Chapter6『達成使いは夢を見る⑥』
「天角学園教師の都賀生命」
「同じく美樹巴だ、じゃ帰ろうリリー」
美しい見た目をしている美樹先生は、
力強く、髪を引っ張った。
「嫌!やめて!離して!」
「黙れクソガキ!手間取らせやがってよぉ!」
「大人の言うことは聞けって習ったろぉがよ!」
「ぜ…【絶対零度】!」
「無理ですよ、リリー・シエル」
「能力を消せるのは万全の状態の時だけ…」
「刻印を1つ残したままで美樹先生には敵いません」
「やめて!助けて!」
「おっと」
リリー・シエルは口にテープを貼られた。
もちろん黙らせる為に。
「んんー!んー!」
「…にしても、とんでもない人を当たりましたね」
「ああ…」
「まさか、【クリムゾン】に助けを求めるとはな…」
「んんんー!」
「…ま、部屋から放り出してたし」
「能力は解除されただろ、行きましょう都賀先生」
「はい…」
そう…彼、『薙紫紅』が天角に来たと聞いたときは、
驚愕…いや、戦慄した。
『事件に巻き込まれる』自身へマイナスの能力…
それを抱えて生きてきた彼だが、
悲惨な人生を送ってきたわけではない。
『完全なる無能力者』は『全部乗り越えてきた』。
何故そんな芸当ができるかは知らないが、
こういう裏世界業界じゃちょっとした有名人だ。
『できれば敵に回したくない』
「…リリー・シエルの刻印、貼り直しですね」
でも、彼が現場に遭遇するのは50回目ですよ?
いいんだ…それで50の平和が生み出された
警察として恥ずかしいし、あまり言いたくないが、
彼は私たちよりよっぽど仕事をしてくれる
まだ少年で、筋肉も無く、賢くもなく、
足も遅く、その人生以外は至って平凡なのに、
どうして殺人鬼を倒せるのかはわからないがな。
ーさすがにこの冬、
外に追いやったのはかわいそうだったか。
仕方ない、部屋に入れてあげよう。
「…どうなのかな…」
彼は迷っていた。
彼女は助けるべきなのか?と。
正直、自分なら助けられる。
自分はただの人間だが、ただの人間ではない。
いままで、
封印能力者ぐらいなら簡単に倒してきた。
でも、自分が会うのはいつも『加害者』だった。
あのリリーってやつを、信じるか信じないか…
…
“能力よりも強い運命なのよ!”
「…ふーん…仕方ねぇな」
「まあ良いんだけど」
「例えどんな奴が相手だろーと」
「負けないんだから」
ガチャ
…いない
なんだ、もう連れ去られたのか…仕方ない
説得されちまったから、
探し出して連れ帰るとしますか。
どうせ俺もリリーも天角学園も、
【クリムゾン】からは逃げられない。