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押しちゃ駄目そうなボタン

布団の中でもごもご動く感触があり、僅かながらに意識が覚醒した気がする。


「むぐぐぐ…!シャークさん…!なんで同じベッドに…!」


そういえば、確か何か大事なものを捕まえておかなきゃいけなかった気がするので、がっちり掴み直して眠りに落ちていく。


それから少しして、なんだか、風が吹いたような気がして…



「…ティア様…?」


しまった。


抱えていた筈の少女が枕にすり替えられており、部屋の人数が減っている。恐らく音も立てず窓から出ていったのだ。


まさか、本当にすぐさま動くとは!


ガバッと跳ね起きて準備してあったスポーツウェアに着替えて靴を履く。


(ハイドラさんを持っていくぞ!悪魔の場所を聞く!)


アドバイスに従い、9本の蛇っぽい頭が生えたロボの玩具…に更に色々装飾品が追加された謎の物体を引っ掴み、私も窓から飛び出す。


が、出遅れてしまった為、向かうべき方角が6つ頭のサメにも探知出来ずいきなり手詰まってしまう。

((((((ごめんダメだ!))))))


「ハイドラさん、起きて下さい。ハイドラさん」


ガクガクと玩具を揺さぶり、幽霊なのに夜寝ているハイドラさんを叩き起こして、ティア様が最初に向かいそうな悪魔の居場所を聞く。


「…ア…1体…カナリ弱ッテ時間ノ無イ悪魔ガ…」



即座に駆け出す。本当にまずいかもしれない。その情報は共有されていない。


(いや、焦りすぎるな。トラブルの可能性も高い)

(確かに、悪魔を全て滅ぼし終わらせるならハイドラさんも標的だ)

(なんならハイドラさんこそ真っ先に存在を消滅させられる筈だ)


「そう、そうですわね、消すなら絶対ハイドラさんは見逃されない筈…」

「スゴク怖イ」

「ということは前にもあった何らかのトラブル…?しかし万が一も…」


(道中大きなトラブルを見かけたらそこで一旦探索)

(無ければ悪魔の居場所をそのまま確認して回ろう)

(完全に別方向のトラブルは一旦優先度を下げよう)


聡明な3匹のサメの方針に乗って、まずはその弱っている悪魔の居場所を目指し疾走しながら周囲のトラブルを確認していく。仮にティア様が見つけられなくても一旦悪魔の無事を確認だ。しかし、重要な瀬戸際で遠回りの可能性もあって焦りを感じる。


持ったまま走るには邪魔なハイドラさんは、こんな時のためにベルト紐が追加装備されたので、ウェストバッグとかベルトポーチとかなんかそんな感じで装着出来るようになっていた。便利。



「…そういえばハイドラさんは探知魔法とか飛行魔法とかそういう便利な魔法使えたりしませんか」


「エッ!?イヤ自分ハ体ノ無イ幽霊ナンデ…今ハ魔力ガ練レナイデス…」

「……」

「エッ怖イ!役立タズハ消サレル流レデスカ!?怖イ!」


いや、体どころか追加パーツまであるし、それに…今気づいたが、寝る前は無かったはずの、謎のボタン。なんというか、明らかに緊急用っぽいボタンがいつのまにかくっついてる。すごく押してみたい。


((((((押したい!))))))

(よせ!)(絶対ダメだぞ!)(爆発したらどうする!)


「ハイドラさん、今って結構緊急事態だと思うんですよ」

「ハッハイ、ソウデスネ?」

「もし優しいティア様が一体でも悪魔を滅ぼして悲しい気持ちを背負う事にでもなれば、残りの悪魔とハイドラさんは全部私が滅ぼして、湖も埋め立てて全部終わりにして、私も同じものを背負おうと思うんです」

「感情重ッ!!?」

「なのでもしハイドラさんが本当に他の悪魔を助ける気なら、例え内側から爆発するかもしれなくても全面的に協力してくれますよね?」

「爆発!?エッ、ソノ、勿論全力デ協力シマスガ…爆発…!?」


(本当に押す気か!?)

(絶対これ危ないやつだぞ!)

(カバーついてるやつだぞ!?)


そう、なんかこうボタンの上にパカッと開ける感じの透明な蓋がついてるのだ。間違って押さないように。でも私は知っている。本当にもっともっとダメなボタンに付いてる蓋は開くことが出来ず叩き割るやつなのだ。これはセーフのやつ。たぶん。



「ポチッ」


(あっ!?)(あっ!?)(本当に押した!!)



『変身!』


((((((変身!!?))))))


謎の機械音がして、メカっぽい玩具がガチャガチャと音を立てて変形していく。


「ニギャアアア!?!?」


突然自分の体が勝手に変形しはじめたため、その、ちょっとハイドラさんが、少しだけびっくりした感じの声を上げている。


どういう仕組みかよく分からないが、ハイドラさんの体を構成しているゴーレム素材が変形して私の胴回りや胸を覆っていく。なるほど、これはどうやら魔的な素材で体の重要箇所を防御するもの、つまり鎧だ。魔法鎧だ。いつのまにこんなものを。


((((((変身だー!!!))))))


(い、いや、これ、ハイドラさんを胴回りの防具にしただけでは…)

(ま、まぁ我らは物理一辺倒だから魔法系の何かはあって損も無いが)

(大丈夫なのかこれ…!?)


おしりの少し上くらいに9本の蛇っぽいメカ頭が来てるので、その、多分尻尾的なニュアンスで配置されたらしいハイドラさんの頭部達に一応無事を確認してみる。


「あの…ハイドラさん…胸とおしりに触れてる装甲部分はもしかすると後々エッチな問題行為として糾弾しなくてはならないかもしれません」

『自分の意思じゃ無いんですけど!?!?』

「あ、声がだいぶハッキリしました」


もしかすると最初からこれが本来の形状として想定されていたのかもしれない。サメと何かを融合したいとエレン様は常々仰っていたから。多分。



「これでなんか魔力の探知魔法とか使えるようになってないですか?」

『えっいや…これ防具にされただけで自分には特に何も…』

「あれ、おかしいですね…確かやばいオカルトグッズをいくつか追加パーツの部品にしてたので、てっきりあれが魔力になって魔法使える感じになっているのかと…」

『何てことしてるんです!?えっ怖い!!取って下さい!!!!』

「まぁまぁ、今は緊急事態、まずは探知魔法お願いします」


とにかく今は急いで情報が欲しいので、無理やり押し切ったらどうにかなるかなと思って言ってみたら本当に何か発動してるっぽい感じになる。


『あ…ほんとに出来る…これ魔力の元はなんなんだろう…怖…』

「巨大な魔力がどこかにありませんか?」

『あ、えっと…』



聞いた方角へ若干方向修正し、走る速度のギアをマックスまで引き上げる。ありがとうエレン様、このサメと令嬢と幽霊と竜が合体した感じの状態の命名権は譲ります。

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