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第?話 未来予測?(下)

クロスガルフォースには、生徒達のために訓練場が学内に作られている。許可をしっかりと取れば誰でも利用可能だ。

無論、その許可がなかなか下りないのだが。


アズベルとレミアの訓練は、いつもは森の広場で行われる。  


しかしクロスガルフォースには、闘魔祭<クロスフェスタ>という学園最強を決める大会が存在する。その大会での雰囲気に慣れるために、たまに訓練場で行う時もある。 


今日は訓練場で訓練をする。いざ来てみると、一枚の張り紙がしてあった。

今日は、アズベルとレミアの貸し切りとなるようだ。


「よし。さあ、レミア。訓練を始めようか!」

嫌な予感を感じつつも、アズベルは訓練を開始した。


まずはいつも通り、魔力制御の練習から始める。

レミアが自分の魔力を使って防御障壁を張り、そこへアズベルが風の砲弾をぶつける。

その砲弾を防護障壁で一定時間防ぎ続けるだけの簡単な訓練だ。


しかし、これが案外難しいのである。 砲弾を防ぐには、防護障壁の破損した部分を張りなおさなければならない。

だからと言って、全部張り直していてはとても魔力がもたないだろう。


そこで、自分の意図した部分だけを修復できるだけの魔力制御能力が必要になる。この訓練ではそれを高めることが可能だ。


「ズバァン、ズバァン、ズバァン!」

風の砲弾を休みなくぶつける。現在、一秒間に一発ずつ全方向から乱射中だ。


五分後。

「はぁ、はぁ…」

レミアに疲れが見えてきた。白い首筋には汗の筋が何本も通り、豊満な胸が呼吸に合わせて上下している。


(そろそろかな…)

レミアの疲れ具合を見ながら、残り時間を設定する。


「あと、三十秒ー!少しずつ砲弾の速度上げていくよー。」


残り十五秒。砲弾は二秒間に三発ずつ。「ズバァン!ズバァン!ズバァン!」「もっと集中しろ!」


残り五秒。一秒間に二発ずつ。


「ラストスパートかけるよ!」

「ズババババァン!…」


残り時間ゼロ。「OK!終了だ!」


「バババ…ピタッ。」

一瞬にして砲弾が止む。


「はぁ、はぁ…」

レミアは突然止んだ砲弾に驚きながらも、しっかりとその場に立っていた。だが…


「グラリ…」


「レミアッ!」

倒れかけたレミアをアズベルが駆け寄って支える。荒々しい息をしているが重体ではなさそうだった。


(疲れ過ぎたんだな…まったく、いつも本当に良くやるよ、お前は。)

アズベルはレミアを床に寝かせ、熱中症患者にするような処置を施した。レミアの頭だけは膝枕で支えておく。 


胸元を緩ませ、服を脱がす。いけない気持ちになりそうなのを我慢し、レミアを楽にするためだけに動いた。


(しかし、いつもはあれで倒れることはないのにな…)

不思議に思いながらも、取りあえずレミアに治癒魔法をかける。手を握り、を流し込む。


「ん…ぅあ…」暖かな光がレミアを包み、レミアからは声が漏れた。


(グファッ!)

壊れそうになる理性を必死に守る。


(早く目を覚ましてくれよ…)

レミアの容態と理性の崩壊に対する不安が入り混じっていた。



      ◆◆◆



身体が一瞬暖かいものに包まれたかと思うと、治癒効果を持った魔力が流れこんできた。

それはレミアの意識の覚醒を促す。 暗闇の中でレミアは後頭部と手に温かみを感じた。


「…あ…う…あ、れ?…」

目を開けると、アズベルがこちらを覗き込んでいた。服は脱がされており、手も握られている。

胸元は今にも零れ落ちそうだった。


「なっ、なっ、なっ…?!」

レミアは顔を真っ赤に染めて、胸元を隠しながら起き上がろうとする。


「あんたねぇ!人が倒れてるのを良いことに…うぇ…」

頭がクラッとして立ち上がれず、その場に座り込んでしまった。


「あっ!駄目だろ、無理しちゃ!まったく、俺心配してたんだぞ。」

(えっ?…心配していた…?)

レミアはふと思った。そう言えば、自分は倒れたあと気絶していただけだ。


ここまで運んできてくれた人は?

治癒魔法をかけてくれた人は?

楽にするために服を脱がしてくれた人は? 

そう一人しかいないじゃないか。


一人の人物にたどり着いたレミアは、今にも爆発しそうなほどに顔を真っ赤に染めて恥ずかしがった。


(ア、アズが私のためにここまでしてくれた!凄く嬉しいけど…さっき私怒っちゃった…今すぐ謝りたいけど、服を脱がしたのなら私の体も全部見られちゃってるわけで…あぁ~!恥ずかしいよぉ~!…)

悶々とした気持ちを抱えているレミア。


「まあ、無事ならそれで良かったよ。」


(あ、あぅ…アズ…アズ…)

「…そ、その、ありがとう…ね…」

レミアは小さな声で、それでもしっかりと礼を述べた。


「良いってお礼なんて…それよりも、どうして今日は魔力が少なかったんだ?」「あ…そ、その…」

レミアは目をそらして慌てている。


「いつもより明らかに少なかったぞ。どうしてだ?」

アズベルはレミアに詰め寄った。


「練習してたのよ…」

レミアは小さな声で呟いた。


「聞こえないよ。」

「練習してたのよ!毎日隠れてこっそりと!」

大きな声でレミアは叫んだ。


「私はアズベルにいつも教えて貰ってばっかりで、アズベルの邪魔になってるんじゃないのかって不安だったの。だから、少しでも早く追いつけるように秘密裏に特訓してたの!」

レミアは目の端に涙をためアズベルを見た。


「魔法を他の場所で使うなって言われてたのに破っちゃったわ…ごめんなさい…」

「…確かに俺は魔法を使うなと言った。でも…俺のことを思ってしてくれた奴を怒る気にはなれない。レミアにそこまで思い詰めさせていたとは…すまなかった。あと、別に俺はレミアとの訓練に何の不満も感じていない。」

アズベルはレミアの目をしっかりと見据えていった。


「アズ…」

「でも、無理するのだけはもうやめてくれ。俺が悲しくなる。」

「…分かってるわよ。」

レミアは恥ずかしそうに頬を染めた。


「…取りあえず、俺の魔力貰っておけよ。」

「…そうする。」

二人ともなぜか恥ずかしそうにしていた。


通常、魔力吸収・譲渡には激痛が両者に伴う。だが、アズベルはアイリスから与えられし能力によって、その魔法を使う時にだけ激痛ではなく様々な感覚を自由自在に与えられるようになっていた。


よって、アズベルが魔力の受け渡しをするときは当然激痛ではなく、楽にできるような感覚にする事となる。

そのせいで、以前にどんな行為とは言わないが、それっぽい雰囲気になったことがあった。

しかも、ほぼ毎回。つまり、二人はその時のことを思い出していたのである。


「レミア、いくよ…」

「うん…」

アズベルはゆっくりと暖かな魔力を流し込んでいく。


(身体が熱い…)

「んっ…」

ピクンとレミアの体が震え、声が漏れた。


(ぐっ…我慢だ…)

アズベルは理性を必死に保ちながら、魔力を流し込み続けた。




      ◆◆◆




「…もうこのくらいで十分だろ。」

結構な魔力を流し込んだはずだ。アズベルはゆっくりと送る魔力を減らしていく。


「待って…」

朦朧とした表情で、レミアはアズベルの手をつかんだ。


「レミアッ?!」

(また前回と一緒か…なんとか耐えきれるといいけど…)

アズベルは毎回のごとくこの艶めかしい淫魔と戦っている。


「まだ足りないの…アズ…もっとちょうだい…」

レミアはアズベルの首に手をかけた。グイッと引っ張り、アズベルを引き寄せる。レミアはいつもより行動が大胆だった。

 

アズベルはレミアに対して悪い印象は持っていない。むしろ、好きと同じくらいの気持ちだ。

小さい頃からの仲で、恋愛感情に近いものを抱いたこともあったのかもしれない。

そんな相手にここまでされて、アズベルは耐えられるはずがなかった。


(レミア…ちょっとくらい理性飛んだっていいよな…)

アズベルの上にレミアがのしかかり、胸元も大きく開けている。アズベルとレミアの顔がだんだんと近づいていき…


「あー!居た居たー!アズベルー!」

赤髪の少女、カリナだった。


「っ?!」


「やっぱりここに居たか―。探した…なっ?!な、なんでレミアがここに居るんだ?そ、それよりも...何やってんだよぉ!」

「いや、その、これはだな…魔力をレミアに渡していただけで…とにかく!何もいやらしい事なんてしてないから!」

アズベルは必死に否定する。


「ちょっとアズ…早く続きしようよ…」レミアがアズベルに迫った。


「あっ!レミアッ?!」

「な、なんだと…お前らぁ!」

カリナはワナワナと震えている。


「やっぱりいやらしいことしてるじゃんかぁ!」


バキッ!


「グフッ!」

アズベルは倒れ込む。


夕闇に溶ける学園に、鈍い音と男の悲鳴が響き渡った。

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