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153 残り25日 魔王、堕天使を堕落させる

 魔王ハルヒは、ドラゴン王プリンにまたがり、港町ラーファの領主邸の前庭に舞い降りた。


 目立つことは避けたかった。勇者アキヒコが港町ラーファに来るだろうと推測していたからである。ハルヒが来ていることを知られたくなかったのだ。ハルヒの目的は、勇者アキヒコが所持している支配の首輪を奪うことだからである。


 目立たないように、ハルヒははるか上空から近づき、魔法陣を展開して周囲の風景を取り込む空気の円柱をつくりあげた。その円柱に入ると、周囲から姿が見えなくなる。

 常時姿を消すのは、ハルヒの能力では装備に魔法陣を施さなければならず、比較的複雑な魔法陣であるため、ドワーフが作成した装飾品でもまだ耐えられなかったのだ。


 ハルヒは透明な円柱の中を通って、急降下するようドラゴン王に命じた。

 ドラゴン王は飛行に必要な魔力を切断し、真っ逆さまに落ちた。

 ハルヒは、前世では絶叫系のアトラクションが大好きだった。


 あえて両手を上げ、落下する凄まじい風圧を受けながら笑い声を上げた。

 地上に激突する寸前でプリンが急停止する。

 周囲からは、ハルヒもドラゴン王も見ることができない。


 だが、水牛ほどの大きさの塊が自由落下して急停止したのだ。

 周囲に突風を巻き起こし、たまたま近くにいた細長い男たちを吹き飛ばした。

 ハルヒが魔法陣を解除する。

 周囲に、ハルヒとプリンが晒される。


「ま、魔王様?」


 突風で吹き飛ばされた男たちの中に、ラーファの領主が混ざっていた。


「ああ……出かけるところだったの? 邪魔しちゃったわね。ここが町中で、一番広かったから利用させてもらっただけよ。気にしないで。すぐにお暇するから」

「いえ……せっかくラーファにいらっしゃるとのことですから、お迎えに上がろうとしていたのです」


 領主が助けられながらたちあがった。周囲にも、ひょろりと背の高い男たちに囲まれていた。

 同じように吹き飛ばされていたが、領主本人よりもやや若いためか、立ち直りが早かった。カバデール領主の使用人が侍女ばかりだったことを考えると、ラーファの使用人に男が多いのはハルヒとしては好感が持てた。


「私を迎えに? 今来たばかりだし、誰にも知らせていないけれど……」


 あるいは、サキエルが先回りして知らせたのだろうか。ハルヒが考えていると、領主が答えた。


「冒険者組合から、魔王様が冒険者のパーティーと一緒に厨房を借りているという報告が来たので……なにかの間違いかと思いましたが、ご本人なら失礼があってはいけないと、お迎えに上がろうとしていたのです」


「ああ……なるほど。うん……わかった。迎えに行かなくても大丈夫よ。私はここにいるのだから」

「そうですね。ところで、後ろにいるのは……」

「プリンよ」

「魔王様にお仕えしている。ドラゴン族の王だ」


 名前だけでは伝わらないと感じたのか、ドラゴン王プリンが自ら言った。


「ひっ……ドラゴン王……」


 領主が尻餅をついた。腰が砕けたらしい。


 ※


 ハルヒは、ドラゴン王の存在を秘密にしておくように言い置くと、一人でラーファの町に繰り出した。

 冒険者組合に向かう。

 途中で、上空から白い翼を持つ堕天使が降りて来た。


「堕天使サキエル、遅かったわね……でもないか。あなたがここに来ることは、聞いていないわよ」

「私がいるべき場所は、魔王様のそばしかございません。さすがにドラゴン王の飛行速度には敵いませんが、行き先がわかっていれば、随行するのみです」


 ハルヒは、サキエルに翼を隠すよう命じた。サキエルは従い、白い翼を隠す。

 ラーファの町は、人間の町だ。かつては半分近くが亜人だったが、亜人たちは全てラミア率いる地下帝国の再建に向かわせた。そのなかで、翼を持つのは目立ちすぎる。


「行軍する魔物たちの統括を命じられたのは、あなたじゃなかった?」

「鬼族のノエルが着実に遂行しております。二人はいらないかと」

「そう……魔物たちが殺しあわないなら、別にいいわ。ところで……あなたの翼は白かったっけ?」


「魔王様と同行している間に白くなりました。かつての行いはすでに女神に許されたことは……」

「ああ聞いていたわね。もう、堕天使って肩書きは無くしたほうがいいんじゃない?」

「魔王様の傍にいる間は、堕天使でございます」


 サキエルなりのこだわりがあるのだろう。


「堕天使が天使になることは、昇格と言うべきなのかしら?」

「堕天使としては、堕落かと」


 サキエル自身が言うことなので、ハルヒはサキエルが堕落したものと納得した。

冒険者組合についていた。

 ハルヒが受付に向かうと、年配の女性が腰を下げた。


「これは魔王様……さきほどお帰りだと思いましたが、お忘れ物ですか? まさか……あの者たちが、何かご無礼を……」

「いいえ。大丈夫よ。明日も来るのかしら? 私……」


「あの……はい。昼頃にいらっしゃるものと思っていましたが……」

「そう。ならいいわ。また明日ね。サキエル、買い物に付き合って」

「了解しました。何を買われるのでしょうか」

「市を見てから考えるわ」


 ハルヒが言うと、堕天使サキエルは市までの道を先導した。

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