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542.ファザルメイ

オチが……思い……



久し振りにフェンリルを出してから背中に乗って走って貰った。フェンリルの毛はもふもふしていてふわふわの快適なお布団みたいな感じで思わず寝そうになったけど目的地がそう遠くない事もあってすぐに起こされることになった。そういえばケルベロスももふもふしていたけどどっちの方がもふもふしてるのだろうか。合流したら確かめようかな。

フェンリルの背中から顔を覗かせる。奴隷の街と揶揄されているし陰気な街なのかと思っていたが見た目はごく普通の街だ。良くも悪くもどこにでもあるような街。ファザルメイは内陸の方にある街なので潮風等もない。だからなのかアルブレのような全体的に白が目立つ腐食に強い建材という訳でもないらしく基本は石材で出来ていて一部は木造の建築物すらうっすらと見えた。

「ん〜、でもここで魔族が奴隷にされてるんだよね?どうしてかな」

魔族は基幹素因だけでも充分に強い。素因の中身によってはルーレちゃんみたいに高位魔族と変わらないだけの強さを得る者も居る。そんな相手に恐らくごく普通の魔法による強化が施されただけの石材等豆腐と変わらない。少し硬かったとしてもやはり魔族の膂力を超えられる程の堅固さがあるとは思えない。

しかしここには魔族が奴隷にされるだけの理由があるのだ。これが他の種族と同じような借金奴隷のようなものであれば分からなくもないのだが素因が奪われると分かっていてそんな危険を冒す魔族も居ないと思う。

ならば何かしらのトリックがあるはずだが街そのものにそれらしいものがあるようには思えない。フェンリルにも聞いてみたが特別何かを感じたりはしないらしい。

「まあ考えていても分からないし実際に行ってみよっか。フェンリルはどうする?」

「ぬ?我は……そうだな。共に付いていこう」

「ん、適当に見て回ろうか」

人化したフェンリルと街の目の前まで一緒に歩いていく。兵士達は人族。特別強そうには見えない。街の戦力が強過ぎて捕まったという説も今の所薄そうだ。

街の中に入ると肉を焼く香ばしい匂いが何処からか漂ってくる。フェンリルは凄い気になってるようで少しそわそわしている。仕方ないので腕を引っ張って誘導する。向かった先では腕捲りして鉢巻きを着けたおっちゃんの屋台があった。おっちゃんの屋台には名物ベルリア焼きと書いてある。

「ベルリア焼き?」

「ん?嬢ちゃんベルリア焼き知らねぇのか?」

「知らない」

「そうか。もったいねぇ。ベルリア焼きってのはここから二つぐらい離れた街発祥の焼きもんでな。こっちに次第に流れてきたやつなんだよ。美味いぞ。何せ俺はそこで本場の物を食べてレシピまで貰って作ってるからな」

「へぇ?じゃあ貰おうかな。二つ頂戴。美味しかったら追加で買うよ」

「おう!待ってな。最高のを作ってやるぜ」

そう言いながらおっちゃんが手馴れた手付きでどう見てもお好み焼きを作り始めた。

「…………いやまあ、それは美味しいだろうけども」

なんか嫌な予感しかしない。

「ねえ、ベルリアって何?」

「あ?その街の名前だが?」

「あ、うん。そっか。ごめん。なんでもない。美味しいの期待してるね」

これベルリアって街に転生者か転移者が居るんじゃないだろうか。まあ別に居てもおかしくはない。どうやら私やイーグ、クライオンのような神が関与してると思われる転生者以外にも転生者や転移者らしき存在が居ることは商会の情報で聞いていた。

ベルリアに居ると思われる転生者か転移者はお好み焼きを作ったはいい物のお好み焼きと言う名称を使わなかったか或いは使えない理由でもあったのか街の名前を冠した料理名で出したのだと思われる。

「ん〜、ちょっとだけ気になるから会いに行っても良いんだけどねぇ」

もしこっちの世界で色んなものを再現しようとしていたりするのならば調味料関係の再現をお願いしたいところだ。何なら魔国に勧誘か或いはそのベルリアとやらの街と同盟のような状態になってもいい。私が地球から持ち帰った調味料はそこそこ膨大な数があるがそれでも永遠に等しい時間を生きる魔族からすれば全くと言っていいほど足りない。

別に余裕が出来てから私が調味料を作っても良いのだけどヴェルデニアを殺して魔国の女王となった場合、女王という肩書きが邪魔して上手く動けなくなる可能性がそこそこ高い確率であるのだ。そうなったら人材の勧誘も上手くいかないしそもそもそんな風に誰かに制限されたりしたら私が怒って殺しちゃうかもしれない。幾ら何でもそれで殺したりしたら暴君にも程がある。

「まあとりあえずこの街を調べてからかな」

「あいよ!出来たぜ!」

「ん、ありがと」

銅貨を数枚渡して受け取る。木で出来た平べったいお皿の上にはまんまお好み焼きがある。肉を入れていたようだから豚玉とかそっちになるのかな。まさか肉っぽい魚というわけではないだろう。

フェンリルに一つ渡してから近くにあるテーブルに座る。屋台通りのような感じだが近くに座れるテーブルが幾つか点在している事からどちらかというと屋台風の店舗で野外に食べられるところがあるみたいなって言葉にすると意味が分からないな。店舗こそ屋台風だけどやってることはテラス席があるお店みたいな。自分で思っていてちょっと混乱してきたから考えるのやめよう。

とりあえず着いた席でお好み焼き、もといベルリア焼きを一口食べる。口に含んだ瞬間ふわっと出汁の香りと鰹節の香りが……鰹節?パッと見るけどそれらしき物は無い。それらしきものだけど実際には違う何かなのだろう。それを見付けたと思われるベルリアの人には感謝だ。凄く美味しい。生地はふわふわで外側はカリッとお肉にもくどくない程度に下味が付けられているようで全体的に調和された味だった。満足だ。

「ん、追加しよ」

とりあえず作れるだけ作って欲しい位には美味しい。

「失礼、相席をお願いしても?」

「ん?」

おっちゃんに追加を頼んで来てもらおうかなとフェンリルに目を向けたら後ろから声を掛けられた。振り返るとにこやかな笑みを浮かべた男性が立っていた。服はそれなりに綺麗でお金は持っているんだろうなと思わせた。

周りを見るとテラス席は既に埋まっているようで一つだけ空いている席が幾つかある。その中で私達の席を選んだだけだろう。少し頷くとフェンリルの方に椅子を少し寄せる。

「いやぁ、有難う御座います。所でその食べていらっしゃるものはベルリア焼きですか?」

「ん?そう。そこのおっちゃんが作ってる。美味しいよ」

「そうですか。それは良かったです。実はベルリアからこちらに来ていまして地元の味が褒められるのは嬉しいものです」

「ふぅん、ねぇ、どうしてここに来たの?」

「少し気になるものがありましてそれを買い付けられたらなぁと」

「ん、もしかして……奴隷?」

「……え?ど、奴隷ですか?」

「違うの?」

「違います違います!私が買い付けたかったのはこの辺りで栽培されているらしい野菜です!奴隷だなんて……というかその、奴隷なんて売っているのですか?」

「らしいよ?奴隷の街だなんて言われてるらしいから。私はまだ見てないけど」

「……そう、ですか」

男性は少し考えてから悲しそうに顔を伏せる。奴隷に対して思う所があるのだろう。というかうん、こいつお好み焼き広めた人かその関係者だよね?それと転生者で確定かな。上手く隠してるけど魔族だし。制御の素因持ちの私だから分かっただけで普通の魔族だと分からないだろうな。どうやって隠してるんだろう。そういう素因持ちなのかな。まあいいや。思った以上に普通の人だ。これならこの後私が誘ったら良い返事が貰えるかも。

「ねえ、ちょっと私と商談してみない?」

調味料を作って欲しいなぁ。

スイ「まずは醤油と味噌、ソースとかマヨネーズとかケチャップとか……」

フェンリル「……(本当に食べるの好きじゃなぁ)」

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