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1.義足少女は何を欲す。

  彼らを照らす月光すらも切り裂いて、致命の一閃が少女の肩口をねらう。

 生半可でない威力を纏ったそれを振るう彼は既に二の刃を疾らせるが、少女はその両方を何とか受け流し痺れる手で的確に死角をつき反撃を試みるも…………人の可動域を完全に無視した剣戟が彼女の渾身の一撃をいなしてしまう。

 幾度にわたる斬撃、殴打、見切り、カウンター、防御、奇襲、搦め手の応酬。息をする暇も惜しいほど高密度なやり取りは、殺意すら感じ取れてしまえるほど本気な()()()()だった。




 いつの間にか月は沈み、山向こうから昇る朝日が夜空の境界を押し上げて、先程まで満月と一緒にこちらを観戦していた星座たちも見えなくなる。


「………… ふぅぅぅぅぅ……スゥゥゥゥゥー」


 冷えきった空気を吸い込み身震いし、肌が粟立つ感覚がするが俺には「肌」なんてものは無いから、錯覚だ。身体の中の呼吸エンジンが勢いよく稼働し、冷却時の水蒸気と共に言葉を吐き出す。


「型も良い…………けど、突き詰めるのと囚われるのでは身につき方が違う。恐怖は大事だ……けど迷うな!今は真っ直ぐ打ち込めば大丈夫だ!」


 そう言い放つ彼は分厚いマチェットのような片刃の剣を二振り小指と薬指だけで握り、切っ先を遊ばせ体の()()()を分からせない彼は構えを組み直し、一対の剣を体の前で交差させる。視線は真っ直ぐ、一人の少女へ向けられていた。


「んな事言って…………そーいって、今まで何回私のこと伸してきたかってんですよ!そろそろ一発…………いや、隙見せたら今まで分全部、熨斗つけて返してやる!」


 手には武器ではなく、ゴテゴテに装甲を貼られた鞄のようなものを持つ彼女。盛大に啖呵を切ったものの一歩目を踏み出さず、彼の動き出しを見抜くことに集中している。


「………………なんだ?カウンター狙いならもう武装した方がいいぞ?」


 準備運動と言わんばかりに両手の剣で空を裂きながら、少女に問いかける。


「………………ん、知ってる。」


 短く返す言葉には覚悟が乗っている。その目は未だ瞬きすらせず男を捉えている。


「まぁ、自信おありのご様子で。じゃぁ見切れるんだろうna」

 言い終える前に動き出そうとした彼の足目掛けて轟音と共に一発の銃弾が襲う。だが…………


「どぉッわッ!?っておい!それ人に向けちゃ行けない威力してるよ!足取れちゃう!」


「そんなヤワな台詞吐く人は、この距離からのライフル弾を切り落とすなんて出来ないと思うんですけどッ!」

 先程まで持っていたバックのようなものは何処へやら、手には彼女の身丈ほどの対物ライフルがしっかり抱えられており、銃口からは一筋の煙が上がっていた。

 初撃で捉えられなかったことに、奥歯を噛み締めるが思考と既に次の攻撃に移る。


「コール!エクスポートッ!対炉人支援武装、標的固定、自動射撃……開始!」


 命令に答えるかのように彼女の背後一面を小さい黒い穴が埋め尽くすように現れる。穴の中から無数の銃火器が突き出し彼へ向けられ、一斉発射された弾丸は逃げようの無い檻となって襲いかかる。


「(完全同時のフルバーストなら、間に合わないはず!)」


 通常では見えない弾筋すら目で追えるほどに加速された思考と動体視力が捉えたのは、ズタボロになって倒れ伏した彼ではなく、


「ぬんッッッ!!!」


 こちらへ全速力で走ってきた彼が一振で弾丸のカーテンを切り裂いたという処理しがたい情報と、逆袈裟に切り込んでくる圧倒的な技と鋭く冷酷な衝撃を孕んだ一振だった。


「ッッッッぁあ…………、」


 肺に溜め込んでいた空気が強制的に吐き出させられる感覚と、身体がくの字に曲がり少し地面から離れる浮遊感を最後に、私の思考は霧散して遠ざかって行った。



 先刻よりも明るさを増し朝を告げようと昇る太陽の光が逆光となり、倒れる彼女の苦痛に歪めた顔を隠す。残心を解き、一礼をした後彼女の元へ慌ただしく駆け寄る彼。生憎機械の為、表情などないはずなのだが心の底から焦りを感じているようだった。


「…………………………ッうぅ……、」


「わぁぁぁあぁッッ?!?ごめん!まっじごめん!しっかり入った!峰打ちだからってやりすぎたぁぁ!………………って聞こえてないか、ってダメダメ、死んじゃだめだ!叶永ぇぇぇッ!生きろ!気合いだァ気合い!頼むから起きてくれぇよぉおお…………。」


「じゃかましぃッッ!!」


 半ば気合いだけで振るった拳は彼の顔面目掛けて伸びるが、

「っとぉ、良かったぁぁもう!生きてた…………、ごめんやりすぎた。」


 大の大人がひっくり返るほどの威力だった拳は易々と受け止められ、当の本人は先程までの威圧感は欠けらも無い土下座の姿勢で猛省中である。


「はぁ……また、勝てなかった。」


 深くため息をつき、起き上がり姿勢をただす彼女は己の拳を見つめ意気消沈の様子。何もない空中を握り込み先程の改善点を考え眉間に皺を寄せる、無力感と弱い自分への嫌悪に似た感情でさらに険しさをます。


「あ〜…………スゥー……なんか食べいく?コーヒー美味しいとこでさ、もちろん俺の奢りで。」


 モジモジと気まずそうにいう彼、真っ直ぐで心と行動に裏表のない性格がいいところだか、


「何言ってんですか?黒、あなたの奢りで食べに行くのは決定ですが、今日中にリリさんに挨拶して、内部精査を終わらないと仕事が貯まる一方なんですから。それが終わってからです。」


 黒という機械軍人の心遣いに、少々刺々しい言葉で返す彼女。落としたままだった対物ライフルを拾い軽く拭ったあと、手元に黒い穴を開きそこに収納する。引き抜いた手には先程の鞄が握られており、それをじっと見つめた後歩き出す。


 2人が身に纏う軍服が朝日に照らされ、端々に付けられた装飾が煌めく。旗めく外套がバタバタと音を立て靡いているが…………何処から違う音が聞こえてくる、風の音でも、朝を告げる虫の声でもなく……………………それはまるで毎朝聞いている、目覚まし時計のアラームのような……、?




 ※




 ピピピピ………………、ピピピピ………………、ピピピピ………………、ピピピッ。


 手探りで目覚まし時計を見つけ、力の入らない手でボタンを押し込む。


 先程まで見ていた夢の景色も、人物も、確かに感じていた痛みも、曖昧にぼやけて遠ざかっていく。気がつくといつものベットの上、下着のまま毛布に包まっている彼女が呻きながら体を起こす。身体中にシーツの跡がつき、人に見せられないようなしわくちゃな顔を晒しながら目を擦る。そしてまだ記憶から抜けてない「彼女」の顔をできるだけ鮮明に思い出す。そして、確信する。


「…………私ぃ?………なぜに?」


 まぁ、夢はどこまで行っても夢だしなぁ…………、考えてもしょうがないと豪快に頭を掻き、立ち上がり適当なシャツ1枚を着て、左足の部分だけ付け根の部分からバッサリ切り落とされたスウェットに足を突っ込む。


 ボロまでは行かないが、良いとも言えない質素な簡易住居。すきま風に項を撫でられ身震いしつつも部屋を出て、ミシリミシリと音を立てながら冷えきった廊下を進むと、朝から活動を始めている人の声や、聞きなれた物資輸送車のエンジン音がする。淡い朝日が差し込む窓を開け外を見ると、家の前に軍服を着た人影がちらほら見える。その中には、身体の一部を機械武装(オートマタ)に換えた人や、元人間である魂をもつ機械人(アニマキア)の方々も見受けられる。


「夢のあの…………剣の人もそうだったけな、あそこまで換えた人はそういないけど。」


 アニマキアとは、軍が全人類に対して定期実施している適性検査に合格した者が換装手術を行い、生身の体から機械に己の神経と魂を移した元人間のこと。相当な長期間、軍に所属になる代わりに一生涯の手厚い生活保障と高水準な人間的な生活、高収入を確約されるため、適性有りと診断された人のほとんどが喜んで承諾するものらしい。


 ただ「機械化」は決して軍だけの技術という訳では無く、私が産まれる前から一般市民の日常まで深く定着しており、埋め込み式の総合機能チップを使った決済や自身の健康の管理、直接体に入れて生活を恒久的に貢献する人工強化関節や人工網膜、人工筋肉の発展。もはや生活になくてはならない技術になっている。このような一般市民向けの換装手術に適性などの制限はなく、ほしい部品や媒体を専門店で購入し、病院または自宅で取り付けるなど思いのほか手頃なものになっている。今ではピアスやタトゥーなどと同じ感じではないだろうか。

 まぁそれでも身体をいじくって機械にするのに抵抗感を感じる人は一定数おり、やれ精神を乗っ取られるなど、やれ機械の反逆が起きる可能性がなどオカルトじみたことをほんきで信じて、現実とフィクションの区別がついてない主張をしている人達がいる。それに対して確固たるデータを根拠に安全性を説明する軍は大変だと思う。私的には、害がなくて役に立っているんだから良くないか?と浅く考えている。


 両腕が機械の彼も

「おーい!そのコンテナ、食料と保存食だろ?だったらこっちに積もう!物資の種類ごとに分けて置いた方が運んでもらう時、多少楽になるだろ。」


 片腕と両足を換えた彼も

「自分、先に納品書出してきます!」


 下半身と両腕、更には三本目の腕を器用に使い、誰よりも安定して荷降ろしする彼女も

「じゃあ私、残りのコンテナ全部もってきますね!」


 適性有りと診断されその身を一時、軍に捧げている兵士である。

 普通は大人が5人がかりで運ぶ支給品コンテナや、生活に必要な物資が次々と積まれていく。これも機械の体だからこその効率の良さである。


 陰ながらの心遣いに感謝しつつ、寝ぼけたままの頭の中で大雑把に配達ルートを組み立てていく…………が、


「今日は結構多いなぁ、夕方までに……行けるか?しかしまぁ……やるしか無い、な。」


 虚ろな空模様の下、城壁と呼ぶにはあまりにも心もとないが、強化バリケードと有り余りの鉄筋コンクリートで作られた壁。簡易居住地を生い茂った蔦や木々の葉が覆い木漏れ日が揺れ、自然のカーテンが心地よい気温を保つ。張り巡らさた人口水路が生活に深く結びつき、人間らしい暮らしができるコロニー寄ヶ処(よすが)。来る者拒まず去るもの追わずのスタンスで、今では約3600人がここにいる。そして私、もとい私達一家はこのコロニー内での運送を生業としている。故に朝も早く、まだ眠い…………。寝たいなぁ………………………………、寝るか?


「叶永ぇ!アンタさん何時までま寝るつもりだい、起きてきんしゃい!」


 ………………お呼ばれされてしまったので、行くしかないようだ……。




 魅惑的なベットの魔の手から逃れ、階段を軋ませながら降りていく。冷えきった木の板の温度が右足の裏から感じられ、目が段々と冴えてくる。

「ぉはよ〜……どったの?んな顔してさ?」


 1階に降りるとコロニーの地図と、先程来た物資の納品書とを交互に見ながら顔を顰めている、いつも通りの母の姿があった。どうやら先程の物資をどこに届けるかを整理してくれているようだ。


「あぁ叶永、おはよって……どうやったらそんな寝癖つくかね?もはやアートよそれ。」


 母に言われ、アートとまで言われる己の髪はどんなものかと鏡に寝ぼけ顔を映す彼女。そこには少しダウナー雰囲気を纏ううら若き少女が鏡の中から切れ長の凛とした目をこちらに向けていた。女子にしては少し高めな160cm少し、捲れたシャツの隙間から見事に割れた腹筋をチラつかせ、健康的に焼けた肌と靱やかな筋肉を携えた肉体は、未だ育つ気配のない薄い胸部と合わせてとても彼女の魅力になっている。そして、普段は肩に少し触れるくらいまで伸びた黒髪が見事に、それはもう盛大に荒ぶっていた。だが酷い寝癖程度では霞むことのない整った顔立ちは幼さを感じさせない。


「今日結構忙しくなるからね、脚は?いけそう?」


 そう問われ、義足の付け根をポリポリと掻きながら答える。

「……ちょっと痒いくらい?かな、大丈夫。」


  私には、虚空叶永(こくそらかなえ)には左脚が無い、生まれつきだ。代わりに機械義足をつけて生活している。だが普段の生活にも、家業でもある配達の仕事にも特段不便なことは無い。もちろん片足の私が不自由なく暮らせているのは周りの支援あってのものだと忘れたことは無いが、ひとえに私自身が受け入れ慣れてしまったというのが大きいだろう。みんなと違う脚を装着し生活すること、義足を繋げるときに伴う体の内側に響く衝撃と偽物の神経が通っていくときの異物感も、珍しいものを見るような目や無意識的に関わりたくないという感情を孕んだ視線にも。………………しょうがない、そういう身体で生まれたのだ、受け入れるしかない。これが私にとっての普通なのだから。それに、人は努力次第でどうにでもなるもので現在このコロニーで1番動けるのは私だと思うし、生涯付き添っているこの相棒はいざとなれば物々しい鈍器にもなる。足が無いことによるデメリットは言い訳にせず自分なりの工夫を重ねた結果、むしろ人一倍できることが増えたのだ、もはや義足は私にとってハンデではなく誇りになっている。

 だが義足の少女を見た人の反応は大抵、ありもしない悲しげなバックストリーを想像してこちらを気にかけるか、軍の関係者と間違われて声をかけられるかのどちらかで、いちいち真面目に説明するのも面倒になって、最近では違うんですよ〜の一言で終わらせている。気に掛けてくれることや心遣い自体ありがたいものだと思う…………が、問答無用で身体障害者、片足がない可哀想な少女とレッテルを貼られ接されることに嫌悪感?反抗心?…………悔しさ?みたいななんとも言い難い気持ちになるし、今までの努力が見られていない気がして、少し嫌だ。


 しかし評価されないと不服と思う割には、されてしまったことに対して面倒くさいと思ってしまうのはゴリゴリに矛盾しているのだが…………面倒くさいものはそうなのだから仕方ないだろう。


「それとこれ来てたよ、アンタもやりたいことあったら言いなね。…………そんときゃしっかり送り出してやるから!」


 渡されたのは、()から私宛の特級募集要項を一覧にした仰々しいパンフレットだった。

「……まぁ、あったら……ね。」


 定期的に届くこれは、名前の通り「この条件と報酬で貴方を雇いたい」という軍からのもの。というのも、私はこれまで3回ほど適性検査に合格してしまっている。それも()()という仰々しいレベルでの合格を成し遂げてしまったため、こうやって催促が来る。業務内容も苛烈かつ複雑、更には身体の全てを機械に換装し無ければならないというとんでもない代償……。しかし報酬は、私と家族全員を対象に一生涯の生活保証の確約。他の要望があれば可能な限り叶えてもくれる……と。人材確保のためここまでできるのは、なんというか住む世界が違うような、破格すぎて現実味が無いなと改めてパンフレットの内容を流し見てそう思う。


 ありがたい。正直ここまでの評価を貰えたことに、最初は得意げな顔を晒しながら両親や友達に自慢したものだが、私は軍に対して深入りする気は無い。この義足の提供や、物資の定期補填、それには助かってるが所属してなにかに務めることなんて想像できない。私のお兄ちゃんも軍に所属しているらしいが、私が生まれた頃にはもう家にいなかったし、帰ってくることもなかった。写真くらいでしか顔を知らないのに…………、だからなのだろう、軍に対して冷ややかな印象を捨てきれないのは。心のどこかで軍を信用しきれないのは。


「ん、…………考えとく、で?今日はどこから行くさ?」

 思考を切り替え、今日のことだ。地図を睨む母の隣で、自分の腰に手を据えながら一緒に眺める。


「んーそうね、じゃ……こー〜こら辺を頼むわ!」

 と大雑把に地図をなぞり、そこそこな範囲を軽く頼んでくるのはきっと私への信頼だと思いたい。しかし、まぁあの量だと……


「………………やっぱ夕方までかかるわ、じゃ行ってきます。」

 顔を洗い、身なりを整えてから作業着に着替え玄関へ向かう、度重なる修繕跡がもはや()となりつつあるブーツを1足だけ取り出し玄関へ放り、広がった裾を右足と共にブーツに突っ込む。ペンやバーコードスキャナーを取り付けた自家製アームカバーをして、最後に左足を軽くストレッチさせ家を出る。



 ※



 朝も本格的に始まりつつある大通り、人通りも密になり顔馴染みの人と挨拶を交わす。澱んでいた空は移り変って深い蒼で染まり、遠くに入道雲までこさえ映画のワンシーンで切り抜けてしまえそうな理想的な空模様だ。

 ………………よっし。現実逃避は辞めだ、視線を少し下げ家の壁に付けられた看板を見る。箱を抱えて懸命に走る人をモチーフに、鉄板を切り抜かれて作られたもの。今からの私を表してるのだろう。今のうちに義足に何ヶ所かあるスイッチやコックをいじり暖機運転をさせておく。

「にしても……ッ〜スゥ…多いな!?」

 そりゃいつも軍人さん1人2人だったのをアニマキアを含めた7人で運んでいたし、支給品コンテナが来ること自体珍しいのに今日は4本も来ていた。だとしても何なんだこの量は、年一で行われる祭典ですらこの量はないぞ。宛先と中身の種類ごとに懇切丁寧に積まれた生活物資は保管庫に入り切らず、一切れのメモと共に外にまでおかれていた。



 ─── いつもお世話になっております。マキナツァーンラート連邦軍・輸送課シャンバラ支部です。

 本日の納品ですが、倉庫内にスペースがなかったため、一部を外の雨の当たらない場所にまとめ、シートを掛けて置いております。


 本来であれば中に入れるべきところ、外置きとなってしまい申し訳ございません。

 ご確認をお願いいたします。───



「あっ、ハイありがとうございます。…………すごいなぁ、まぁあの人たちもプロってことか。」

 熱量を持った仕事といえばいいのだろうか…………業務をこなすのもそうだが、さらにその先にある相手のことまで考え自主的に動きより良いサービスを提供するという意志を見ると、睡魔に絆される私が情けなく思えてしまう。


 丁寧に書かれたメモを畳んでポケットにしまい、それぞれ宛先ごとにかけられていたシートを剥ぎスキャナーで物資に貼られた四次元バーコードを読み取る。そうして中身と宛先が間違ってないか確認していく。その時、速達がそうじゃ無いか、指定時間なども表示されるため頭の中で即席チャート表を作りつつ、脳内地図と照らし合わせルートを組み立てていく。

 諸々の準備が終わったところで、数人分の物資を持ち上げバランスを取り、そのまま大きく深呼吸をする。頭の中で再度ルートを構築し、より効率的に。あとの荷物もまだまだある、母がトラックで運ぶ分を考えても私が数を捌かなければコロニーに住む人に迷惑がかかる。そう思うと身体を巡る血液が熱く滾っていく、やる気とは少し違う使命感のようなものが確かに脚を踏み出させる。

 左足の駆動部からモーターフィンの甲高い音が鳴り、振動が僅かに足の内部に響きピリピリと足の付け根を刺激する。しだいに左脚が全体的にほのかに赤熱し始め、装甲と空気の境界を陽炎が曖昧に暈していく。


「…………はぁ、頑張りますよ。」


 全力の1歩を踏み出し、尋常ならざる速さで動き出した彼女はあっという間に家を後にする。残像の先には黒い髪を靡かせ、物資を抱えたまま地面から屋根の上まで遮那王の如く飛び駆け回り誇りと共に仕事に励む彼女の姿があった。















諸君、私は貧乳が好きだ。

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