!」


僕の言葉でスイッチが入ったかのようにクラスメイトが教室から逃げ出して行く。

僕は羽根田の上に馬乗りになったまま、ナイフを手から奪って捨てた。


「………殺す……絶対に殺す……殺す…殺す……」


「黙れ。」


「殺す殺す殺す殺す!」


僕は羽根田の首に手刀を下ろし、気絶させた。


* * *


駆けつけた先生達により、羽根田は保健室に運ばれて行った。

僕は事情を現場にあったナイフを元に説明した。

元々の成績が良く、問題など殆ど起こした事がないのですんなりと信じてもらえた。


そして帰り道。

校長室に呼ばれて更なる事情説明を警察に求められた僕と美咲は、時間の都合上今日も一緒に帰っており、何時もの公園のベンチに2人で座っている。


「圭介…本当に大丈夫?」


「ああ。僕の体の事は美咲も知っているだろ?あれくらい大した事無いよ。」


「……でも、私があんなに羽根田君を煽ったせいで……」


「……さっきも言ったが、それは違う。あいつは最初から僕を殺す事を計画を立ていた。でないとナイフなんて持ってこない。」


「……そう。」


「そうだ。」


美咲は僕の言葉を聞いても、何処か納得できてないような表情をしている。


「……いいか?美咲は悪くない。今回の事件の責任は全て羽根田にある。」


「……うん。」


……まだ納得してないな……頑固な奴め。


僕は美咲に少し近づき、小さい頃していた様に美咲の頭を優しく撫でた。


「ん………」


美咲も昔のように僕の肩に頭を預ける。目を閉じて、気持ち良さそうな表情をしている。


「……別に、迷惑かけても良いんだぞ。幼馴染なんだから。」


そして、美咲はようやく納得した様に頷いた。


「……うん……」




美咲と別れて家に帰ると、冬香がパタパタと足音を立ててやってきた。


「大丈夫だった?」


「ああ。」


僕がそう言うと、冬香は少しホッとした様な顔を見せて、そして真面目な表情になった。


「……美咲さんと一緒だったの?」


「うん。事情聴取とかがあったからな。」


「……美咲さん、絶対気に病んでるでしょ…」


「大丈夫。治療してきた。」


「治療?……まあ、ケアしてきたんならいいけど。」


治療というとちょっと違うと思うが、美咲に僕の正直な気持ちを伝えたのは本当だ。

それで美咲が楽になってくれたらと思う。


僕はそんな事を考えていたのだが、次の日登校すると、とんでもない事実を聞かされることとなった。








読んでくださってありがとうございます。


もう少ししたら異能系バトルが始まるかもしれません!

適度に期待していただければ嬉しいです!

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