080.城内攻略(3)
無人かと思う程に誰とも出会うことなく城内を歩き続けると、上にあがる階段を発見する。
偉い人はなんとやら、である。
「勿論登るよな」
「ええ、ずっと警戒して進んだ割に敵と遭遇しないんだもの、最上階目指しましょう!」
これだけ前後左右を警戒しつつ歩き続けているにも関わらず途切れない集中力は、私も見習いたい姿勢である。道すがら左右にいくつかあった部屋は完全スルー、というのもドロップ品にそこまで固執していないのだ。
上級プレイヤーとなるとRTAよろしく、上級品を手っ取り早く入手するにはより強い相手を技術で倒す、という無駄な知識があるがためである。
RLのダンジョンに沸くモンスターからは本当に意味不明なレベルで様々なドロップをする報告を見ているが、やはり種族などによってドロップ品には偏りがあるように思われる。
ならばNPCの住む場所で手に入る物はどうなのだろうか?
このように部屋を無視して行動は得策なのだろうか?
『分析、報告:NPCは剥ぎ取りのみ有効。死亡時の復活は確認されていません。一般のNPCからの有用アイテムドロップ情報は皆無。ダンジョン内に現れる特殊NPCからは有用アイテム所持者が居るとの報告数件。ちなみにAI殿が抜く時、下着が見えていたため録画しておいた』
何故私の思考を読み取って勝手に起動するんだ、この装置は。
『えっ? 菜茶が聞いたから応えたのであろう? 録画に関しては使命感に駆られたためだ』
ふむ。
どうやら思考が現実で独り言として漏れているらしい。いや、いつもの事か?
「お前の使命は一体何なのだよ」
「えっ、何ですか? 私の使命?」
「ああ、いや独り言だよ、気にしないでおくれ」
「了解」
今に始まった訳ではない私の独り言に順応したAI君だが、律義にそれに応えてくれるところは嫌いじゃないな。
「ちなみに私の使命は菜茶さん、貴女を超える事ですよ!」
「ああ是非とも、私の舞台まで来てくれたまえ。歓迎するよ」
AI君は肩をすくませると、再び警戒を強め階段を登ってゆく。
是非とも、私が引退するまでには同レベルの相手、もしくは強者との出会いを楽しみたいものだね。
こうして私たちは次の階層へと足を進めた。




