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第七話 「勝ち抜きトーナメント!!! 私立ダイイチ野球中等学校」

 第七話

「勝ち抜きトーナメント!!! 私立ダイイチ野球中等学校」


 いよいよ勝ち抜きトーナメントの日が来てしまった。

 僕は、8番ライトでスタメン。三島さんは先発。


 そして、午前9時30分に試合が始まった。


 三島さんは、初回に四球やら暴投やらで3失点。

 ただその後は立ち直り、得意のキレのあるストレートで相手打者を三振と内野ゴロに抑えた。

 僕の第一打席は、相手チームの先発、桜京子さんのカーブで空振り三振。

 ……なんというか、打席に立った後、いつもよりボールが見えづらい気がした。 

 よく分からないけれど、ひょっとしたら、いつもと違う雰囲気で緊張してるのかもしれない……。

 僕はそれで、何回か深呼吸をしてみた。

 それから、ゆっくりと空を見上げる。

 青い空、ぷかぷかとのんきそうに浮かぶいくつかの白い雲。

 それを見て、少し高揚しかかっている気持ちを落ち着かせながら、自分に言い聞かせる。

 ……今行われていることは、特別なことじゃない。

 ごく普通の、日常のうちの1コマ。 

 普段どおりの力を出せば、少なくともバッティングセンターの練習の時は打てたのだから、打てるはず……。

 僕は、そんなことを思いながら守備についた。


 そして、そんなこんなで試合は7回まで終了した。


---------------------------

 Aチーム 000 010 0   1

 Bチーム 311 000 0   5

---------------------------


 僕たちのチーム(Aチーム)は、7回を終わって4点負けている。

 状況はちょっときびしくなってきた。

 そして8回表ワンアウト、ランナーなしの場面で、僕に3打席目が回ってきた。

 マウンド上の相手ピッチャー桜さんは、7回1/3を投げているけれど、すごく疲れている、とまでには見えなかった。今日ほとんど変化球のカーブばかりを投げていたのにもかかわらず。変化球をたくさん投げると疲れる、とどこかで聞いたことがあるような気もするのだけど、ひょっとしたら桜さんは例外なのかなぁ……。

 まあそれはともかく、今までほとんどカーブだった以上、今回の打席もカーブが来ることはほとんど間違いない。

 僕がバッターボックスに入り、試合の立会いの先生が「プレイ」と言った。

 そして、桜さんがワインドアップから第1球目を投げる。

 高めのボールゾーンから、ぐぐっとストライクゾーンに向かって落ちてくるカーブ。

 僕は空振りした。

 続けて、2球目。

 これもカーブで、今度はバットがボールの上のほうをかすってファウル。

 そして、ツーストライクノーボールからの3球目。

 僕は、今の1球目、2球目の桜さんのカーブの軌道を頭の中に思い浮かべた。

 ボール2個~3個分くらい、斜め下に落ちるように曲がる。

 でも、バッティングセンターでカーブを練習で打った感覚と同じように打てば、内野には転がるはず。

 1打席目、2打席目は勝ち抜き戦ということを意識してこんなことを考える余裕など無かったけど、今は少しだけはある。

 桜さんは、3球目を投げた。

 ボールはストライクゾーンど真ん中に向かって放られた。

 (けど、さっきの曲がり方から考えると、ここからボールは外角低めに逃げるはず……!)

 僕は、ボールの軌道を目で追った。

 すると1、2球目と同じように、ボールは弧を描きながら外角低めへと落ちていく。

 僕は力をためて、曲がり行くボールを見つめながら、最後、思い切りバットを振りぬいた。

 カキン! という音。

 バットに当たった。そして、内野にボールが飛んだ。

 僕は夢中で一塁に向かって走った。

 そして、一塁ベース上を駆け抜ける。

 その後、少し間が空いてから、ボールがファーストミットに返球された。

「セーフ!」

 立会いの先生が言った。

 僕は息が切れていたけれど、嬉しさで胸がいっぱいになった。

 けれど、またすぐに現実に戻った。

 僕は今なんとかヒットを打つことが出来たけれど、試合はまだ終わっていない。

 僕は、二塁に向かってリードをとった。

 次の打者は、ピッチャーの三島さん。

 三島さんは、どうせあたしは狙っても打てないからヤマカンでど真ん中をフルスイングする、と試合前に言っていた。それで、1打席目、2打席目は豪快な空振り三振。

 と。

 カキン、という音。

 まさかまさかのヤマカン打法が当たってしまった。

 マウンド上の桜さんの「しまった」という表情がちらっと見えたことから考えると、ひょっとしたら失投してしまったのかもしれない。

 三島さんの打球は、右中間を深々と破っていく。 

 僕は思い切り走った。そして2塁を蹴り、3塁も蹴る。

 と、背中のほうから突然声。

「あんた、早くホーム行きなさいよ!! 後から来たあたしが追いついちゃってどうするの!!」

 三島さんが、いつのまにか僕の後ろまで走ってきていた。

「え、三島さん何気に足早い!」

「そりゃあ昔からイタズラとかした後走って逃げたりするのは得意で……ってこの大事な時に何言わせんのよ! バカッ!」

「ひえぇ!」

 僕はあわててホームに走りこむ。

 そして、ホームへの返球とほぼ同時に三島さんもベースを踏む。

「セーフ!」

 先生の声に、Aチームは歓声を上げた。 

 結果的に、5-3までもりかえした。


 ただ、反撃もここまでだった。

 後続のバッターが凡退し、8回は2点止まり。

 その後、三島さんは8回を三者凡退に抑えた。

 相手チームの桜さんは8回を投げて3失点。9回は原田さんという別のピッチャーに交代後、三者凡退。 

 これで、今日の試合は終わった。


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 Aチーム 000 010 020   3

 Bチーム 311 000 00X   5


 勝ち投手 桜

 負け投手 三島

 セーブ   原田

 本塁打  仲原(Bチーム)、三島(Aチーム)

---------------------------------------------


 僕の成績は、3打数1安打。

 三島さんの成績は、8回を投げて5失点。


 この成績はどんなものなのかなあ。

 三島さんも僕も、いいとも悪いとも、何ともいえないような……。

 今日の試合については、後日立会い兼審判をしていた先生から一人ずつ感想を頂けるとのことだった。

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