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てれてれ☆自己紹介


そういうことだったのか……。

俺は何を今求められているのか、ようやく理解していた。


シラーラは俺の目の前で、雷を操っていた。

魔法を目の当たりにして、ようやく俺は夢の世界にいるかもと頬をつねったが、現実だった。

これは考えを改めなければならん。


「髪飾りを付けただけで、これだけ魔力が違うとは? これは明後日が楽しみだ」


アシェラさんはうっきうきだった。

シラーラは普通の学生服に、俺が買ったカチューシャを付けただけでも魔法の威力が上達したらしい。

つまり俺に期待していたのは、彼女の魔力の向上だったということだ。


ふーむ。

しかし、なんだ。

魔力ってそういうものなの?


そりゃ装備が与える影響ってのはあると思うよ。

護符とか杖とか。

帽子とか、スティックとかな。

俺はそういうつもりで選んでないんですけどねえ。


雷の魔法を使いこなしたことで、アシェラさんがご馳走してくれることに。

なにやら高級なレストランっぽいところである。

建物は中国の宮廷料理とかタイの王族のためのとか言われても納得の豪華さ。

フランス料理のような格式ばったテーブルだと思うかい?

文化が違うんだなぁこれが、ナイフもフォークもスプーンも箸もねえ。

なんと、ここの高級レストランは自分で食わない!


「あ~ん」


俺は赤面していた。

なんか大金持ちが、美女をはべらせてうちわで仰いでもらってるみたいな感じ。

妙に露出度の高い女性が、手で俺に食べさせてくれるのである。

なんだよ、この世界。

やたらハーブの効いた謎の肉うめえよ。

手も汚れないし。

でも恥ずかしい。


アシェラさんは慣れたもので、果汁が滴る果物を手で渡されてかぶりついていた。

なんか、エロいんですが。


シラーラは全然慣れていないだろうに、わんこそばのように食い物を腹の中に吸い込んでいった。

あの小さな体のどこにそんなに入るんだ。

しかし、やっぱり意地汚くは見えないんだよな。

現状の身分からすると人から食べさせてもらうなんてありえないんだろうが、見た目は自然なのだ。

安い服を着ていても、本当に王女なんじゃないかと思えるほどに。


「なぁ、シラーラ。自己紹介の挨拶は、"腹ペコプリンセス"と"食いしん坊王女"のどっちがいい?」


そう聞いてみた。

ほとんどおんなじだけどな。


「おいおい、誰がプリンセスだ、不敬罪で死にたいのか?」


アシェラさんが隣の美女に酒を飲まされながら言う。

マジなのか冗談なのか、わかんねえじゃねえか。


「わ、私はそんな食べ物大好きみたいなのじゃないし」


シラーラは今更、そんなことをのたまった。

うーん、ツンデレならぬクイデレ?

「勘違いしないでよね、そんなにお腹空いてないんだから」みたいな?

「べ、別にあんたのために食べてるんじゃないんだからね!?」とか?

やっぱり、俺の分析あってるじゃねーか。

腹ペコプリンセスだ、ペコプリだ。


「ペコプリ、俺の虫やるよ」

「ペコプリじゃないし」

「いらないのか?」

「いらないとは言ってないし」


このクイデレペコプリめ。

シラーラの隣の女性は、俺の虫を手で掴んで、ペコプリの口に放り込む。

丁寧に咀嚼するので、ぶちぶちぷちぷちと虫を食べる音が聞こえる。

うーん、俺はコレやっぱいらねえ。

しかし美味そうに食うなあ。


それにしても食いづらいんだけど、人に麺を食わせてもらうのって。

自分で食いたい。


アシェラさんが思いついたように、俺に話しかけてきた。


「自己紹介といえば、いまだに名前を聞いていなかったな? 自己紹介してもらっても良いか?」


あぁ、そう言えば俺は名乗ってもいなかった。


「俺は、杉田悠一(すぎたゆういち)と言います。高校2年生で帰宅部。趣味はギャルゲーとラブコメ漫画を読むこと。こんなもんでいいですかね」


アシェラさんとシラーラは、ぽかんとしていた。


「何言ってるのか、一つもわからないんだが?」


アシェラさんが困惑しながら言う。


「なんか難しいことをおっしゃってますが、実は賢い方なのですか?」


シラーラは何気に俺を馬鹿にしてないか?


「ええとですねえ。名前はユーイチでいいです」


アシェラさんとシラーラは、こくこくと頷いた。


「ええと、17歳の学生ですね」

「17歳で学生だと!? 意味がわからん。学者ということか?」


アシェラさんが訝しむ。

薄々気づいてたけど、この世界は地球じゃねえな?

でも完全に日本語なんだよなー。

とりあえず適当に話を合わせるか。


「まぁ、そうですね。女性の魅力について研究しています」

「おお、やはりそういうことか、魔力に」


満足気にアシェラさんが納得した。

魔力じゃなくて魅力だっつの。

研究っていっても、萌えアニメを見て、なんで萌えるのか考えてるだけだけど。


「やっぱり……」


シラーラはなぜか胸を両手で隠した。

おかしい、俺はシラーラに対しては紳士だったはずだが。

確かにスリーサイズも把握しているし、髪型やアクセを選ぶのに身体を注意深く観察したりしたけれども。

俺の台詞をちゃんと理解しているのは、シラーラの方かもしれないが。


食事が終わると支払いを終えたアシェラさんが俺に言った。


「ユーイチ殿、今は無職、ということで間違いないか?」

「そうですね、そうなりますねえ」


アシェラさんが準備してくれた部屋と食事がなければ行くところがないんだ。

考えてみれば、よくもこんな状況で平気だよな、俺。


「明後日の結果次第だが、シラーラと君の居場所を用意しよう」


そう言って、軽く敬礼しながら去っていった。




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