第20話 ギルドマスター登場
シモーヌはかなり呆気にとられているようだ。
「あなたってお人好しすぎよ。馬鹿正直に守ることないでしょ」
「いいから受け取れって。元はと言えば、あんたらも採取しようとしてたんだろ?」
「……それはそうだけど」
かなりためらっているな。でも彼女の言う通りかもしれない、確かにお人好しすぎかもな。
「わかった。そこまで言うなら、いい」
「あぁ、ちょっと待って!」
ヤドゥークリ草を袋の中に入れると、シモーヌが手で制した。
「おいおい、なんだよ? 欲しいのか欲しくないのか、どっちなんだ?」
「悪かったわ。欲しいわよ」
スッキリしない気持ちだが、ヤドゥークリ草を少しだけシモーヌに手渡した。
「ありがとう。でもさ……その前に一つ条件があるのよね」
「条件?」
「結論から言うと……私と……その」
かなり言いづらそうな顔をしている。まさかと思うが、俺は嫌な予感がした。
「おい、アレはヤドゥークリ草じゃないか!?」
突然別の男の声が聞こえた。ギルド内にいた冒険者の一人が、俺の持っているヤドゥークリ草を発見した。
「おぉ、本当だ。ヤドゥークリ草だ!」
「まさか……あんた西の鍾乳洞の奥で見つけたのか!?」
「なんだよお前ら。言っておくが、あげないぞ」
気づけば俺は注目の的になっていた。
「なぁ、西の鍾乳洞にずっと鎮座していた変な鎧の魔物がいただろ?」
「いたけど、もう俺が倒したから心配ないぞ」
「た、倒しただって!?」
全員が一気に俺に注目しだした。この冒険者達もスネイル達と同様、あの魔物に挑んだのか。
それにしてもこの反応だと、ますます目立ってしまうな。確かに歯ごたえのある魔物だったが、まさかここまで注目されるとは。
「あんたが……まさか一人で倒したって言うのか?」
「嘘だろ!? 俺達の攻撃なんか、まるで通用しなかったんだぜ!?」
「ありゃ新種の魔物だ。あんな化け物今まで見たことないのに、お前さんは一体?」
「いや……俺はその……」
「あのね、この人は私の新しいパートナーなの!」
「ぱ、パートナー!?」
突然シモーヌが変なことを言い出した。まずいぞ、なんだかややこしいことになってきた。
「異国の地から来られた人なのよ。私達の常識では考えられない、凄いスキルや能力を持っているわ」
「おい、勝手なことを……」
確かに半分言っていることは正解だけど、ここで俺の素性についてあれこれ詮索されたくない。なんとか誤魔化さないと。
「悪いが、俺は忙しいんでな。このヤドゥークリ草を持ってカウンターに……」
「確かにこの辺じゃ見ない顔だ。名前は何というんだ?」
「異国って一体どこの国から来たんだ!? それにあんたの戦闘職は!?」
「剣士というか、斧使いにも見えねぇ。背中に背負っているのは棍棒か!?」
「冒険者ランクはAか? それともS?」
「なぁ、シモーヌ。もっとこの男について、詳しく教えてくれよ!」
「おい、お前ら……」
まずい。完全に注目の的になってしまった。俺は思わずシモーヌを睨んだ。
「言っておくけど、あなたの噂は朝から広まってたのよ」
シモーヌは小声で俺に囁いた。
「朝から? まさかお前達が……」
「違うわよ。キングオークの死体が森で発見されて、誰が倒したんだってもっぱらの噂だったわ。この界隈じゃ、あんな強敵倒せる戦士なんてそうそういないから」
シモーヌが言うには、森で変な格好をした人間が石を投げて、岩壁を破壊したのを誰かが見たらしい。完全に俺のことだ。
しまった。昨日は久しぶりにこの世界に来て、完全に気持ちが浮かれていたんだ。誰かが見ていても不思議じゃないが、そんなこと気にもとめなかったな。
それよりこの騒ぎをなんとかしないと。目立ちすぎるのはよくない。俺は二度目の異世界は静かにひっそりと暮らしたいんだ。二日目で早くも雲行きが怪しくなってきたな。
「静かに! 一体何の騒ぎだ!?」
ギルド内が一気に静まり返った。気づけば、カウンターの前に一人の屈強な外見をした男が立っていた。
白髪でツーブロックの髪形、豪華な革製のコートまで羽織っている。年齢的には老人に見えるが、ただならぬ風格だ。
「ギルドマスターのエンリケよ」
「おや、君は……?」
「マスター! 聞いてくださいよ。この男が西の鍾乳洞で、例の魔物を退治したって言うんですよ」
「あぁ、鎧の魔物のことか。まさか君が?」
「この男がどや顔で言ってましたぜ!」
どや顔とか言うなよ。するとエンリケは俺の目の前まで近づいた。
近づいてみたら俺より背が高い。おまけに顔に傷跡もある。
さすがギルドマスターとだけあって、底知れぬ気の持ち主のようだ。俺の顔をじろじろと見出した。
「……君は新人かね? 見ない顔だな」
「新人じゃない。異国から来たんだ。これを鑑定してもらいたいんだが」
俺は適当に誤魔化した。さすがに異世界から来たとは言えない。もちろんどこの国とも明確には言わない、ぼろを出さないためにも。
「まぁいい。ヤドゥークリ草の採取を達成したんだな。ご苦労だった、カウンターに持っていけ」
「ありがとう。それよりこいつらを……」
「あぁ、そうだな。お前達も他人の功績ばかり気にしてないで、さっさと依頼を受けろ。なくなってしまうぞ」
エンリケが両手をパンと叩くと、集まっていたギャラリーも散った。なんだかんだでギルドマスターの影響力は凄いな。
「すまなかったな。西の鍾乳洞に出た新種の魔物のことは、俺の耳にも入っている。奴の強さは噂以上らしい」
「それにキングオークの件もね」
「なに? まさかそいつも君が……?」
俺は黙って頷いた。
「なんということだ。道理でやたら注目されるはずだ。腕は確かなようだな」
「お褒めの言葉ありがとう。それよりこれを……」
「あぁ、すまなかった。おいファティマ!」
「はい! 今行きます!」
エンリケが女性の名前を叫ぶと、カウンターから一人の女性が来た。ギルドの受付嬢だ。
「ヤドゥークリ草ですね。ありがとうございます、それでは今から鑑定いたしますね。少々お待ちください」
受付嬢がヤドゥークリ草を持ってカウンターの奥の部屋へ入った。しばらく時間がかかりそうだから、一旦どこかで落ち着こうか。
「ねぇ、ちょっと……」
「あぁ、シモーヌか。どうしたんだ?」
「どうしたんだ、じゃないでしょ。さっきの話の続きよ」
「さっきの話……なんだっけ?」
「だから! あなたとパーティーを組んでほしいって言ったじゃない!」
「……え?」
いつもご覧いただき誠にありがとうございます!毎日ご覧になっている読者様には心から感謝いたします。
この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。
https://twitter.com/rodosflyman




