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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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(141)

「 今のサラザル当主、デリオンは、前当主の庶子なんだ。本来なら、当主を継ぐ予定ではなかった。

 前当主は、正妻以外にも何人か女がいた。まめな男でね、霊力や魔力の強い女がいるとすぐ口説いていたよ。

 デリオンの母親も、元は、サラザル一族の傍流の傍流、当主一族の召使だったそうだ。魔力が強いのを見込んで、前当主が手をつけたんだ。

 

 生まれたデリオンは、霊力が高く、魔力出動も小さい頃から強力だった。それで、当主は、庶子の中ではデリオンを特に目をかけていた。

 当主からは、可愛がられる一方で、正妻からは目の仇にされ、かなり酷い扱いを受けたそうだ。魔導士学院へは、入学させてもらえたが、卒業後は、正妻が目を光らせ、嫡子とは差をつけられた。


 サラザルの大切な家業は、リーユエン、おまえも知っての通り、情報収集とその分析だ。それを知りたい奴に報酬をもらって教えている。宗家は、情報を元に色々商取引でも有利に立ち働き、莫大な利益をあげてきた。

 あんたが、ハオズィの商会に顧問として参加するまでは、サラザルこそ、玄武国で最大の交易商人だったのだよ」

 

 ナーガムは、思わず尋ねた。

「えっ、明妃殿下は、狐狸国のハオズィ商会と取引がお有りなのか?」

 

 リーユエンは肩をすくめた。

 ナイナイは、呆れたふうに、首を振った。


「何を言っておいでだね。全く修行にばかりかまけてないで、俗事のこともちっとは勉強なさいよ。このリーユエンはね、ハオズィ商会の大口の出資者なんだよ。狐狸国では、『有徳の老師』と呼ばれて、下へも置かない扱いだよ」


 ナーガムは、ますます混乱した。

「ですが、あなたは猊下の・・・」


 リーユエンはむすっとした顔で言った。

「言っておきますが、出資した資金は、全額私個人の資産ですから、明妃として下賜されたものは、一切含んでいませんからね。

 ごめん、姐さん、続きを話して」


「前当主の正妻は、優秀なデリオンの事を警戒してね、宗家から遠ざけようと画策した。それで、情報収集のためという名目で、デリオンを妓楼の男衆にしてしまったんだ」

 

 これには、リーユエンも驚き、目を見張った。

「あのデリオンが、ハビみたいな男衆の仕事をしていたのか?何だか想像がつかないな」


「働いていたのは、うちの妓楼ではなかったが、勤務態度は至って真面目だったそうだよ。宗家の方へどれくらい情報を上げたのかは知らないが、まあ、いくらサラザルに尽くしたって、正妻の目の黒いうちは、引き立てなんかあるはずがない。本人だって、見込みがないのはわかっていたんだろうよ。

 そして、二、三年勤めた頃に、デリオンは、妓女の一人と懇ろになったんだ」


「「えっ!」」

 

 リーユエンとナーガムは同時に声を上げた。ナイナイから直接薫陶を受けたリーユエン、それに俗事に疎いナーガムにも、妓女と男衆が懇ろになるのが、どれほどまずい事態なのかは、理解できたからだ。


 ナイナイは、無言で頷いた。煙管から甘い香りの煙を吐くと、また続けた。


「そう、あんたらにも、予想はつくだろう?妓楼の主が動いた。

 本来なら、手をつけた男衆は、制裁を受けて半殺し、下層区の運河へ簀巻きにして投げ込まれるところだ。

 だが、妓楼の主は、デリオンがサラザル当主の庶子だと知っていたので、当主へ、デリオンの処分を一任した。前当主が、どのような制裁を課したのかは知らないが、デリオンは男衆を辞めて、姿を消した」


「相手の妓女には、子供ができたんだね」

 

 リーユエンの問いにナイナイは首肯した。


「庶子とはいえ、デリオンは、サラザル宗家の血をひく直系だ。その子どもなんだから、産ませないなんて、選択肢はなかった。妓女が産んだのは、男の子だったそうだ」


 今度は、ナーガムが尋ねた。

「その子は、今、どうしているのだ?」


「即答はできないよ。順番に話すから、聞いておくれ」

 

 ナイナイは、煙管を何度も吸って、煙を吐き出し、どう話そうかと思案していた。何か、躊躇う事情があるようで、彼女には珍しく逡巡を見せた。


 リーユエンは、ナイナイが話を再開するのを、お茶を飲みながら、辛抱強く待ち続けた。


「その後、数年して、前当主が亡くなり、正妻の息子が当主に就いた。だが、出来が良くなかった。それに正妻は、自分の立場を笠に着て、サラザルの組織を私情で動かすことが多かった。

 デリオンは、不平不満を募らせるサラザル一族をまとめ上げ、正妻と息子を排除した。そして、自分が当主となった・・・・おや、お茶がなくなったね」

 

 ナイナイは鈴を鳴らし、ハビを呼びつけ、新しい茶道具一式と交換させた。それから、お茶を淹れて二人に勧め、また話を再開した。


「おまえから、代金をいただいちまったから、話をするけれど、あまり後味のいい話じゃないし、微妙な関係もあるから、くれぐれも私から聞いたなんて、言わないでおくれよ」

 

 もう一度念押してから再開した。


「当主になったデリオンは、妓女の行方を探した。けれど、その妓女は、子供を産んで三年後、流行病で死んでいた。ただ、同じ妓楼にいた他の妓女から、子どもを産んだと聞かされて、今度は、子供の行方を懸命に探したんだ」

 

 ナーガムは、デリオンは当然息子を見つけだし、手元に引き取ったのだろうと予想した。ところが、ナイナイの話は、予想外の方向へ進んだ。 

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