第?話 未来予測?(上)
魔法のある世界。そんな世界に憧れたことは人であれば一度はあるだろう?
魔法を使って手から炎を出したり、空を飛んだり、片腕を前に突き出して「闇の炎に抱かれて消えろ!」等と叫んだりしたいと思う。
それは人の夢だ。永遠の夢だ。…何?最後のは知らない?お主、伝説の名言を知らないというのか!まったく、最近のもんは…!
これはそんな人の夢を叶えるために書かれた物語。別の世界を舞台にした物語。魔法学園に通う男の子の物語。
◆◆◆
(やあ、皆さん!こんにちは。話は全てアイリスから聞いたよ。なんでも、この世界へ見学に来たんだってね!)
アズベルはブツブツと小さな独り言を呟いている。
周りを通る生徒達は、変態を見るような目でアズベルを遠巻きに見ていた。
(ああ、ちなみにアイリスはこの世界を治める女神なんだ。俺はそんなアイリスの補佐をしている。アイリスが女神だから、俺は世界の管理者っていう位置づけだ。)
なおも独り言は続く。ついに魔法狂いの頭プッツン野郎にでもなってしまったのだろうか。
(まずは自己紹介からいこうか。俺はアズベル。現在十五歳で前世の記憶がある。即ち転生者だ。そっちの世界の事もある程度は理解している。この世界ではマルトス王国の貴族、フォスター家の次男で、現在は王都にある魔法学園、クロスガルフォースに通っているんだ。)
「ちょっとアズ!」
「なんだ?」
(この娘はレミア。同じくマルトス王国の貴族、ハーディー家の三女。お嬢様ってこと。まあ、こいつにお嬢様って言葉は似合わないけど。)
そう言い、アズベルはにやけた。
(あと、赤髪のカリナって娘がいて…)「何こっち見てニヤニヤしてんのよ!」「えっ?ごめん。」
(おっと、顔に出てたか。失敬失敬。まあ、今日は俺の学校生活でも紹介しようかな。ゆっくりしていってくれ。)
アズベルは教室の隅に向かって笑いかけた。周囲の視線にはもう遠慮が無くなっている。
周りからの視線に嫌気がさしたレミアは、アズベルを引っ張って廊下へと歩き出た。
「ちょっと、レミア!一体何なんだよ?」
「あんた、あの視線を見て何も分からないの?」
「はあ?視線?俺はただ故郷の人達にだな…」
「故郷?何のこと?」
「だから…」(はっ!だめだ!)
アズベルはそこまで言いかけて思い留まった。
「…グフン…何でもない。」
アズベルはなるべく平静を偽って言ったのだが、逆にレミアは不思議そうな顔をし首を傾げた。
首筋を垂れる汗を感じながらアズベルは必死に話題を変える。
「そ、それよりもさ!俺を呼んだ用件って何なんだよ?」
「なーんか怪しいけど…まあ良いわ。」レミアは疑うのを止めなかったが、なんとか納得したようだ。
しかし、落ち着いたのも束の間、すぐさま怒気を帯びた。
「それよりも…アズ!どうして言い返さないのよ!」
レミアは怒っている。魔力が身体から漏れ出し、周囲を紅く染めた。
「はぁ?何の話だ?」
アズベルはレミアを気にすることもなく、意味が分からないといったような顔をする。
レミアはそんなアズベルを見て、少し毒気が抜けたようだった。
「何のって…あんたさっき廊下で馬鹿にされてたでしょ!」
「え?…なんだ、見てたのかよ。しかし、お前も優しい奴だなぁ…お節介がたまに過ぎるけど。」
「別にいいじゃない!それに、私はお節介じゃないわ!アズだからこそ気になるの…ってなに言わせるのよ!」
レミアは一人ツッコミをした。その後、頬を染め震えながら顔を背けている。
「だがなぁ…確かに腹は立つけど、世の中無視が一番ってこともあるから。」「…何言ってるの!」
レミアは恥ずかしさではなく今度は怒りで頬を染め、アズベルの胸元へ詰め寄った。
「まあまあ。そんなことよりもさ、今日もするんだろ?魔法の練習。」
◆◆◆
アズベルは生まれた時からずっと魔法と剣技の訓練を積んできた。
子供の頃はその高度な能力で有名になりかけたが、アイリスの補佐として旅にでてからは意図的に人には実力を隠すようにしている。
行動に制限が出てしましうようでは補佐として不利となるからだ。
そして、魔法学園入学後もアズベルは実力を隠していたが、レミアにとある出来事でその能力を知られてしまった。
それ以来、レミアはその出来事の事もありアズベルに魔法を教えてくれと頼んできていた。
最初の頃はアイリスの補佐のこともありすべて断っていたが、途中でアイリス直々に、「信頼できる人物を一人は作っておいた方がいい」と言われたため、アズベルは渋々承諾することとなった。
その後訓練を始めたのだが、思っていたよりもレミアは魔法が下手だった。
そのため、ここ最近はほぼ毎日訓練に励んでいる。
また、最近剣技も教え始めた。アズベル自身もレミアを教えるにあたって、忘れていたことや新しい発見がよくあるので、訓練に不満は感じていないらしい。いや、一つだけあった。
◆◆◆
(今日も二人きりでの訓練なんだろうなぁ…別にレミアに魔法を教えるのが嫌という訳じゃないんだけど…)
アズベルは、少し深刻そうな顔をしてため息をついた。
(元々俺とレミアは幼馴染だけあって、昔はどんなスキンシップをしようとも特に何も思っていなかった。でも、お互い成長した今に、昔の感覚でやられるとな…)
アズベルとレミアは四歳で知り合い、すぐに仲良くなった。
両方とも同年代の友達がいなかったということもあり、嬉しかったのだろう。
今となっては思い出すのも恥ずかしい事、すなわち、実際のカップルみたいなことも平然とできていた。
その後アズベルが旅立ってからは、もう会うこともないと思っていたのだが、魔法学園で縁あってか再会することとなった。
(レミアも年頃の女の子になって、恥ずかしがることも多くなった。それは良いことなんだけど、なぜか昔と同じように、本来恥ずかしがるべき行為を普通にしてくるからなぁ…レミアも気付いてなさそうだし、無意識のうちにやってるんだとは思うけど…)
アズベルは頬を染め、レミアの問題行動の数々を思い出す。
初めての訓練の時にレミアが、気合が入り過ぎたのかマラソン選手が着るようなスポーツウェアを着てきて、しかもピチピチのサイズで色んな部分が危なかったこと。
練習終わりに汗をかいて透けた服で、手を握りながら礼を述べてきたこと。
分かりにくそうな動作を目の前でみせてやったが、まだ分からなかったらしく、結局身体を密着させて教えたこと。
思い出したらキリがないが、途中でアズベルは耐えられずに思考を脳の隅へ追いやった。
(レミアが自覚するまで、俺の理性がもつかどうか…)
アズベルはこれまで経験したことのない強敵と戦っていた。




