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seize  作者: カネミズ
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10.

10

軽く俺と泰成先輩は、形から入るおじさんに少し話した後、愛貴と最強の男は卓球場を後にした。乗せていこうか?とも聞かれたが、即答で、

「すいません、俺コンビニいかなきゃダメで。お前も行くよな?」

肩に腕を組まれたままそう言ってくる。というよりは行くように促してくる。 

「い、いきますよ」

相当嫌悪な表情をしながらも、そう言う。

そのまま俺は自転車を押しながら辺りをチラチラしている泰成という男をみている愛貴。

「楽しいことないかなー」

頭の後ろで手を組んで、暢気そうに夕方の空を見ながら歩いている。

おそらくちゃんと今歩いている道は、ちゃんとコンビニへと続いているのは覚えている。およそ歩いて五分ほどだろう。

いつの間にか、コンビニが向こう側の歩行者通路にコンビニがある。

「ちょっと、そこのコンビニでお菓子買ってくからちょっとまってくんね?」

「あ。」

「ん?どした?」

「いえ・・・」

愛貴が見つめたのは、売家トナカイ不動産と掲げられている看板だ。自身の身長より少し低いブロック塀に貼り付けられている。その塀の奥には和洋折衷した家が寂しそうにそびえたっていた。

「空き家かあ。うわっ、雑草だらけじゃん」

泰成はいつの間にかその家の敷地内に入ってしまっている。

「ちょっ!なに入ってるんですか!」

「え?別に良くね?盗みに入った訳じゃないし。」

愛貴は自分の正義感ゆえか、好奇心の化身の腕を無理くりつかみ、敷地外へ放りだす。

「なんだよっ!なんもしてねえのに。」

しかし愛貴の真剣な表情をその空き家に向けている姿を見て、泰成もそちらへと視線を送る。

「この家、中学の時の同級生の家だったんです」

「そうなのか・・・引っ越しちまったらしいじゃん。なに?友達だったの?」

「いえ、話したことは一度も・・・というより・・・」

「なんだよ。」

なぜかこういう話はいうのを拒んでしまう。

「実は自殺・・・したらしいんです。」

おもわず言ってしまった自分に驚きながらも、泰成先輩の顔を勢いよく確かめる。

「へ~、そうなんだ。」

返ってきた言葉にかなりの違和感を感じ、おもわず眉間をしかめる。

「おそらく、死んだ原因は親だろ。」

「え?」

「なんかそんな気がするな~。もしくはいじめか。自殺する理由なんて、そんなもんだろ。家でも学校でも居場所がなかったんじゃねえの。多分だけど」

人間は暗い面にはあまり正々堂々と向き合わないものだ。しかしこの人は命を軽んじているかのような雰囲気だ。

「死ぬ意味がわかんねえよな。こんな人生楽しいのに」

それはあなたが天才だからではないだろうか。先ほどの敗北が今だに腹の中をぐるぐるしている。人生は辛いものだ。辛さという概念を乗り越えて、抜け出したものだけが、幸せや楽観を手にすると思ってひたすらに努力を続けた。自分は報われる、正しいと。でもそんなのはこの人にはまるで通用しない。

「先輩、死んだ人を馬鹿にしすぎじゃ……」

といいかけたところで、

「おいっ」

と、突然と後ろから声がかかる。

「ん?やっべぇっ!」

と言いながら泰成は愛貴の背後に隠れるが、完全に見つかってしまっている。

前方から声をかけてきた人物の声はどこかで聞いたことがあるような気がした。でもすでに時刻は夕方で夕陽のせいでその声の持ち主はシルエットしか見えない。

「ラケットを無くすなんてお前がするわけない。お前のことは知り尽くしている」

言い切るまで仁王立ちで静止していたが、徐々に近づいてきた。

それは記憶に新しい顔、梁田先輩だった。

「ああ……悪い、今日は・・・なんというか・・・その・・・」

両手を前へとあたふたさせながら、珍しく道化がキョドっている。

「まってまって!いいニュースがあるんだ・・・ぐっ!」

と、斉藤泰成という名の道化の首を締める。

「へえ~、それは奇遇だ。俺もいいニュースがあるんだ~。見ろこれ。」

手で持っていたのはトーナメント表のようだ。

「新人戦の相手、決まったぞ」

「えっ、まじ!?」

道化は興奮したようで、目の瞳孔をぎんぎんに輝かせる。

「個人戦だけだがな。ダブルスと団体戦は他の学校で変更があるらしいから、来週になるらしい」

「お?健登、ちょうどいい!この子、入部決定!部員確保だぞ!」

と俺の後ろにまわり、両手で愛貴の肩を掴み、健登の前へと押し出す。

「本当かっ!それはよかった!」

今度は梁田先輩が顔を輝かせながら顔を突きだしてくる。

「だから、今日は許してくれ!まあ、サボったけどよ、そこんとこはこの子入部ってことでチャラにしてくんね?」

「今日はお前がいなくても勝てた試合だったし、俺にそう言うより栗田監督にそう言った方いいだろ?」

「大丈夫。俺、栗田監督に絶対の信頼おかれてっからさ」

その自信がいつか壊れるのを見たいのは俺だけなのか。

その後、泰成先輩の時々でる猥談や、梁田先輩の正論を含んだ厳しいツッコミが入る。それを何度も聞いているうちに帰る話に移り変わり、俺と梁田先輩は駅へと。泰成先輩はこれから遊びに行くらしい。

そうして俺は入部することとなった。







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