第91話 竜神復活の儀式
シモーヌはやや怖い顔に変わって話を続けた。
「この辺では見かけない風変わりな連中だった。着ている服も変わっていたし、何より凄い人数で来ていたわ」
「多分どこかの村の住民達でしょう。大事な儀式のお供え物として使う予定だったんじゃないの?」
「……うっ!」
リリアンの様子がおかしくなった。頭を抱えて苦しそうだ。
「大丈夫? 喉につまったりとかした?」
「……いえ、あの……その話なんですけど……」
「今のギルドの依頼の話のことで何か心当たりでも?」
リリアンは頷いた。
「多分……私の村の人達です」
「なんですって!?」
これはなんだか根が深そうな話になりそうだ。ようやくリリアンも真剣に話す気になってくれたな。
「私がバジュウの実が大好きなことを知って、それで……村中の大人の男性たちが、私にプレゼントを渡す計画を立てていたようで……」
「あなたみたいに可愛ければそりゃもてるだろうけど、随分大げさな話ね」
「私も最初は単なるおふざけだろうと思って、かるく思っていました。それで実際に大人達は多くの町やギルドに足を運んで、バジュウの実を大量に集めてきて、それはもう本当に大量すぎて、村にある一番大きな倉庫をほぼ一杯にしてしまいました」
「やっぱり、なにか儀式か催しでもやる予定だったの?」
「そうですね……まさに大がかりな儀式でした」
リリアンがそこで顔をしかめた。そして間をおいてつぶやく。
「竜神様の……復活の儀式」
「……え?」
「竜神って……まさか……」
「リリアン、続けて」
「私の村……いえ、ストラカディア島に先祖代々伝わっていました。古の竜神様の魂が宿りし人の子が誕生せし時、大いなる恵みがもたらされる言い伝えが……」
「ということは、プレゼントを渡す計画って言うのはギルドの連中を騙す口実なわけね」
「本当の狙いはその竜神様の復活。その正体は……」
みなまでいうほどでもない。リリアンの話は続いた。
「大量のバジュウの実が運ばれた日、私の両親が言ってました。今夜は素敵な催しがあるから、夜までゆっくり休んでね、と。私もその日は疲れていたからぐっすり家で寝ていたんですけど、夜目が覚めたら誰もいなくて……」
リリアンの口が震えだした。かなり辛くて怖い記憶が頭によぎってるんだろう。でも大丈夫と言わんばかりに、また話し始めた。
「村の一番大きな広場に行ったら、その儀式の準備をしている最中でした。大好物のバジュウの実がたくさん並べられているのが目に入って、思わず広場に入ってしまったんですけど、中央に立っていた巨大な竜の像を見て固まってしまいました。その像と目が合ったんです。信じられないんですが、心の中で語り掛けてきました。『ようやく……我が……よみがえる』と」
ディンフォースだな。ということは、村の連中はすでに邪竜教団に、いやボラリスの手中にあったわけか。
「そこで両親に見つかりました。間違いなく私の両親でした。私は凄く怖くなって、抱きついて心の中で聞こえた声のことを話したら……両親の目つきが赤く光りだして…………うぅ……」
「……なんて言われたの?」
「……大丈夫……もうすぐあなたは竜神様にお出迎えされるから……何も心配いらないって……」
その後、両親は突然人が変わりリリアンを無理矢理縛り付けて倉庫の中へ閉じ込めたそうだ。リリアンが泣きながら語った。邪竜教団め、村の連中だけでなく、両親まで操ったというのか。
「その後は……あまり記憶にありません。ずっと悪夢にうなされました。悪魔のような顔をした竜の顔が、ずっと私を見つめていて……」
「もういいわ、リリアン。それだけで十分よ」
「は、はい……ごめんなさい……」
「いいのよ。あなたは立派に真実を話してくれた。ありがとう」
「……お母さんと……お父さんも……完全に人が変わったようでした。悪魔のように変貌して……あの……こんなこと言うの、凄くはばかれるんですけど……」
「……リリアン……」
俺はそっと肩に手をおいた。
「俺達が救ってやる。安心しろ」
「本当に……いいんですか?」
「気にしないで、こんなことは慣れっこよ。ね、勇者様?」
慣れっこではないが、困っている子供が目の前にいて見過ごすわけにはいかない。
「邪竜教団もほぼ壊滅したはずだから、リリアンの村にいる連中はほぼ残党よ。何も怖くないわ」
「いえ、まだボラリスが残ってるでしょ」
「そうか……奴がそこにいる可能性もあるな」
「しかもさっきの話が正しければ、ボラリスがもう村を掌握しているかもね」
「ボラリスって……もしかして白いローブに身を包んだ人間ですか?」
「なに? 見たことあるのか?」
「はい……名前まではわかりませんでしたけど、白いローブに身を包んだ男の魔道士のようでした」
「となれば、私もいくわ。あの男、絶対に私の手で懲らしめてやるんだから、今度こそ!」
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