朝
少年はゆっくりと瞼を上げる。爽やかな、それでいて少しジメッとした朝だ。窓から差し込んだ光は、古びたコンクリ調の部屋にあかりを灯す。少年は上体を起こしながら辺りを見回す。
道端で倒れたところまでは記憶がある。が、そこから先は覚えておらず、なぜ自分が古びた二人がけのソファーで横になっていたのかもわからない。
窓際には少し錆びたデスクが一つ置いてある。デスクの上には灰皿が置いてあり、吸い殻で満たされている。安いタバコの匂いが、ソファーや壁にまで染み付いている。デスクの横の壁には金属棚があり、ファイルや本がずらりと並んでいる。その並びの中にたまに置いてあるアンティークな置き物がいい味を出している。自分が横たわっていたソファーの前には鉄格子のガラスでできたローテーブルがあり、そのテーブルを挟んで向かいっ側にもう一つソファーがある。焦茶色の皮の二人がけのソファー、ちょうど自分が横たわっていたものと同じものだ。そのソファーのさらに向こう側にホワイトボードが置いてある。
コツ、コツ、、、
扉の向こう側から革靴の足音が聞こえる。少しずつこちら側に近づいてくるのがわかる。
ギィーーー
錆びた扉がゆっくりと開き、だらしない身なりの長身の男が部屋に入ってきた。扉が開くと同時にタバコの匂いが少し濃くなる。
「起きたか」
低く、どこか落ち着くような声が部屋に響く。
「体の調子はどうだ?動けそうか?」
「、、、はい。」
男は無精髭を生やし、着ているシャツにはシワが寄っていた。いかにもだらしないと言う感じの身なりであったが、歩き方や喋り方、声のトーンなどが、だらしない雰囲気の中でもどこか鋭いオーラを醸し出している。
「お前は昨日路地裏で倒れていたんだ。体も冷たくなっていて、このままじゃ危ないと思ってな。俺の仕事 場にお連れしたってわけだ。 ーーーー まあそんな警戒するな。取って食ったりしねぇよ」
少年は自分が肩に力が入っていることに気づいた。肩の力を抜きつつも、怪しい男に警戒しながら口を開く。
「助けていただきありがとうございます。。。あなたは、誰ですか?」
男が答えようと口を開こうとした時、
ぐぅ〜〜〜〜
少年のお腹が鳴った。二、三日は何も口にしていない。空腹は限界を超えていた。それが男にも伝わるくらい大きな音だった。男はそれを聞き、ツボに入ったように笑った
「そうだよな、お腹空いてるよな。
とりあえず飯を食いに行くか。自己紹介はそのあとだ」
男に連れら、少年は部屋を出た。階段を降り、建物を出る。自分がいたのは建物の2階だと気づく。古びたコンクリ3階建ての建物だった。男は背をむけ振り返ることなく歩みを進める。少年は後を追い、日差しの中街を歩いた。
行き先も、名前も、まだ何も知らないままに。




