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162 残り20日 勇者、旅立ちを決める

 勇者アキヒコは、クモコに勧められるままに買い込んだ花束とお菓子と食材を全てペコに捧げた。翌日には、機嫌が治っていた。

 アキヒコとペコの部屋にギンタとクモコも集まり、今後の方針を決めることにした。


「魔王が魔の山にいるのは間違いないのよね?」


 魔術師ペコが、クモコが買い込んだお菓子に手を伸ばしながら言った。


「ほかに情報がないからそうなんだろうな。もう……愁いの写しでもハルヒを見ることはないし……あの魔王が地方で活動すれば、噂が入るだろう。魔の山にこもってなにをしているのかわからないが、いるとすれば魔の山だろう」


 アキヒコは、愁いの写しにまれに写るハルヒの姿は、クモコだと断定していた。理由は、景色がラーファだったことだ。


「では……目的地は魔の山ね。問題はどうやって行くかだけど……私たち全員が乗れる空飛ぶ魔物を従えるというのは、あまり現実的じゃないわね。ザラメ山脈にグリフィンがいるけど……クモコ、従魔の首輪は持っているわね?」


「なに?」

「何じゃないわ。あなたが解放してほしいって言うから……」

「ペコ……クモコは苦しかったんじゃ。そう責めるな。まだ思い出したくないんじゃよ」


 ギンタがかばう。ペコは舌打ちした。


「魔の山に行くにも、ザラメ山脈を越えても、またカバデールがある。カバデールの守りは固いわ。あそこを抜けるのは難しいわね。奴隷の真似でもする? そうすると……調理器具が持ち込めないわ」


 ペコは、冒険者組合に置いてある調理器具の数々は必須だと主張していた。魔力を流せば温度を変えられるというだけでも、どれほど時間が短縮できるかわからないのだ。ただし、その調理器具を、クモコの姿をした何者かが魔法陣を刻みつけて作ったことは理解していない。冒険者組合の厨房に元々あるものだと認識している。


 アキヒコがクモコを見た。クモコは首を傾げる。何を期待されているのかわからなかったようだ。

 アキヒコは咳払いして言った。


「ラーファに、かつての地下帝国の入り口があるらしい。地下帝国から真っ直ぐに伸びている洞窟を行くと、魔の山まで繋がっているようだ。その道を使えば……魔王にけどられず、最短で魔の山に行ける」

「……どうして、アキヒコがそんなことを知っているの?」


 アキヒコはクモコを見た。今度は理解した。


「昔、住んでいた」

「ああ……そうなのね。クモコみたいな大きな蜘蛛がずっと住んでいたにしては、王都の近くの洞窟は小さすぎるものね。じゃあ……地下帝国から洞窟に入って……カバデールの下を通って魔の山に抜ける。それでいいのね?」


「魔王に近づく方法と魔王を殺す方法……どらちも揃ったのじゃ。これ以上、時間をかける必要はあるまい」


 ギンタが同意する。


「だけど……美味しいスイーツを作れるようになったと言っても、僕が直接持っていったら、魔王であるハルヒが気づかないはずがない」


 言いながら、アキヒコは自分の顔を撫でた。


「アキヒコは変装する必要があるでしょうね。それから……魔の山に着いたら、人間に近い魔物や亜人たちにクモコ特性のスイーツを食べさせて、評判にするといいと思うわ。魔王の耳に入れば、必ず城に招待するか、直接食べに来るでしょう。きっと油断しているわ。身を乗り出したところで、ギンタがアキヒコに魂喰らいの剣を渡して、こう……ぐさっと……」


 ペコが剣を突き上げる動作を見せた。


「そうだな。それしかないか……もう、スイーツの試作はいいのかい?」


 アキヒコが尋ねる。尋ねたのは、クモコに対してだ。ペコは、『クモコ特性のスイーツを』と言った。


「ラーファの冒険者組合にある料理器具と買い集めた材料を使用すれば、移動しながらでも作れるわ。どうせ、ぎりぎりまで調整しなきゃならない。いつ出発しても同じことよ。そうでしょ?」


 ペコがクモコに尋ねる。クモコは曖昧に笑った。


「よし……じゃあまずは、冒険者組合に行って旅支度を整えて……それから、地下帝国への入り口に行こう」


 アキヒコが宣言し、打ち合わせは終了した。


 ※


 冒険者組合の厨房に向かう。

 いつもより時間が遅かったため、今日は借りないと思われたのか、作り置きした食材や買い集めた材料、道具一式が厨房の外に出されていた。


 ペコとギンタは急いで材料を回収に行き、アキヒコは大きな背負い袋に、どうして外に出されたのかわからないが様々な道具を詰め込んだ。


「クモコ……ひょっとして……ペコのことを怒っているのかい?」

「どうして?」


 荷物を詰めながら、クモコが尋ねる。


「いや……妙に言葉が辿々しいし……クモコ、覚えているよな?」


 アキヒコは、左手の薬指を見せた。以前より細くなった指輪がはまっている。

 クモコは覚えていた。


「ペコに見つかると、怒られるから、隠してある」

「そうか……そうだよな」


 アキヒコは笑い、追加で持ち出すつもりか、材料を抱えて厨房から出てきたペコの荷物を受け取った。

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