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【キーワード『交渉?』が追加されました】


複数モニターの前を私は見つめていた。

必死にインカムを持って呼びかける伊勢という少年が見つめるのは女性等の姿。

一人は直江真穂という女性でプレイヤーだ。

もう一人はメリー。千代のオンラインキャラクターというものらしい。

そして彼女を使役できるのは鷹司千代では決してない。

千代という少女の最後の言葉に、伊勢は閉口し呆然とする。

それはそうだろう。

少女の言った言葉はこの、クエストと言う箱庭を解錠する鍵のようなものなのだから。

そしてその証に少女が取らなくてはならない行動があった。奇蹟的な行動である。

少女は、所詮オンラインキャラクターにすぎないと言うのに。

誰かがこのクエストをこう呼んだ。


「吟遊詩人という最低ランクのジョブ武器に、挑むにはこのクエストはあまりにも高難易度」である。


企画段階でそう言われたが強引に推し進めたのだ。

医療、特に精神療法で患者がおのれの「居場所」を形作る為に逃げ込む場所オンラインゲーム。

その場にどうにか療法を組み込めないかと医療局の方面から幾つかのクエストを創作した。

その90%以上の達成率は本当に全くできないでいた。

皆ベアトリーチェの心がない状態でのダンテへの引き渡しに満足して退場。

報酬がある。それも低くはない。

一応の満足をしてクエストを終えるがキーアイテムが手に入らない。

でも気にせず話を終えるのだ。心は救われずそのままで。

挑む者もいたが煉獄山を登山することができず、終わることがない。

皆、己の姿に恐れおののき「ゲームではないか」と馬鹿にして「リタイア」を宣言して放棄。

ベアトリーチェの心は永遠に煉獄山の山頂で待ち続けるしかならなかった。


だが私は信じている。


人との関わりが人を傷つけるのであれば、人との関わりもまた人を癒すものである。

その答えの一ケースを立証するために私はこのクエストというモデルプランに望んでいた。

画期的な打開を生むにはそれ相応のリスクが伴う。

その被験者は誰が?

私は選んだ。


そして今、その選んだ被験者から最初で最後の、メッセージが届いた。

瞑目した後、私は「彼」の親としてその言葉を聞く。。


***


困ったことに直江さんがこちらのAIシステムからロストシグナルとして発生している。

それはクエスト終了を意味するのかと当初困惑した。

けれども、違う。真穂はこんなことでどうこうするような者ではない。

そう今、隣にいる伴侶が語る。さすが、直江さんをよく知る人ではある。

私がナビをするよりもよっぽど良いのではと思ったがどうやらそれはできない相談らしい。

だが話をもとに戻すと、AIの義務として補足を最優先に動かなくてはならない。

ナビの条項の第3優先事項に表記されていることでもあるうえ、放置などすれば義務違反して

賠償を求められる。それは勘弁願いたいのだ。

車内のモニター室で、とりあえず第四画面モニターを繋げる。

これをつけると画像処理能力のスムーズさも調整されるので、いろいろと容量をくうのだから困る。

しかしより精密に状況をみてその状況を咀嚼するには必要だろう。

だが画面に映ったのは、一人の男だった。

全身黒だが頭髪だけは銀色の、芸能人で例えるなら朝の平成仮面ライダー系の俳優の顔つきだ。

ようはイケメンか。確か名前はダンテだといっていた。

ダンテが煉獄山にただひとり佇む男は、無数の屍体たちを薙ぎ払いながら駆けあがっている。

インカムの方に呼び掛けてみる。


【真穂様ぁいないんですぅかぁ??】


伴侶がドン引きしているが、まぁともかくこれがいつものスタンスだ。

ネオカじゃないかと指摘されたがこれでも配慮したんだ。男が相棒だったら嫌だろう。

しかし、時々伴侶さんが横取りするから困る。

で、マイクの向こうのいつも聴き慣れたストイックなクールな声は聞こえぬまま。

ノイズ音が氾濫しているだけだ。


「どうしようもないんですか?真穂、リタイアできませんか」

「うーん、難しいな。コンタクトがとれない」


伴侶さんがかなり深刻に画面を見つめている。

ダンテの劣勢が直江さんに重なって見えるかのように、私にも見えた。

こめかみを一掻きしたあと、キーを踊らす。

が、強制クエストの件でくらったオリジナルウィルス「梵」の影響だろう。

外部アクセスが非常に手間がかかる。そんなに時間がかかるとハッカー、クラッシュ行為ができない。

しかし、懸賞金がかかっているゲームだ。

そんな禁じて使わないと無事にクリアさせることなんてできないのではないか。と私は予測している。

「真穂……」

「そんな顔なんて珍しい。大丈夫、じゃあこっちを向かわせるだけだよ」


実質的には戦闘不能ではない。大事をとってその回復を待ったんだ。できるだろう。

私はカーソルを操作した後クリックを「Maho Naoe」というところで叩いた後、

いつもの口調で彼に話しかけた。


ところが彼は見捨てる気まんまんだ。

途方にくれていると、我が伴侶がマイクを占拠して彼に語りかけたのだ。

その後、彼は助け船を出す行動をしているんだろうか、

わからないことをしていた。




***



音声にノイズ音がはっています。視界も粗い状態になっているような気がします。

私はどうなるのでしょうか。

けたたましい女の哄笑が聞こえます。あれはリーチェの声でしょう。

彼女は近づいてきて、私の髪を乱暴につかみ上げてきました。

「ほぉら、まずいだろぉ?ぼろぼろじゃないかぁ?赤い綺麗なドレスが残念無念。

エロい感じになってるぞぉ?淫獄にたたき落としたら奴等が生唾を飲んで喜びそうだぁ」

重たい瞼をゆっくりあげます。

間の前に、黒服に歪んだ笑みを浮かべながら美しい顔でこちらを見る女がいます。

しかし彼女が先程から言っているのでしょう。

乱暴で粗野な言葉を悠然と吐き散らしながら笑っています。

リーチェが面白そうに私の首のつけねから胸の曲線へとその細指を沿わせます。

身をよじると、髪の付け根が痛み、動きが緩慢になります。

するとリーチェの指先が私の胸の先に至ると、彼女の口もとが私の耳にふれました。

「お前、ずいぶんと熟れた身体をしているんだなぁ?男は知ってんのかぁ?

例えばここを甘く舐めてもらったり、噛んでもらったり、そうだなぁ。挿みこんで慰めたり?

いろいろ使ったことあんのかぁ?そしたら甘ったるい声で男を喜ばせるような誘い文句でも言うんだろ。

そしたら次はこの足がひらくのか」

「……」

「はぁ?カマトトぶんなってわかってるんだからさぁ。

お前、好きだったよなぁ。あいつのこと。で、お前行動したんじゃないのかよぉ。頑張ったよなぁくくくくっ」

「……」

「そなたは歪んでる。そして、病んでいる。一番の悲劇はそれに自覚がないことかぁ」

「違う。私は……」

「お前は強欲だ。認められたい、守られたい、理解されたい。そして、愛されたい。

違うかぁ?」

手を振り上げて叩こうとすると、どこから現れたのかわらかない奇妙な道化師が幾人も現れていました。

彼等の二組が私の両掌の手首をしっかり掴み上げます。

リーチェの言葉は止みません。

「そしてそなたは手を染めた。そなたは姉を裏切ったのだ」

「……試したと言ってほしかったです」

「ほぉ」

「想像だけで言わないでください。この処女臭い子娘。女はね…醜いほど愛情に貪欲です。

だから嫌い。女も男もみんな…嫌い」

「それでは人間はみんな嫌いと言っているようなものではないか」

その言葉に私は何も言いませんでした。

沈黙を持って応えます。ただ、リーチェのその言葉を。

私は「わらい」ました。


「ずいぶんと凄い絵ですね。ほったらかしても心は微生物ほども痛まないのですが、

躾の悪い女性と言うのは見ていて気分のいいものではありませんね。

と柄でもないことをしたら眼鏡が割れました。どうしてくれるのですか?」


実に不愉快極まりない文句が聞こえます。

私の両の掌から腕力の圧迫が消えました。それから眼前が藍色に覆われます。

それは男物の上着で、私はそれを被せ着せられました。

身体が重力から切り離されます。幼子のように抱えあげられました。

見上げれば水色の眼が冷やかにこちらを見つめ返してきます。


「……苛められたのですか?ほら、性悪だからですよ。

全く、いえでも普段から性悪とご注意申し上げなかったのは不親切ですね。

けれどオブラートに包んで物を言うのは不得手でしてなかなか。

黙っておくということしかできませんでした。まぁ常識がないお嬢様が悪いのですが」

「煩いです!!!貴方が不甲斐ないからでしょうが!!!?」

「はい?今なんと?」

「不甲斐ない!!!格好悪い!!激弱い!!!だから私がこんな目にあったのでしょう?!……怖かった」


無遠慮にこの慇懃無礼な男―ケイの胸板をたたきのめします。

ケイはムッとした顔で私を一瞥した後、言いました。


「なるほどではこれを見てもそう申しますか?」


私達周りに居た道化師が、断末魔を上げて消え去ります。

見ればそこには黒剣を操る銀髪の黒騎士が立っていました。

そして、もう一人。美麗な女性が拳銃を手に次々と道化師を屠っていきます。

ダンテとメリーでした。

リーチェは舌打ちをし、私達の前に無数の白い小鳥群をはなちます。

一羽一羽がこちらの眼球めがけて細い嘴を開いて襲いかかりますが、

ダガーや小剣でそれがどんどん切り捨てられて、赤い鳥に変わって地に落ちました。

「リーチェ!!!」ダンテが叫んでリーチェに駆け寄ります。

しかし、リーチェの面持ちダンテと対照的でした。

愛しいものを見る目と、恐ろしいものを見る瞳。


「貴様が、来てしまったか……」


ダンテは何も言わず、その黒剣の切っ先をリーチェの方へと向けました。

明るい茶髪からのぞく双眸はどこまでも皮肉で、口が開けば毒舌しか言わないこの男。

ケイは私の言葉を待っています。私は鼻で笑いました。


「遅すぎます」

「それは素直に謝りまってさしあげましょう。……許せ」


数刻難しい顔をした後、出た言葉は謝罪とは言い難いものいいです。

けれどそれが実にケイらしくて、なんだか安心したのでした。



***



画面。

SASUKEと書かれたメインPCでAIをしていた私は、ぼんやりと画面を見ます。


「本当に、やりやがった……何者だあいつ」

「非戦闘こそが私の本分って言ってましたね」


伴侶がそう言いながら、画面を見つめます。

正体不明の千代のオンラインキャラクターとしているメリー。

このストーリークエストのキャラクターとしてでしかなかったダンテ。

そして、適役として現れているリーチェ。


全ての登場人物がここに並びました。


私はケイに事の次第を伝えたのです。

眠って身動きもしなかった彼ですが、不思議とゆっくり動きました。

それから再度状況の説明を求められるとケイは私にケイ自身の回復状況を教えろ、と

尋ねてきたのです。慇懃で丁寧な彼には見られない、どこか命令し慣れた口調でした。

回復度合いをしった後、彼がしでかしたことを私は一言で言えといえばこう言いましょう。



交渉でした。

ケイは相手の心理を見抜き、時に挑発し、時に利益と損を考えた末。

彼が手に入れたのはダンテとメリーが出現という現象でした。



実に画面は壮観でした。

黒のドレスに身を包むベアトリーチェは堕ちた姫の成れの果て。

戯曲の魔女のようでした。

それに対するは、颯爽とした拳銃の女性とスマートな感じの男。

スマートな男に抱きかかえられているのは直江さんです。

さながら彼女がお姫様のようでした。


そして中央で魔女に対峙するのは黒の騎士。

しかしその黒剣を向ける様は古の勇者のそれでした。

ダンテの職業は「魔騎士」――犠牲を厭わぬ献身の勇者というのです。


しかし、残り二人。

メリーとケイは不明。盗賊と吟遊詩人として表示されていません。


「ケイの正体って交渉家だったのでしょうか」


伴侶の言葉に私は、ケイを見つめました。

しかし、彼の不敵な表情からその正体を,


窺い見ることなどできませんでした。



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