うまれたピンチ
よくわからない感情、
とエイミーは言った。
でもそれはキラリからしたら
明らかに仲間を心配する気持ちで、
親愛の情だと思えた。
「…その顔はどういう感情?」
眉根を寄せたエイミーに、
自分がどういう顔を
していたのだろうと思ったが
「良い人に俺は出会ったんだなと思って」
今浮かぶそのままの気持ちを伝えると
エイミーが更に眉根を寄せた。
「…どういう意味?」
そのままの意味なのだが、
伝わらなかったようだ。
言葉って難しいなぁ…と思っていると、
がさりと道脇の草むらが動いた。
そちらに視線を向けると
真っ白の毛並みのウサギのような
生き物が佇んでいた。
耳の長い、真っ黒の瞳で
額に角のようなものがはえている。
鼻がぴくぴくと動いていて、
辺りを見渡していた。
「かわいいなぁ…。
エイミーあれって
何て名前の動物なんだ?」
動物の視線を受けて、
キラリがエイミーに呼び掛け、
エイミーがそちらを向く。
そしてエイミーが息をのんだのと、
ウサギのようなものが
甲高い声で鳴いたのがほぼ同時だった。
警告音を思わせる声だった。
「え…?」
刹那、一足飛びにエイミーが踏み込んだ。
そしてためらいなく武器を抜き、
ウサギを斬りつけた。
いつ剣を抜いて、
いつ振り下ろしたのか、
そんなこともわからない速度だった。
しかし、軽やかにウサギが避けた。
どっちの動きも
キラリには
よく見えなかった。
盛大に舌打ちして、
エイミーがキラリの手を取り駆け出す。
「え?え?」
「…ホーンラビットよ」
走りながらエイミーが突如呟いた。
「何が?
…あ、あのウサギみたいな動物の名前?」
「…そう。
そして恐らく今回の討伐するべき魔物よ」
「え!?あんなにかわいいのに!?」
「…彼らは群れで暮らして
群れで対象を襲う。
先程の鳴き声は仲間を呼ぶ声。
一番強く大きい個体が指揮をして
そして恐るべき俊足で対象を追い、
牙や角で傷付けて仕留める種族」
まるで走ってなどいないかのように
滑らかにエイミーは説明した。
説明しながらも
足は軽やかに大地を蹴っている。
つい後ろを振り返った。
手を引かれているため自然と
キラリも走ることになるが、
エイミーの俊足につられて走った結果
豆粒のようになっていた
ホーンラビットが、
追いかけてきている。
エイミーの足は
相当早い方だと思うが
それでもぐんぐん距離を詰めてきた。
最初はホーンラビットの姿が
ぶれているのかと思っていたが、
実際は後ろに仲間が
うじゃうじゃと集まっていた。
白い大群が押し寄せてくる。
「…囲まれたら
厄介だからとりあえず走るわ」
息もきらさないエイミーに嘆息して
キラリはとりあえず頷いた。




