エピローグ
グレートスさんが消えて早数年が経った。
僕は無事に小学校を卒業し、中学生となり日々を謳歌する。
結局あの時のことはよくわからない。僕がはっきりと意識を取りも出した時には、いつの間にか乙留さんも女筒さんもいなくなっていた。
グレートスさんの手に握られていた拳銃も姿を消し、事件は闇の中。
3人が目の前で消えたという与太話に誰も信じる者がいるはずもなく。
僕は口を閉ざして、生きていることを願うばかりだ。
全ては夢であったかのように、覚悟を決めた僕を残して時は過ぎていく。
あの時の僕に何が出来ただろうか。守ろうとした人も守れずに、僕は人間失格だ。
結局やれたことなんて一つもなくて。僕の行動に良い結果は一つもついてこなかった。
すっかり長くなった髪は腰まで伸びて、毛先は薄桃色に色付き始めている。
まるでグレートスさんの意志を僕が引き継いだみたいで、少しだけ嬉しく感じるのは内緒だ。
「あーまた下を見て暗い顔をしているのです。もっと前を向くですあーちゃん!」
僕の左腕に抱きつくのは、前より少しだけ明るくなったひかりちゃんで。
その屈託のない笑顔に何も言えずに為されるがままになる。
まるで猫のよう、何がそんなに嬉しいのか鼻歌まで披露する始末。
でもきっと僕を思っての事なんだってことは何となくわかる。
僕が落ち込んだままではきっと消えたグレートスさんも憤慨することだろう。きっと再び会えることを願い、今日も桜舞う通学路を歩く。
世界は今までのことが嘘であったように穏やかに過ぎている。
ひかりちゃんもしずくちゃんも、笑顔が増えたように思う。
クラスメートとも溝がなくなって、原作のキャラも今は関わりすらない。
完全に普通の中学生となり果てた僕は、天を覗き見る。
太陽は高く上がり、世界を照らしつくす。まるでグレートスさんが優しく見守っているような気がして、思わず頬を緩めてしまった。
それを見て不思議そうに顔をひねるひかりちゃんに、苦笑いを浮かべて前を向く。
「あっ素敵です。やっぱりあーちゃんには笑顔が一番です。」
頬擦りしてくるひかりちゃんを周りの通行人が引いているのだが、この子は気づいていないのだろうか。
それとも承知でこうしてじゃれているのか。
兎も角軽く窘めるけど、全く聞く耳を持たない。困ったもんだ、もしグレートスさんが僕と同じ年だったらこうなるだろうなと考えてしまう。
踏みしめる地面には儚くも散っていった桜の花弁が散らばる。
この光景はグレートスさんと共に見ることは一度もなかった景色で。
最後に見せたグレートスさんの笑顔は今も脳裏に焼き付いている。
「…忘れません、絶対貴方のことは忘れませんよグレートスさん。」
グレートスさんと同じ色をした桜の花弁が風によって舞う。
まるで最初に出会った時見えた景色のようで、僕はいつまでも行く末を見守った。
僕は忘れない、忘れられるはずもない。
貴方の姿を思い出を、僕はいつまでも覚えている。
無事完結いたしました。
ありがとうございました、また何処か機会に会いましょう。




