私は私
暖かい王宮の一室で同じ話をリレイナも聞かされた。
「私があなたを助けたことが?」
「はい。最初は…あれは…ユリアス殿下が婚約破棄を通告された舞踏会のときです。
廊下で彼らに囲まれていたのをリレイナ様が邪魔して下さったのです。『おどきになって』と」
「あ!」(あのバカみたいに浮かれていた時…)
「あ、ベルナルド、気にするな。婚約破棄は…あれはこの2人の痴話喧嘩みたいなもんだ」
「イヴァン!何を言ってるの?そんなこと!」
「まぁたしかにな。可愛さ余って憎さ百倍ってやつか」
ユリアスはニヤリと笑ってリレイナの肩に手を回した。
「そ、そうなのですね、良かったです」
「他にもレイニーが君を助けたことがあるのか?」
「はい、木の実を投げて」
「ぶっ!!ハハハハハハ!」
「おいおい、木の実って何のことだ?」
「気づかれていたのですね」
「そして最後は…お言葉を下さいました。
胸を張るべきだと。そして私が科学者になりたいと言うと…『この国は安泰ですね』と。
そんなことを言って下さった方はいません。
何より私の名前、祖父や父のことも知っていて下さった。あなたは素晴らしい方です」
「テロワ殿下に言われたとはいえ、毒を渡し、ユリアス殿下やリレイナ様に大変なご迷惑をかけてしまいました。
申し訳ありませんでした」
「彼は君が捕われるのを見たその足で、君の家に向かったんだよ」
「我が家に?」
「はい。その時は誰が味方で誰が敵なのかわからなかったので。少なくともリレイナ様のご両親なら間違いないかと」
「で、君の父上が俺に連絡をくれて、ユリアスには手紙を届けてくれたんだ」
「それでこんなに早く全てが終わったんですね。
ユリアス、イヴァン、そしてベルナルド、本当にありがとうございました」
「さて、一通り話は終わった。ということでイヴァン、ベルナルド帰ってくれ。リレイナと2人きりになりたい」
「ユリアス!!」
「はいはい、あとはお2人でごゆっくり」
「し、失礼いたしました!」
「ベルナルド!そんな恐縮しなくていいのよ!ちょっとユリアス、なんてこと言うの?」
「ハハハハハハ!レイニー、大丈夫だよ。
イヴァン、ベルナルド、追ってまた連絡する。本当に2人ともありがとう」
「イヴァン、お父様にもよろしくお礼を伝えてね」
「ああ。リレイナ、大変だったな。ゆっくり休めよ」
彼らは笑いながら部屋を後にした。
「さて、ようやく2人になれた」
「もぉ、ユリアスったら」
「レイニー、本当にすまなかった」
「いいえ、私こそ…ごめんなさい、今まで色々。あなたが無事で本当に良かった」
「でもベルナルドが話してくれなかったらどうするつもりだったの?」
「君の父上の軍と君を奪還する予定だった」
「えっ?」
「3日が限界だと言われていた。それ以上は待てないと。俺が加わらなくても…我が国から独立してでも君を奪い返すと言われた」
「………」
「もちろん俺は絶対に加わるつもりだった。謀反と取られたって構わない。君を救い出せるなら」
「そんな…」
「でも、実際、君の兵は王宮の超厳戒態勢の中、俺の部屋までたどり着いたんだぞ。君の父上は絶対に敵に回したくないよ」
「ふふ…」
「まぁ奪還作戦は父にこっぴどく怒られたけどな」
「陛下に?」
「ああ。『そんなことをしなくても私はリレイナを疑ったことなどない』と。『3日経ったら私がリレイナを牢から出す』て。
ついでに婚約破棄を言い渡したことも怒られたよ。軽はずみなことを口にするなって」
「ごめんね」
「いや。父は君がお気に入りだからね」
「奪還作戦は別にしても、イヴァンの父上が念書を入手出来そうだと教えてくれたことと他にもいくつかテロワとパルドニーツェ侯爵の違法な行為が見つかった。それを理由にテロワを追い詰めるつもりだった」
「そう…」
ユリアスがリレイナを思いきり抱きしめた。
「ああーようやく君を取り戻せた。もう絶対に離さない!何があっても絶対だ!」
「ふふっ…子どもみたい」
「なぁ、レイニー、俺たちは少し言葉が足りなかったな。これからはもっと話をしよう。そして何があってもどれだけケンカしてもずっと一緒にいよう。俺のそばにいてほしい、ずっとだ。」
「うん。あなたのそばに。ずっと」
「レイニー、心から君だけを愛してる」
「私もよ」
(もう悪役令嬢じゃなくなっちゃったけど…悪役令嬢でもヒロインでも関係ない。転生前の私も含めて私は私だわ)
「ん?どうした?」
「なんでもないわ」
そう言うとリレイナはユリアスの口唇に自分の口唇を押し付けた。
「レイニー!……いや……いいな……嬉しいよ」
「ふふっ」
2人は何度も何度も口づけを重ねた。
完
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