第24話 適性試験会場へ
安心したのもつかの間。まだここに来ていちゃもんつける気か。
「適性試験だな。それを受けて合格したら、彼の加入を認めよう」
「て、適性試験……?」
「それって、メンバーカード発行の際に行う試験では? ゴーイチの場合不要でしょう?」
「確かにゴーイチは旧式のメンバーカードを持っていた。しかしいつ発行されたかわからないメンバーカードを持っているような人間は、果たして君たちのパーティーに入れる資格があるのかどうか疑問だ」
「資格があるかですって? 彼の実力は私が認めます。私は彼がキングオークと鎧の魔物を倒す場面をハッキリ見ました」
「それは君だけの証言だろ? ほかにはいないのかね?」
「いえ……私だけですけど」
「なら駄目だな。そもそも他人の証言だけで本人の実力を認めるほど、私も愚かではないんでね」
「そこで適性試験の出番、ということですか?」
エンリケが頷いた。なるほど。
「要するにあんた、回りくどいこと言っているが、単に俺の実力がはかりたいだけなんだろ?」
「ちょ、ちょっと……マスターに向かってなんてことを……」
敢えて無礼な口のききかたをしてみた。日本にいたときも、年上や先輩の人間への作法や礼儀は大事にしろ、口の利き方に気をつけろと、耳にたこができるほど聞いたな。俺はそんなルールが大嫌いだった。
実力がすべてのスポーツ世界でなんでそんなルール守らないといけないんだと疑問に思っていた。でもエイダの今の様子だとすると、この冒険者の世界でもそのルールはあるらしい。
「……ふふ、随分自信たっぷりだな」
「自信はあるが、時間がかかるんでできれば省略させてもらいたいんだが」
「いや、こればかりは譲れないな。適性試験は受けてもらう、私自身の目で君の実力をはかりたい」
「マスター、まさか……」
「そうだ。まぁ、ついてこい」
エンリケがカウンターから出てきて、俺達を別の部屋へ案内した。
適性試験とか億劫だな。確かに俺も初めてこのギルドへ訪れてメンバーカードを発行してもらう際には、適性試験を受けた。
今となっては懐かしい思い出だ。適性試験というのは、魔力測定と称してオーブに手をかざしたり、試験官と模擬戦闘したりしたんだっけ。
待てよ。ってことは、適性試験ってけっこう長いんじゃないのか。
「安心しろ。試験は模擬戦闘だけにしてやる」
「え? あぁ、それは……」
俺の考えをくみ取ったようだ。でも模擬戦闘の相手は誰になるんだ。
「ここが試験会場となる」
案内されて入ったのは大きな円形の戦闘訓練場だ。学校の体育館位の広さはある。
二十年前の懐かしい思い出がよみがえる。確かにその時も俺はここで模擬戦闘をした。
「あれ? マスターじゃないですか?」
突然男の声が聞こえた。訓練場の端の方で訓練をしていたらしい金髪の戦士がこっちに近づいて来た。長い槍を持っている俺と同じくらいの身長の戦士だ。
「おぉ、テリーか。今から適性試験を行うんでな、悪いが外してくれないか」
「え? 適性試験……誰がやるんです?」
エンリケが黙って俺の方を指差した。テリーは俺を不審な目で見た。
「……あんた新人か? 名前は?」
「ゴーイチ・モリタだ」
「ゴーイチ? 変わった名前だな。職業はなんだ?」
「一応……狩人をしている」
「一応ってどういうことだ? 自分の職業くらいはしっかり把握しておかねぇとな。マスター、本当にいいんですか?」
「心配するな。それに彼は新人ではない。メンバーカードはすでに持っていた」
「え? でも、さっき適性試験を行うって……」
エンリケがここで咳ばらいをした。さてどう説明するのやら。
「彼は異国から来た男でな。そのメンバーカードが旧すぎて、更新しようにも機械のトラブルでできなくなったんだ。そこで例外的に、ここで改めて適性試験を行うことにした」
「……なるほど、わかりました。じゃあゴーイチ、こっちに来い。俺が相手だ」
「ちょっと待て、テリー! お前ではない」
「え? 何言ってるんです? 適性検査をするんでしょう?」
テリーが慌てだした。後ろにいたシモーヌが言うには、本来適性試験はランクBの戦士であるテリーと実戦テストを行う流れになっている。でもエンリケがかぶりを振った。
「さっきも言ったが、今回の適性試験は例外的な処置なんだ。ゴーイチの相手はこちらで手配する」
「例外的処置? 適性検査は俺が行うって流れでしょう? それともそこにいるゴーイチとやらは、ある程度実力が知れているんですか?」
「まぁ……そうだな……」
「少なくとも俺が見るに、そこまで強そうには見えませんね。まぁ体格はいいですが」
「なんですって!? 言わせておけば……私はゴーイチがキングオークを倒したのを見たのすよ!」
「き、キングオークを!?」
シモーヌがすかさず反論してきた。あまりムキになるなよ。
「それにキングオークだけじゃなく、鎧の魔物もね」
「鎧の魔物? 例の鍾乳洞に鎮座していたっていう謎の魔物か?」
「そうだ。だが……実際その目で見たのはシモーヌだけでな。だから改めて、私自身の目で彼の実力をはかりたいんだ」
「なるほど。確かにそれは納得します。しかし!」
テリーが槍を地面に強く突いて抗議した。
「適性試験の相手は俺ですよ! こればかりはいくらマスターが反論しても譲りません!」
「ふぅ……仕方ないな」
エンリケはため息をついた。この感じだと説得できそうにないな。
「ゴーイチ、すまない。本来違う相手をすすめるはずだったんだが」
「気にするな。俺の相手は誰でもいいよ」
「おう、言ってくれるじゃないか! 気に入ったぜ、お前は特別に手加減なしに試験をしてやる」
「ちょ、テリーさん? 適性試験で全力を出すのはやめてください」
「ファティマは黙っていろ。先輩への礼儀がなってないような相手には、痛いほど現実を思い知らせてやらないとな」
先輩への礼儀か。やれやれ、この世界でも先輩後輩の上下関係を重視するのか。
やはり冒険者家業は窮屈だ。俺には向いてない。
「現実を思い知るのはあなたのほうよ」
「な、なんだと? お前達そろいもそろって……」
「おい、試験の前に喧嘩はやめろ! シモーヌも余計な口を挟むな」
シモーヌも意外とけんか腰だな。もしかして俺と気が合う性格か。
いや、余計なことは考えないようにしよう。とにかく試験をさっさと終わらせることに集中だ。
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