ピンチの合間の合間
善意が当たり前ではない世界が
当たり前だったから、
見返りを求められない親切は怖かった。
だからエイミーは基本
人と距離を取るようにしている。
だから拾われた時にもそうだった。
怪我を治療され、食事を与えられ、
一緒に来るかと問われた。
恐ろしかった。
なぜそんなにも
手放しに優しく手厚いのか。
油断した頃に寝首をかかれるのではないか。
そう思いながら生活できないと思った。
だからあえて最初に言った。
殺し屋なのだと。
何人も殺しているのだと。
こんなのほほんとした2人と
共に過ごせないとエイミーは思った。
だから向こうから離れるように告げたのだ。
「…そしたら…?」
「…まずリョウからは
ハリセンでどつかれたわ。」
っすっぱーんと。
「…それはそれは良い音だったわ」
とエイミーは言った。
「一緒に来るか?に対して
私、殺し屋なのよってどんな返しやねん」
エイミーを叩いたハリセンを弄びながら
リョウはもう一打振るった。
っすっっぱーーんと
更に良い音がした。
エイミーならば、
避けようと思えば避けれた速度だった。
だが何故か出来なかった。
「仮に本当やったとして、
だから何やねん!
それを言ったら
ウチらが怖がって
離れるとでも?
見くびらんでもらいたいわ!
こちとら人間観察した上で
拾う人間を吟味しとんねん!」
介抱することを
自分達で選択しているのだと
とんでもないやつを拾ったという
災難に遭っているわけではないと
リョウは言った。
「殺し屋なら、
悔やんだり悼んだりはあんたがせぇ!
離れるかどうかは
あんたの生い立ちやない、
行動とウチらの気持ちで決める!
あんたも一緒にいたいかどうかは
あんたの気持ちと
ウチらの行動で決めんかい!」
ハリセンでどつかれた頭が熱い気がした。
言われたことのないことだった。
「…私が決める?」
「あったりまえやん。
あんたの人生やろ。
あんたが決めるんや。
まぁもっとも。」
と顎で指し示されると
クリスがエイミーの腰にしがみついていた。
「離れたい言うても
離さん奴がいるやろうけど。
相手に決めさせんと、
嫌なら嫌やていうんやな」
エイミーを熱く見つめるクリスが
コアラのようにしがみついていた。
「絶対一緒」
四字熟語のように短く告げられた。
「…本当なのよ。本当に殺し屋で」
「そんなのボクにはどうでもいいことなの」
そんなの、と聞き咎めたエイミーを
クリスはまっすぐに見ていた。
「本当にそうなら、
気の毒な人もいたかもしれない。
でもボクにとっては
傷が治ってないのに離れようとしてる
今のエイミーの方が大事だもん。
絶対離れないもん」
絶対、と掴まる腕に力を込めた。
「…えぇと…」
「絶対一緒」
「…でも」
「絶対一緒」
困ってリョウを見たが、
我関せずとばかりに茶を淹れ始めた。
カップ3つ分。
それをエイミーとクリスと自分の前に置いて、悠然と座った。
「諦めり。少なくとも
治療するまでは絶対一緒や」
そこまで話して、エイミーは息を吐いた。
「…私にもよくわからない感情なんだけど。
あの二人が悲しい思いをするのは嫌なのよ。
だから私に出来ることはするの。
相手がどんな奴なのか見極める。
危険なことは先陣を切る。
…それで幻滅されても」




