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実は前後編で書いてたけど後編は途中で諦めたなんて口が裂けても言えない



「先生の自転車って、変な形してますね」


帰宅途中で寄ったコンビニ前で、山岸先生と偶然出くわした。

「先生の家この辺りなんですか?」「そういや飾城はこの近くだったか。私はもう少し北の名路町の方だな」

などと一言二言交わした後に、兼ねてよりの疑問を言ってみた。


先生の自転車は、何か変だ。

一見して折りたたみのような大きさだが、それにしてはフレームがゴツい。

普通ならあるであろう荷台も泥よけもスタンドもなく、何より前後タイヤの中心に太い鉄芯が付いているのが特徴的だった。


「ああ、これか。BMXって言うんだ」


「ビーエム…?」


「はは、そうね。ロードのお陰で世は自転車ブームだが、まだまだコイツはマイナーな部類だろうなぁ」


なんでそんなマイナーだと言うのに好んで乗っているのか?

そんな僕の考えが顔に出ていたようだ。

先生は「よっ」と自転車を漕ぎ出し、前輪に片足を乗せた瞬間。


ブワッ、と。


前輪部は主軸にして動かず、それなのにハンドルから後ろの部分がグルンと一回転した!


「どうだ。面白いだろ?」


「すごい…」


再び自転車を降りた山岸先生は、「一本失礼」と煙草に火を付け説明してくれた。


「今のはテールスピンというトリックね。見た目が派手で素敵だろ?

割と簡単に出来るトリックって点でも初心者におすすめかな。

BMXは前輪が360°回る構造をしていて、それであんな動きが出来るんだよ」


「これ、何処で売ってます?」


「ほう。なんだ飾城、BMXに興味が湧いたか」


先生は嬉しそうに言ったが、すぐに難しい顔付きになる。


「だがな。正直学生が買うには高くつくぞ?

そもそも取り扱いしてる店を探すだけで一苦労だ。買ったとしても、一緒にやる仲間が居なかったり、やる場所が無くて物置で腐らすケースが多々ある。

特に後者は問題ね。フラットにしろストリートにしろ、出来る場所がとても少ない」


フラットやストリートがどんな意味かわからなかったが、どうやら敷居は高そうだ。


「そうなんですか…」


「そんな寂しそうな顔しないでよ…。参ったね。やる気を削がすつもりなんて無かったのに…。

あぁそうだ。中古で良ければ、もしかしたら一台安く融通できるかも」


「本当ですか!?」


BMXに乗れる。なんだか久しぶりにワクワクしている自分がいた。


「BMXを引退して持て余してる奴を知っていてね。

彼女なら下手すりゃ無償で譲ってくれるかも」


「そりゃ、こっちは嬉しいですけれど、何でまた?」


「結婚が決まったんだと。いやあ、めでたいなあ」


顔が笑ってない…。やっべえ…どうやら地雷を踏んだみたいだ。


「ただ、その代わり提案がある」


「な、なんでしょう?あ、テストでいい点取れってのはやめて下さいよ」


「教師としてはそれもアリなんだけどね。

君が都合のいい日で構わない。一緒にBMXを乗らない?いろいろサポートできると思う」


「それは、願っても無いですね」


「良かったぁ〜!」


BMX乗りは、いつだって仲間に飢えているのよと、先生は笑った。



その笑顔は、とても魅力的だった。




おしまい


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