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それから一週間後。
俺は無事退院して、自分の店・そしてバイト先に迷惑をかけたことを詫びに行った。
こういう時は、やっぱり嫁も一緒に着いてくるもの。
菓子折りを持ち、店に出向いた。
店に着くと、チーフが出てきて話をし始めた。
10分・15分。。。
一向にみのりはキッチンから出て来なかった。
その間ずっとチーフの小言を聞きながら、意識は違うところに飛んでいた。
30分くらい経ったころ、作業中のみのりがホールにトタトタと出てきた。
賄いを作っている最中らしく、みんなの分の食器を取りに来ていた。
俺たちの方を一切見ずに、またキッチンへと足早に帰っていく。
傷つけている事実が辛いのに、俺は一週間ぶりに見るその姿が愛おしくてたまらない。
帰る前に一言でも言葉を交わしたくてキッチンに顔を出した。
「おぅ。」
と声をかけると、
「あっ・・・お疲れ様です。」
また下を向き作業をし始める。
顔色が悪いのが見て取れた。
だけど、おもてで嫁が待っている。
「じゃあな。頑張れよ。」
と言って、その場を後にした。
最低だな。
結局は俺は自分が大事なんだ。
それから俺はリハビリをしたり、自分の店の事務的作業を忙しくこなしていた。
やっと簡単な仕込みなどが出来るようになってきたころだった。
最後にみのりに会ってから一ヶ月経っていた。
みのりの移動先の店で働いているヤツに偶然会った時に、ポロッと聞いた。
「アイツ、みのりは元気でやってる?」
するとソイツはビックリした顔をした。
「高井さん知らないんすか?中里さん辞めたんすよ。ウチに移動してきたその日に」
頭が真っ白になった。
「はぁ?どういうことだよ!聞いてねぇし。」
一ヶ月も自分から連絡を取らなかったくせに、俺は怒りを抑えられなかった。
「大変だったんすから。出勤して仕込みとかやってたんですけど、主任が来た瞬間突然ボロボロ泣き出しちゃって・・・主任は詳しいこと教えてくれなかったですけど」
怒りから悔しさに変わった。
何故俺の前で泣かない?
今何処で何をしてるんだ?
悔しい。。。
俺はアイツの涙など見たことがない。
一番傷つけていたのに・・・
みのりはいつも俺の前では笑っていたから。。。