ある魔族の憂鬱
魔界ができる前、王都の東に隣接するように、旧王都ヴィルヘルムという都市が存在した。この都市は現在では魔界となり、魔王軍の拠点として栄えている。
魔界は瘴気が蔓延していて常に薄暗いというだけで、街並みは人間界とそう変わらない。元々使われていた家や施設を魔族たちも使って暮らしている。
そんな魔界で一人ため息をついている者がいた。
「はぁ~あ、憂鬱だ。」
俺の名はバースト、魔界を守り、時に人間界へと攻めいる魔王軍に在籍している。魔王軍は魔王様がトップにいて、その下に四天王と呼ばれる四人の魔族がいる。またその下に三人ずつ、計十二人の幹部が存在しており、俺はその幹部の一人に選ばれたエリートだ。
しかし俺はそんな地位にも関わらず、魔王軍を辞めたいと思っている。理由は数日前、俺の上司である四天王のジェンに、俺の恥ずかしい秘密を知られたことだ。俺は絶対に黙っていてくれと土下座までしたが、翌日には軍全体に広まっていた。その日からは毎日のようにジェンにいじられ、自分の部下にも笑われ、俺は屈辱を味わい続けている。
もう耐えられない。俺はひとまずこのストレスを発散するために、人間界へと行くことにした。だがジェンたちに、俺が一人で、人間界に何をしに行ったのかを知られるわけにはいかない。絶対にいじられるからな。なるべく魔界から離れた街に行くことにしよう。




