079.城内攻略(2)
城内というだけあって、廊下が異常に広い。
ゲームでもここまで無駄に広く作られているものはそうそう見かけない。
「なっ、貴方達は!?」
名も知らぬ女性NPCがひきつった声で口を押えるしぐさをする。
しかしスグに指をピンアウトする動作をすると城内にピィィィと甲高いヘルツ音が短く響いた。
「やっちゃいます!」
「ああ、腕前拝見」
AIは言うが早く、部屋から飛び出しモブっぽい女性NPCに飛び掛かる。
「ッハァッ!」
容赦ないダッシュパンチが腹を抉り、そのまま短く息を吐いた女性NPCは壁にめり込むほど吹き飛んでいった。
ふむ、壁が抉れるとか良くできている空間だな。
「あ、あれぇ? 無力化する程度のつもりだったのに……あっ、太ももにホルスターってエロ可愛い! 私、これ貰っていきます」
AI君は容赦なくこの王城のメイド服のスカート部分をめくりあげていた。
下着が見える事も厭わず装備を奪う時の笑みは、瞳の鋭さからも悪人にしか見えないのが残念である。
「フレアスカートって良いですね、太ももに装着した銃がとりやすいですし。私、後でこのスカート探して買う事にした」
「ん、それよりも弾は入っているのかなソレに?」
「あっはい、6発入ってますね。試し打ちしましょうか?」
「そうだね。私も一発試しておくか、丁度的も来たことだし」
先ほどの警報で駆け付けたのだろう男性二人が曲がり角に居る私たちを発見したのだろう。
その目は大きく開かれ、スグさま一人が同じくピンアウトさせる動作をしていた。
「くそっ、ルバーは一体何を連れて来たんだ!?」
「それよりカレンさんを襲った奴らを捉えるのが先だ!」
城の警備兵といえば、ゲームで定番の鉄鎧を身に着け槍装備をしているとかそんなイメージがあったが、実際に目の前に駆けつけてきた男性二人の服装は至って軽装。
白のワイシャツにジーパン姿に、胸元に茶色の装着具が剥き出しで身に着けていた。
考察。
きっと城内での抜銃行為は禁止としていたため、目につく位置に銃を装着しなきゃいけなかったのだろう。
そして、それを抜こうとしている今、緊急事態だと相手側はハッキリと認識しているということだ。
先行した男が銃をこちらに向けた瞬間だった。
パンッ、と思い切り良い音がして男の真横を銃弾が通過していく。
「あれぇ、この銃の照準おかしくないですか?」
完全に後手だったAI君は相手が銃を向ける動作のわずかな間に早打ちをしてみせていた。
まぁ、当たらなければ意味などないのだがね。
「う、撃ちやがった! ジェイムズは救援を直接呼んで来い!」
返事も無しに踵を返し男はこの場を離れていく。
が、十分に構える時間があった私が君たちを逃すわけが無かろう?
パンッ、と再び乾いた音が響く。
バサリ、とあと一歩で私達から死角となる通路へ逃れれる位置で男は姿勢を崩し倒れていた。
「ジェイムズ! くそっ、いつだ! いつ撃った!?」
どうやら私の高速照準射撃は男には見えなかったようだ。
まぁそんな事はどうでも良い、この10m近い距離でも、ある程度は無回転の弾でもコントロールは出来そうな事が分かっただけで儲けものである。
「何であんな綺麗に足を狙って打ち抜けるんですか先生は!? やっぱり私、弟子になりたいです!」
「ほらほら、相手に銃を向けられているんだ、世間話は後回しにしな」
「……了解」
無回転の弾が飛び出るタイプだと、わざわざ説明してあげなきゃいけないのかしら?
いや、これくらい自分で理解しなきゃプロに対して失礼だわ、ということでしばらく説明は控えておこう。
「ちぃ、やむなしだ!」
わざわざそんな台詞を口に出しながら、倒れたジェイムズと呼ばれた男にジリジリと近づくと空いた手でピンアウト動作をしていた。
「ほぅ」
途端、男たちの姿は光の粒となりその場からきれいさっぱり消え去った。
カレンと呼ばれた女性NPCはそのままだが、放っておいても無力化している今は放置で問題無いだろう。
「NPCって卑怯ですよね、ピンチになるとスグにどっか消えちゃうんですから」
「まぁまぁ、そういうなよAI君。一話で物語が終わるようなら物語なんて、誰も気にも留めないだろう?」
「そうですけどぉ」
「それに私達にだって、いつだってログアウトできる環境にあるのだからドッコイドッコイってことにしようじゃないか」
「……ドッコイドッコイて、最近聞きませんね」
「……喧嘩を売ってるのかな?」
女子高生はたまに突っ込んでくるよな、これが若さか。
「さて、彼らが来た場所に向かうか、この後ろ側へ進むか」
「衛兵って、下から来るようなイメージだなぁ私」
「なら決まりだね、この静かな道を進もう」
後ろ側を振り向くと、警報を鳴らした割には静かな城内の道が続いていた。




