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 魔動列車の窓から差し込む太陽の光で目を覚ます。カルロはあの後、夜のうちに出発しようと言い、急いで二人で駅に向かった。列車は二十四時間走っているが、夜は騒音防止のため速度を落として走ることが義務づけられている。私はそのゆっくりとした揺れが心地よくて、席に座ってすぐに寝てしまった。きっと疲れもあったのだろう。昨日はいろんなことがあったから。


「おはよう、よく眠れたか?」


 目の前に座るカルロは読んでいた本を閉じて話しかけてくれた。


「うん、おはようカルロ…あっ、上着ありがとう、シワになってないかな。」


 どうやら寝ている私に上着を掛けてくれたようで、私は汚してしまってないか気にしながら彼に上着を返す。よだれとか垂れてないよね?


「別に気にしないよ。」


 彼はそう言って上着を畳むと丁寧に横に置いた。こういった所作になんとなく育ちの良さを感じる。


「カルロは寝れたの?私だけ寝てたら申し訳ないなぁって。」


「俺も三時間くらいは寝たから大丈夫だよ。それよりせっかく起きてくれたから、俺の目的について改めて知ってもらおうと思うんだけど、いいかな?」


「うん、いいよ、私も知りたい。」


 魔王を倒すとは言っていたけど、何で?とか、どうやって?とかいろいろ疑問があるんだよね。


「昨日も言ったように俺の目的は魔王を倒すことだ。それ以外のことは割りとどうでもいいと思ってる。今はいくつかの街を経由しながら王都を目指している最中だ。といっても昨日家を出たばかりなんだけどな。旅の初日からフィリに出会えたのはラッキーだったよ。」


「やっぱり冗談じゃなくて本気で魔王を倒すつもりなんだね。でも何でそんなに魔王を倒したいと思ってるの?」


「悪いが動機については伏せさせてもらう。別につらい過去があるとかではないから安心してくれ。むしろ魔王を恨む気持ちは全くない。」


 じゃあなおさら何で魔王を倒したいのか気になるんだけど。まあ昨日会ったばかりだしあんまり深いことは聞けないか。


「いくつかの街を経由するのは、フィリ以外にも何人か仲間を集めたいからで、特にこのバルトハインという街では、二週間後に闘技大会が開かれるから、なるべく寄りたいと思ってるんだよね。」


 カルロは地図を広げて指をさす、王都の少し北西に位置したところにバルトハインと書かれた街がある。フロリスは王都の南西の方角に位置しているので、少し遠回りして王都に向かうことになる。


「今向かってるのはセブクロストなんだっけ?」


「ああ、この列車の終点駅だな。とりあえず今日はそこで一泊する予定だ。フィリにいろいろ買ってあげないとだしな。」


 私は今無一文どころか荷物もない状況なので、カルロに着替えや日用品を買ってもらう必要がある。


「ごめんね、私のために。」


「フィリには俺のためについてきてもらってるんだ、これくらい当然のことだよ。感謝はされても謝られる理由はない。」


「そっか…じゃあ、ありがとう。」


「おう。…そろそろ駅に着きそうだな。」


「あっ、あのさ、一個聞きたいんだけど。」


 車内には私たち以外誰もいないが少し声を落として聞く。


「昨日のことって大丈夫なのかな。その…警備隊の人たちに追われたりしないのかなって不安で。」


 昨日私は人を殺した。それは紛れもない事実だ。警備隊の人たちが私を捕まえにきても何もおかしいことではない。


「それなら心配いらないよ。誰にも見られてはなかったし、証拠も残ってない。」


「杖は証拠にならないの?」


「あれはプロイドの杖だよ。警備隊が現場を調べても残っているのは壊れた家とプロイドの杖だけ。母親もプロイドも失踪していて、娘のフィリは昼間にプロイドから逃げている姿を多くの人に目撃され、今は街にいない。そんな状況で真実に辿り着ける人はいないよ。」


 カルロはちゃんとそういうところまで考えて動いてたんだ。すごいなぁ。


「それにもしフィリが疑われたとしても、そのときは俺がやったことにするから。」


「それはダメ!!…ダメだよ、そんなこと。」


 急に大きな声をあげた私にカルロは少し驚いている。


「私はお母さんを殺した罪を背負って前に進むって決めたから。その罪から逃げるようなことはしたくない。」


 そこだけは譲れない。自分の罪までカルロに背負わせるようなら、私は彼のそばにいる資格はない。


「そうか、わかった。フィリの覚悟を疑うようなことをして悪かったな。」


「あっ、いやっ、別にそんなこと…」


 すると列車が駅に到着した。


「着いたな、降りようか。」


 カルロは優しい、でもその優しさに甘えちゃいけない。私は自分の頬を叩いて気合いを入れて立ち上がる。


「カルロ、私強くなりたい。だからこれから、ご指導よろしくお願いします!」


 カルロはいきなり頭を下げられて驚いた様子ではあったが、こちらを向き直して微笑んだ。


「俺の方こそよろしく。」

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