第44話 どこへ行くのか
問題は、外ではなく内側から来た。
朝の宿。
アレンは、荷物を整理しながら立ち止まっていた。
いつもなら、必要最低限。
歩くための軽さ。
だが、今日は違う。
「……増えたな」
地図。
メモ。
簡単な記録。
“判断の跡”が、積み重なっている。
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ミアが、それに気づいた。
「ねえ」
「はい」
「それ、持って歩くつもり?」
「……分かりません」
正直な答えだった。
「今までは、
行けば済んだ」
「そうね」
「でも今は」
一拍置く。
「行かなくても、
回ります」
ミアは、椅子に腰を下ろす。
「それで?」
「……次が、
分かりません」
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昼。
ギルドで、支部長が声をかけてきた。
「少し、話せるか」
「はい」
奥の小部屋。
派手な会議ではない。
「最近な」
支部長は、ゆっくり言う。
「お前を、
“行かせる理由”が減っている」
「はい」
「だが」
一拍置く。
「**行かない理由も、増えている**」
アレンは、黙って聞いていた。
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「頼みじゃない」
支部長は続ける。
「確認だ」
「?」
「お前は、
これからも“歩く”のか」
アレンは、すぐに答えられなかった。
地図を思い浮かべる。
道を思い浮かべる。
人の顔を思い浮かべる。
「……分かりません」
支部長は、うなずいた。
「それでいい」
「え?」
「今は、
考える段階だ」
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夕方。
街外れの丘で、ミアが言った。
「ねえ、アレン」
「はい」
「あなたが歩いてた理由」
「……困っている人がいたからです」
「それだけ?」
少し、意地悪な聞き方。
アレンは、空を見る。
「……歩くと、
分かることがあった」
「何が?」
「**どこまでが、
自分の線か**」
ミアは、静かに息を吐いた。
「……なるほど」
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夜。
アレンは、記録を一枚閉じる。
世界は、もう回り始めている。
自分がいなくても。
なら――。
「……次は」
口に出してみる。
「**どこまで、
関わるか**」
歩くか。
留まるか。
別の形で関わるか。
答えは、まだない。
だが。
初めて、
“行き先”を考えている自分に、
アレンは少しだけ驚いていた。
それは、停滞ではない。
選択の準備だった。
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