第46話 一緒に、という言葉
翌朝。
アレンが宿の一階に降りると、
見慣れた顔が一つ、入口に立っていた。
「あ」
若い冒険者だった。
以前、森の罠の件で助言したパーティの一人。
今は、判断を任される側になっている。
「……おはようございます」
「おはようございます」
少し、気まずい間。
だが、彼は意を決したように口を開いた。
「あの」
「はい」
「今日、北の村に行くんです」
「はい」
「その……」
一拍置く。
「**一緒に来ませんか**」
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ミアが、横で眉を上げた。
「誘われたわね」
アレンは、すぐには答えなかった。
「理由を、聞いてもいいですか」
「はい」
若い冒険者は、正直に言った。
「判断は、出せます」
「はい」
「でも」
少し、視線を落とす。
「**見落としてないか、怖いんです**」
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アレンは、少し考えた。
歩く。
関わる。
だが、決めない。
「……分かりました」
「本当ですか?」
「はい」
アレンは、続ける。
「ただし」
「?」
「**僕は、決めません**」
若い冒険者は、一瞬きょとんとし、
すぐにうなずいた。
「それで、いいです」
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北の村。
問題は、小さな水路だった。
壊れてはいない。
だが、流れが偏っている。
「……どう思いますか」
若い冒険者が聞く。
アレンは、水の流れを見て言う。
「どこが、一番困りますか」
「畑です」
「では」
一拍置く。
「畑を守る選択肢と、
他を優先する選択肢があります」
「……決めるのは」
「あなたです」
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しばらく、沈黙。
若い冒険者は、
村人の話を聞き、
地面を見て、
水を触った。
「……仮判断を出します」
彼は、紙に書いた。
【仮判断】
・流れを畑側に寄せる
・家屋側は経過観察
アレンは、何も言わなかった。
ただ、うなずいた。
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帰り道。
「……緊張しました」
若い冒険者が、正直に言う。
「はい」
「でも」
一拍置く。
「一人じゃなかった」
アレンは、静かに答える。
「決めたのは、あなたです」
「分かってます」
それでも、
声は少し明るかった。
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宿に戻ると、
ミアが腕を組んで待っていた。
「どうだった?」
「歩きました」
「決めた?」
「決めてません」
「教えた?」
「……見ていました」
ミアは、しばらくアレンを見てから言った。
「それ、もう」
一拍置く。
「**同行者**ね」
アレンは、少しだけ驚いた。
「……そうかもしれません」
---
夜。
日記に、また一行。
> 一緒に行った
> 決めなかった
> でも、残った
歩かない日もある。
一緒に歩く日もある。
どちらも、
自分で選べる。
それが、
今のアレンの立ち位置だった。
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