第19話 伝説の勇者の銅像
そういえば、鍾乳洞でシモーヌ達が言っていたな、ヤドゥークリ草採取の依頼を受けに来たって。
さっきバッカスから報酬をもらったが、異世界でのスローライフを楽しむためには大量に金が必要になるかもな。
セリナが戻るまでには時間がかかるかも。ギルドに行けばちょうどいい時間つぶしになる。
「……じゃあ、ギルドに行ってみるか。アドバイスありがとう」
それから『花鳥の集会所』を出て、大通りを北へ向かった。このまま真っすぐ行けばちょうどギルドになる。出かける前に念のためバッカスにギルドまでの道順を聞いたが、予想通りだった。
ギルドまではけっこうな距離がある。俺は馬車に乗って向かうことにした。
ギルドへ向かう途中、馬車の中から町のあちこちを見た。俺が地球にいた二十年の間、この世界では百年経ったが『キースラーの町』の様子はそれほど大きく変わったところもない。ところが、ギルドの前にある噴水広場で興味深いものを見つけた。
「あの銅像は?」
屈強な男の戦士の銅像が噴水広場の中央に建っている。銅像の下の台座部分にこう刻まれていた。
『邪竜ディンフォースを討伐せし偉大なる勇者レイをここに称える』
「……勇者レイ……」
「おや? お客さん、あの銅像がそんなに珍しいんですか?」
「あぁ……俺はこの町出身じゃないんでね……」
「異国から来られたんですか? でしたら私から説明しましょう。あの銅像は百年前にかの邪竜ディンフォースを倒した伝説の勇者レイ様の銅像ですよ。そういえば……なんとなくあなたに似ているような……」
「……はは、そう言われたら光栄だ」
似ている、か。俺は笑ってごまかした。それにしてもあの銅像の再現度は凄いな。
「あ? すみません、もうギルドに着きます。本当なら、もうちょっと勇者レイ様の武勇伝を聞かせたかったんですが……」
「気にするな。それより案内ありがとう」
御者に運賃を渡して、俺は馬車から降りた。ちょうど目と鼻の先にギルドの入り口があった。『キースラー西部ギルド』と書かれた看板だ。名称も変わってないんだな。
中に入ると、意外にも大勢の冒険者達でにぎわっていた。
昨日と同じ服装だったら、俺は完全に浮いていたが、そこはセリナが今朝用意してくれた服装のおかげで、俺もすっかり冒険者達に溶け込んでいた。サイズもピッタリだ。
ここのギルドも懐かしいな。俺にとっては二十年ぶりだが、この世界では百年経過した。百年の月日で内装や構造などもガラリと変わっている。
「あら? ゴーイチじゃないの」
後ろから女性の声が聞こえた。振り向いたら、なんとシモーヌがいつの間にか来ていた。
「お前もギルドに来てたのか? 仲間達の看病はしなくていいのか?」
「ふふん、最高の治癒魔道士様が来てくれたもの。あっという間に治ったわ。あとしばらくベッドで安静にしたら、もう完治するって」
「そうか、それはよかった。で、ここに何しにきた?」
「決まってるでしょ、次の新しい依頼を見つけるのよ」
「新しい依頼? 鍾乳洞で散々な目に遭ったのを忘れたのか?」
「それは……そうだけど。私達は冒険者よ、危険なことだってのは百も承知。そうじゃないと生活できないんだから。あなたも冒険者なら、わかるでしょ」
「……冒険者か」
確かにシモーヌの言う通りだ。冒険者は危険と隣り合わせの仕事だ。命が懸かっている厳しい世界だ。現役時代もプロスポーツ選手は結果がすべての厳しい世界と言われていたが、命がかかっていない分、冒険者よりはマシだ。
最初にこの世界を訪れた時も俺は冒険者として生きていた。そうじゃないと今のシモーヌの言う通り、生活できなかった。
でも俺の考えは変わった。二十年前、サリアと一緒に過ごした生活は今でも忘れられない。二度目の異世界は冒険者としてではない。あくまでスローライフが目標だ。
「悪いが俺は冒険者になるつもりはないんでね。彼女の護衛をしなくてはいけない」
「彼女って……あなた、セリナ様の護衛係だったの?」
「あぁ、つい先日承った」
「……そう……」
なんだろうか、シモーヌがやたら落ち込んでいるように見える。なにかマズいこと言ったかな。
「そうだ、思い出した。ほら、これ」
「これって……ヤドゥークリ草? これを私に?」
「余った分だが、お前達にも分けてやるよ。鍾乳洞で言っただろ?」
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