第一話 「いきのこれ 私立ダイイチ野球中等学校」
第一話
「いきのこれ 私立ダイイチ野球中等学校」
私立ダイイチ野球中等学校――。
そこは、ごく普通の中学校とはかなり、いや相当異なる学校だった。
というのも、学校での全ての評価は野球によって行われ、授業内容もほとんどが野球に関することで占められている。
加えて野球の評価が良ければ、給食のメニューさえ豪華になるほどだ。
投手でよく抑える者、打者でよく打つ者には、ステーキ、寿司、高価なおやつ……。
しかし逆を返せば、投手でパカパカ打たれてしまう者、野手でてんで打てない者に――米と味噌汁以外のメニューは存在しない。それどころか、米と味噌汁が出るだけでもぜいたくだ、とさえ5組の担当教諭・聖孝雄は言うのだ。
僕、高島英夫は、よりにもよってそんなとんでもない中学校に入学してしまった。
入学の動機といえばはっきりいってしまうと単純なもので、何気なく新聞やテレビを見て、きらびやかな照明の下でヒットを打つ野球選手はかっこいいな、と思って決めてしまったにすぎない。
それに「野球学校」とわざわざ学校名に書いてあるくらいなのだから、ここに入って頑張れば、たとえすこぶる華々しいような活躍は出来なかったとしても、たとえ控え選手であったとしても、僕もテレビや新聞で見たような野球選手の一員になれるのかも、と。
しかし、野球というものはそれほど甘いものではなかった。
入学してから一ヶ月、僕は1年5組に在籍している。
クラス分けは、入学後の選抜テストによって行われる。投手として優秀な順、打者として優れた者の順に、1~5組まで割り振られるのだ。
そして、僕が5組に居るということ。
それは、僕の野球の成績が、まあ、良くないということを手短かに表しているのである。
そして、給食はもちろん5組専用メニュー、米と味噌汁だけだ。
守備位置、ライト。
打率1割9分8厘、ホームラン0本、盗塁1(1年5組内リーグ戦成績)。
僕の未来はどうなってしまうのだろうか。
それは、誰にも分かろうはずがなかった。




