夏休みも明けて
【主要人物紹介】
ラウ
剣神シンから転生した少年。
魔法学校の二年生。
ナタリー
ラウの幼馴染。
一緒に入学するために王都へ来た。
ビスタ
ユーフィリアスの長女で王女。
ラウとナタリーの同級生。
「おはよう!ラウ!」
「おはよう、ナタリー」
夏休み明けの始業式の朝も
ナタリーの明るい挨拶と笑顔で始まった。
本当にありがたい。
ラウにはとても有意義な夏休みだった。
ラウの人生は「人生を楽しむ」という
概念的な目標だったが
具体的な目標ができ、やる事が見えた今は
なかなかに晴れやかな気持ちだ。
そこに、さらに太陽の様な笑顔。
ラウの心は澄んだ夏の青空のようだった。
「おはよう、ふたりとも。」
「ビスタ!おはよう!」
「おはよう、ビスタ」
友達であり、姪っ子でもあるビスタも
負けずに明るい笑顔で挨拶してくれる。
「「おはよう!!」」
「「「おはよう!」」」
アストンとオルフェがやってきた。
彼らと会うのは久しぶりなので
どこか懐かしさを覚えた。
アストンは少し背が伸びたように感じる。
さらに日焼けした肌は、
逞しさを感じさせた。
オルフェは少し髪が伸びたようだ。
金色の美しい髪が
跳ねながら後を付いてくる。
「夏休みはどうだった?」
ナタリーが話しかける。
ラウとビスタとは
ほとんど毎日会っていたので
アストンとオルフェに向けた質問だ。
アストンが答える。
「めっちゃ親孝行してきたよ。
普段世話になってるからね!」
学校の学費と寮費はかからないとはいえ
田舎町の両親が王都での生活を
金銭的に支えるのは大変だろう。
「親孝行出来て良かったね!
なんか逞しくなってるし!
オルフェは?」
「私だって親孝行してきたわ!
とっても喜んでくれてたもの。」
二人とも親孝行が目的だったようだ。
しっかり達成できて何よりだった。
「今日からまた学校もがんばろ!!」
ナタリーが主席の顔を覗かせた。
「おう!」
「うん!」
「当然!」
返事は様々だったが、さすが1組。
やる気も素晴らしい。
「はい、みなさんお久しぶりです。
夏休みは有意義に過ごせましたか?
みなさんの元気な顔を見れて
安心しました。
今学期もしっかり学んでいきましょう。」
スカーレット先生の挨拶で
始業式が始まった。
生徒達の表情は
やる気に満ち溢れている生徒、
まだ休み気分が抜けない生徒、
と様々だった。
しかし一組の生徒は皆、
やる気がある側の顔をしている。
ラウもその一人だった。
転送魔法もあと少し、
他にも様々な魔法を覚えたい。
そして隣のナタリーも
やる気に満ち溢れている。
ソフィアの指導が
いい影響を与えているようだ。
そんなことを考えていると
式は校長イリスの挨拶になっていた。
「今日からまた頑張って。」
相変わらずぶっきらぼうな
挨拶だった。
それからの日々も充実していた。
基本魔法学では目標の実現のため
どんな魔法が役に立つのか
さらにしっかり聴くようになったし
魔法精神学では癒しの魔法の
初歩を学び身に付けた。
魔装具学の授業では
世にどのような魔装具があるのか、や
基本の魔装具の作り方について学んだ。
ナタリーは魔力でオンオフ出来る
電気の照明の様なものを作り
周囲を驚かせた。
この世界には電気がない。
明かりは火が一般的で
魔法使いは杖を光らせていた。
日本で暮らした記憶がある
ラウならまだしも、
ナタリーが照明を思いつくことに
ラウはとても感心した。
しかもかなり明るく、実用性もある。
他の生徒も同じ様に感心したようで
ナタリーは作り方を聞かれていたが
他に成功した者はいなかった。
やはり細かい魔力の調整が必要なようだ。
基本戦闘術でも
ラウは後衛の動きを学んだ。
元々剣士であるラウ、正確にはシンは
前衛の動きが身体に沁みついている。
それによって戦闘時に
直接問題になる事はないのだが
後衛の動きを後衛の立場で考え
理解することは、
前衛の時にも役立つだろう。
どの教科も今までよりも
深い所が見えてきている気がする。
あらためて目標の大切さを
実感していた。
ある休みの日、
ラウは一人で城にいた。
ナタリーはソフィアの元に
修行に行っているし
ビスタは赤竜トラベルに出勤だ。
ラウはこの機会に
引っかかっていた問題を解決しようと
城を訪れたのだった。
とはいっても転送陣で
国王執務室に来るだけなので一瞬だ。
目的の人物はそこにいた。
「おお師匠!
おはようございます。」
「国王様、おはようございます」
珍しく国王様と呼んだからか
机の資料から顔を上げ、
ユーフィリアスはむずがゆそうに笑った。
「やめてくださいよ。
今日はどういったご用件で?」
「国王に折り入ってお願いが」
国王は怪訝そうな顔で言う。
「なんでしょう?」
「俺と本気で立ち会ってくれ」
まだ納得いかないような表情だ。
「どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味だ」
ここにきてようやく理解してくれたようで
国王の目には力が宿ってくる。
「私は強いですよ?」
「わかってる」
国王の前に勇者であるユーフィリアスが
強いのは周知の事実だ。
剣の腕だけとっても
大陸で並ぶものはいないだろう。
なにより剣神シンの一番弟子だ。
「いいでしょう。
訓練場に行きましょう。」
「ありがとう」
恐らくラウの真意を
受け取ってくれている。
さすが一番弟子だ。
ラウは不安と期待を胸に
訓練場に向かうユーフィリアスの
後についていった。
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