ユーフィリアスとの戦い
【主要人物紹介】
ラウ
剣神シンから転生した少年。
魔法学校の二年生。
ナタリー
ラウの幼馴染。
一緒に入学するために王都へ来た。
ビスタ
ユーフィリアスの長女で王女。
ラウとナタリーの同級生。
ラウは自分の正確な強さを知りたかった。
正確に言うと、シンに比べて
どの程度の力があるのか知りたい。
身体の成長や自らが振った剣筋等
見えているものからすると
恐らくシンの半分ほどの力は
戻っていると思っている。
であれば、ユーフィリアスと
ほぼ互角に戦えるはずだ。
シンの弟のセルマに稽古を付けている時も
まだまだセルマではレベルが違う事を
感じていた。
ラウは剣技においても
シンを超えたいと思っていた。
魔法が使いたくて転生させてもらったが
剣を捨てたいとは全く思っていない。
それどころか剣はラウの戦闘の根幹だ。
なにより、シンの人生の
ほぼすべての時間を、剣の上達に捧げた。
ただーーー
シンには相棒がいた。
デュランダルだ。
そしてその剣は今
ラウの手元に居てくれている。
敢えてランク分けするのであれば
デュランダルは間違いなく
アーティファクト級であり
ラウは使っている剣において
チート級である事は疑いようもない。
それなのに、黒竜を仕留め損ねた。
しかもユーフィリアスと
同時に攻撃したにも関わらず、だ。
シンであればあり得ない事だ。
シンがデュランダルの一撃を当ててなお
活動出来たのは魔王のみだった。
考えられることはラウが弱すぎるのか
これは本当に信じられない事だが
黒竜がデュランダルで斬れない程
硬すぎるか、だ。
どちらにせよラウは
今より強くなる必要に迫られていた。
そしてそれは恐らく、
ユーフィリアスも同様だった。
勇者王であるユーフィリアスは当然、
物理的な国難、他国との戦争や
敵の襲来などで力を示す必要がある。
『強さ』が王である根拠だからだ。
「いきますよ。」
ユーフィリアスは勇者の剣を
ラウは父の剣を構えた。
ラウ達のレベルでの戦いにおいて
いわゆる木刀の類は
相手の命を守る事において
意味をなさない。
たとえ拾ったばかりの木の枝でも
相手の首を落とすことが出来るからだ。
よってラウ達の戦いは
致命的な一撃を与える事を
勝ちとしていた。
魔力を学んだ今なら良く分かるが
斬られる瞬間に魔力で硬化させた
身体で受け止める。
それが魔力による防御がない場合に
致命傷になる一撃であれば
負けを認めるわけだ。
「それではお願いします!」
声と共にユーフィリアスが斬り付けてきた。
ユーフィリアスは勇者だ。
人類の危機から人類を守るために
神が遣わす選ばれし者、それが勇者だ。
剣の他に光の魔法やスキルを使える。
もちろん勇者の強さの中核に
剣技がある事は間違いないが
それは勇者の強さの一部でしかない。
戦闘力だけとっても剣はただの一部だ。
対してシンは剣士だった。
剣が強さの全てだった。
よって、こと1:1の戦闘においては
シンの方が強かった。
負ける可能性がないほどの差だった。
そしてラウは今、シンの力の半分程度まで
戻っていると思っていた。
シンが使っていた技の全ては
身体が覚えているままだったし
考えることなく様々な状況に反応出来た。
ラウはシンと今の自分との違いを
身体能力の違い、くらいに思っていた。
なんなら魔力操作における
身体能力の底上げは
今の方が上達しているとさえ思っていた。
しかし。
実際にユーフィリアスと数合交えると
全く勝ち目がない事が分かった。
ラウの剣技は見事に弾き返され
ユーフィリアスの剣は
致命傷ギリギリまで届いてくる。
なんとか躱してはいるが
いくつかは届いてしまっている。
ラウがシンの力を戻せてないのもあるが
ユーフィリアスは
明らかに強くなっていた。
数合打ち合っては致命打を受ける
という事を何度か繰り返した後
ユーフィリアスが言った。
「師匠、どうですか?
私も捨てたものではないでしょう?」
感心していたラウは素直に返す。
「今の俺では勝てないな」
「まさか!本当ですか?」
「今の戦いは全て全力だ」
ユーフィリアスが驚いた表情で
動きを止める。
「本当なんですね。
遺言を守った甲斐がありました。」
ラウはシンの遺言を思い出す。
「ユー坊、励めよ」
ユーフィリアスは
遺言を守ってくれていたのだ。
目頭が熱くなったが何とか耐えた。
「師匠が倒れた後も
私はずっと鍛えてきました。
師匠がいない今、私が剣技でも
世界一だと証明することが
師匠への恩返しだと思ったからです。
王として力を示す必要もありました。
でも何より剣で誰かに負ける訳には
いかなかったのです。」
ユーフィリアスは
いつになく真剣な表情で続ける。
「剣神の一番弟子として!!」
ユーフィリアスの言葉は
ラウの心のシンの部分を揺さぶった。
耐えていた涙が溢れた。
「ユー坊」
「はい。」
「馬鹿かお前は。
証明する必要などない。
お前は俺の揺るがぬ一番弟子だ」
「はい。」
「剣技も、そして精神も。
今日はそれを確信した」
ユーフィリアスの顔を見る。
「よく励んだな、ユー坊」
その瞬間ユーフィリアスの目からも
涙が溢れだした。
師匠と弟子の会話はそれで充分だった。
ラウも感慨に耽っていたが
いつまでもこの状態ではいられない。
ラウはユーフィリアスに言った。
「だがユー坊」
「はい。」
「今の俺は弱すぎる」
「そんなことはないと思いますが。」
「いや、だめだ。
今後もこうやって鍛えてくれないか?」
「もちろんです、師匠。
私に出来る事ならなんでもします!」
剣技のレベルアップには
達人との手合わせは至上の経験値だ。
「それでは頼む」
「分かりました。」
覚えたての回復呪文で傷を回復する。
まだラウの回復呪文では
全快することが出来なかった。
もしかしたら、魔法使いの回復魔法では
これが限界なのかもしれない。
知ってた方がいい。
ラウはユーフィリアスに礼を言うと
次の修行の約束をして、ある場所に飛んだ。
校長室に転移すると、
ちょうどイリスがいた。
「なに?なんかあった?」
相変わらずぶっきらぼうだ。
「イリス、この傷治せるか?」
「やってみる。」
その代わり話は早い。
余計な話をする必要がないからだ。
「どしたの?これ」
癒しながらイリスが聞いてくる。
今のラウはイリスの弟子だ。
本来もっと丁寧に話す必要がある。
しかしイリスはシンのモードで
話しかけてもまったく意に介していない。
ラウの姿が見えてないかと思う程だ。
「ユー坊と手合わせした」
「バカだね、勝てるわけない。」
ラウはいい勝負が出来ると思っていたので
イリスが言いきった事に違和感を覚えた。
「もう少しいい勝負が
出来ると思っていたんだが」
「そんなわけない。
勇者、そんなに甘くないよ。」
話しながらも、回復してくれる。
傷はほとんど元通りになっていた。
「ありがとう」
「ん。」
まずは礼を言った。
「あのね、ラウ。
今の君じゃ全然話にならない。
シンはもっともっと強かったよ。」
「それはそうだが
大分取り戻したと思っていた」
「全然。
シンならあんな竜なんて逃がさない。」
「ぐ・・・」
確かにそれはラウも感じていた。
こうして人から改めて言われると
また実感する。
「剣の強さとはもっと違うものも。
まだまだ話にならない。」
「何が足りない?」
「私が教えることじゃない。
自分で気付いて。」
「分かった」
「今日は魔法の修行は?」
「いややめておくよ」
少し考えたかったラウは
イリスに回復してくれた礼を言うと
寮の自分の部屋に戻った。
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